海外OJT研修を通じて感じたこと(2)

2019年10月15日

JICAウガンダOJT職員
佐藤 未来

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ルワムワンジャ難民定住地の子ども達

ウガンダにある難民定住地の道を歩いていると、「ムズング!(外国人!)ムズング!(外国人!)」と子どもたちが笑顔で駆け寄ってくる。「ハロー!」「ジャンボ!」「オリーレオッタ!」と英語、スワヒリ語、ニャンコレ語の3か国語で、コミュニティ開発隊員の中田早紀さんが笑顔で返答する。

私は、海外OJT研修の一環として約5日間、この子ども達の活気に溢れる中田さんの活動任地、ウガンダ西部に位置するカムウェンゲ県ルワムワンジャ難民定住地に滞在させてもらいました。ルワムワンジャ難民定住地は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)等のドナーが2012年に運営を再開して以来、約6.8万人の難民を受け入れています。そこに住んでいる難民の多くは、紛争で混乱が頻繁に発生している隣国のコンゴ民主共和国から逃れてきた人ですが、元から住んでいるウガンダ人や南スーダンから逃れた難民も生活しています。中田さんが3か国語を話す理由は、それぞれ話す言語が異なるからです。

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中田さんと農家グループのリーダー

ルワムワンジャ難民定住地に住んでいる難民のうち、ほとんどがウガンダ政府より配分された土地を利用して、農業で生計を立てています。JICAもUNHCRと連携協定を結び、2014年から同定住地も協力対象の一つとして技術協力プロジェクト(ウガンダコメ振興プロジェクト)等を通じて難民の支援を行ってきました。中田さんの主な活動はこのプロジェクトとも連携しながら、農家グループを対象に播種の方法や肥料・除草剤の使用方法をトレーニングすることです。もともと農業のバックグラウンドを持たないという中田さんにとっては、これだけでも大変な作業であると想像しますが、それだけに留まることなく、毎日一軒一軒農家を訪問し、稲作栽培に対する不安等の聞き取りを行い、少しでも農家の悩みに寄り添おうとしている姿が非常に印象的でした。中田さんと話をした後の、農家の満足感に溢れた顔を見て、彼女の存在が農家にとってどれだけ大きいものなのかを感じ取ることができました。

私が滞在していた5日間、定住地の人たちにとっては滅多に難民定住地では見かけることのないムズングが1人増え、疑問に思うこともあったと思いますが、定住地の人達は温かく迎え入れてくれたように思います。特に子ども達は私達の姿を見かけると手を振ってくれたり、抱きついてきたり、大きな笑顔を見せてくれました。しかしながらその笑顔の裏側では、貧困に苦しんでいたり、ウガンダ人との確執に悩んでいたり、複雑に絡み合った問題が多く存在しているのだということを中田さんに教えてもらいました。中田さんは大学院で難民ケアについて勉強していた経験から、難民達と交流する際は心の傷に触れないよう細心の注意を払っていたそうですが、それでも最初は難民定住地を歩いているだけでカウンターパートのところに苦情が来たこともあったそうです。

しかしながらそんなことにもめげず、毎日農家のところへ顔を出し、会話をすることで、確実に信頼関係を築いている姿は、私自身見習わなければならないと感じました。道を歩いていると、「サラ!(中田さんの通称)」「マイフレンド!」との呼びかけが聞こえてきます。おそらくそれは、中田さんがその定住地に住む人達のことを「難民」として見るのではなく、1人の人間として丁寧に接してきた結果であると感じました。難民の人たちは、言葉や文化も違い孤立してしまいがちですが、難民同士の繋がりだけでは彼ら自身が自立していくことは難しいとされています。彼らの自立を本当に実現するためには、さらに地域としての繋がりを作っていくことが必要不可欠です。たった5日間だけの滞在でしたが、ルワマンジャ難民定住地の人々にとっては、きっと中田さんがその繋がりの懸け橋になっていく存在であるのだろうと強く確信しました。