「オンラインKCCP」ウクライナの参加者から高評価

2021年4月21日

新型コロナウイルスの影響により、知識共創プログラム(KCCP)として実施されてきた課題別研修では、これまで行ってきた日本での研修が困難となりました。このため、JICAは、代替手段としてのオンライン研修の実現に向け検討を重ねてきました。オンラインによる研修実施は多くの課題が想定されたため、日本での研修実施と比較しその効果に懸念もありましたが、JICAウクライナ・フィールドオフィス(ウクライナFO)による研修参加者へのフォローアップインタビューを通じ、オンライン研修受講においても、期待通りの有用な知識とスキルを習得したことを確認しました。

JICAの知識共創プログラム(KCCP)は、パートナー国の政府関係者を日本に招聘し研修受講の機会を提供する技術協力です。日本が長年かけて発展・蓄積した社会システム、ノウハウ、技術は、机上の知識吸収だけでは不十分であるため、日本の専門家から直接学ぶ機会、および、係る現場を直接見学する機会を提供するKCCPは、JICAの技術協力の重要な手段の一つです。KCCPには、194か国から約10,000人の参加者が毎年参加している世界規模のプログラムであり、研修内容に係る業務に従事する各国の政府機関および地方自治体の代表者が日本で実施する研修に参加してきました。

また、KCCPは、ガバナンス、ヘルスケア、教育、投資促進、民間セクター開発、農業、インフラフラストラクチャー、天然資源・エネルギー、情報通信技術、社会的保護、男女共同参画等に関する幅広いトピックを対象としています。

JICAウクライナFOが所掌するウクライナとモルドバでは、2000年からKCCPが実施されており、現在までウクライナからは1,000人以上、モルドバからは500人以上の政府関係者が研修に参加しています。

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杉本首席駐在員(JICAウクライナFO)

JICAウクライナFOの杉本首席駐在員は、「今後状況が落ち着けば従来通り日本での研修実施が望ましいが、オンラインによる研修はポジティブな側面もある。例えば、オンライン実施のもたらす効用として、訪日研修に比べ多くの参加者を受け入れることが可能であり、実際にウクライナ・モルドバのケースでも複数人が参加しているコースがある。これにより、有用な知識・スキルをより広く伝えることが可能となるばかりでなく、参加者間の経験共有の機会が向上することにも繋がる。また、日本国内で実施するインテンシブな研修と比較し、参加者が各セッションの前後に準備とレビューを行うことができるため、関連する知識を消化する時間の確保が可能となるメリットもある」とオンライン移行後の状況を説明しています。

ウクライナにおける最初のオンライン研修として、「地理空間情報の整備・活用に向けた国家基準点管理の効率化」が2020年11月に実施されました。同研修には、ウクライナ、バングラデシュ、カンボジア、ミャンマー、北マケドニア、ウクライナの5か国から計14名が参加しました。

ウクライナからの参加者の一人である、国家測地・地図・土地台帳庁(SSGCC)の欧州統合・国際協力局副局長であるアンナ・トカチェンコ氏は、「今回参加したオンライン研修は、日本の高度な技術・知見の共有だけでなく、オンラインツールを活用した実践的な議論やディベートの場を提供してくれた。これにより、講師および他の参加者との貴重な情報・経験の共有が促され、大変有用な研修であった」との所感を共有してくれました。また、具体的な学びとして、「JICAをはじめとした開発パートナーからの支援を得るためのメカニズムについての講義から実践的な知見を得た」とのお話もありました。

JICAウクライナFOは、今後もオンラインKCCPの質向上および研修参加者とのネットワーク強化のため、フォローアップ活動を継続していきます。また、パンデミック後のKCCPにおいても、オンライン実施での経験を活用し、オンラインとオフラインのハイブリッドでの実施による効果向上を念頭に研修事業を推進していく予定です。

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トカチェンコ氏、欧州統合・国際協力局副局長、測地・地図・地籍庁(SSGCC)

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2021年度、JICAはウクライナ政府と協力しつつ24の研修コースを実施予定です。同コースのリストは以下リンクからご確認いただけます。