インターンから視たJICAのプロジェクト現場-UNHCRとの共催5S セミナーを通して-

2019年12月16日

JICAインターン 関根真杜

開発プロジェクトの成功には、かかわる多くの人の意欲が不可欠ではないだろうか。

11月中旬に二日間に渡り、南西部の5か所の難民居住地に位置する医療施設より各5名のスタッフを招集し、西部のムバララ地域病院にて医療マネージメントの改善のための5SセミナーがJICAとUNHCR(国連難民高等弁務官)の共催で行われた。

5Sセミナーの経緯と内容

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参加者が実際にアクションプランを作成している様子

5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つのステップから生まれた標語であり、もともとは日本の産業界で開発された職場環境改善及び品質管理の手法であるが、JICAでは医療施設の施設運営や保健医療サービスの質改善の実現のために活用している。ウガンダでは、JICAのサポートによって地域中核病院を対象に5Sプロジェクトを2011年よりフェーズ1、2016年からフェーズ2として実施している。JICAとUNHCRでは2009年より協力協定を結んでおり、同協定内での活動の一環として、難民に対する医療サービスの質の向上につなげ、難民居住地内に位置する医療施設の施設運営改善のためにセミナーを開催した。

今回のセミナーは、南西部のチャングワリ、オルチンガ、ナキバレ、チャカll、ルワムワンジャの5つの難民居住地に位置する医療施設に従事する医療関係者を対象に行われた。セミナーはムバララ地域中核病院に所属するファシリテーターによって行われ、レクチャーと参加型の2つの方法でセミナーは進められた。同病院の中を観察し、実際に行っている5Sの手法を評価するセッションが設けられており、参加者が実際に見て評価することによって、参加者自身が知識をアクションに移しやすくしていると感じた。セミナーの最後では、自分たちが従事している難民居住地内の医療施設におけるアクションプラン作成が行われ、同セッションがセミナーと実践の架け橋となっているように見えた。アクションプランではいつ、だれが、どのようにといった具体的な内容が明記されており、参加者自身が自分でアクションを起こしやすくするセッションであったと感じた。

セミナー参加者の熱意

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参加者の病院見学の様子

今回参加して最も印象に残ったことは、セミナー参加者の熱意だ。参加者の中には、セミナーの始まる30分前に会場に入り準備するひともいた。私が参加したウガンダでの他のセミナーでは、30分や1時間の遅刻が当たり前だった。また、レクチャーを聞く際は前のめりになるほどに内容を吸収しようという姿勢がみられ、セッションの最後には積極的な質問も多々あった。病院での5S活動を実際に見学する際も、自分の病院との状況比較を行う、また類似部分を見つけモデルを自身の施設に適応できないかと考えている姿がみられた。総じて、参加者自身の自分の医療施設への問題意識の高さや、それに対して解決したいという思いの熱量がこのセミナーで一番印象に残った。5Sの手法はしばしばフィロソフィーであるといわれるが、彼らの中にはそのフィロソフィーに賛同し、今後自身で問題解決を実行していくといった熱い思いを感じた。

JICAボランティアの存在

今回セミナーを行ったムバララ地域中核病院ではJICAボランティアの看護師隊員が派遣されており、今回のセミナー実施においての彼女の存在と貢献はとても大きかったと感じた。彼女の存在はまさしくJICAウガンダ事務所と現場の架け橋となっており、特にセミナー運営では事務所のビジョンと目的を彼女がしっかりと認識・共有しそれを実現するために、彼女が現場のファシリテーター達と話し合い、実践していくという関係性を垣間見た。長期間、現場に根差し地元の人々と関係を構築しているボランティアの存在の大きさを今回知ることが出来た。セミナーの際もファシリテーターとして、他のファシリテーターをまとめプロジェクト関係者や事務所関係者と円滑な進行に貢献する姿は、JICAボランティアにしかできないことだと強く感じた。

成功のカギ

今回のセミナーは参加者や従事者からの評価はとても高く、今後の実践における段階で、ムバララ地域病院によるサポートの計画やさらなるセミナーの開催も検討されており、このセミナーは成功であったと考えられる。その背景は、セミナーの参加者と運営側の双方の意欲であったと私は考える。滞りない進行のために準備をした運営側と、自身の施設の問題題解決を行いたいと思った参加者側の双方の真っ直ぐな思いとそれに伴った行動がセミナーを実りあるものにしたと感じた。

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セミナー後の集合写真