バヌアツメイドを盛り上げるために

2019年12月6日

2018年度9次隊・藤岡宏美(手工芸)

私は現地の観光貿易商業産業省・産業局にバヌアツの手工芸品の活性化をサポートするために派遣されました。バヌアツの産業を支えているのは観光業。産業局では業務の1つとしてバヌアツメイドの土産品を観光客に手にとってもらえるよう、生産者の支援をはじめ様々なアプローチを行っています。その中で問題視されているのは輸入されてきた土産品が市場に多く出回っているということです。あるデータでは海外からの観光客が購入する土産品の約90パーセントが輸入品であると言われています。

先日、Vanuatu Made Week(見本市)がポートビラで開催されました。これは昨年も開催されたものですが、今年は新しくバヌアツメイドのロゴも発表されるなど、イベントは盛大に行われ、現地の人々は自国の産業をとても大事に思い、発展させたいという意欲の感じられるものでした。

さて、私の主な活動は大きく分けて2つで、バヌアツにある既存の手工芸品に新しいアイデアを提供する事、産業局が地方で行うワークショップのサポートでした。特にバヌアツで伝統的に利用されているパンダナス(写真1、写真2)という植物とココナッツの殻を使用した新しい商品を現地の生産者の方々と共に考え、試作を行いました。

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写真1:パンダナスの木

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写真2:パンダナスの木(写真1)を乾燥させてマットなどを編む

中でも評判が良かった商品はバヌアツでよく見かけるマット(ござ)を折りたたんで取っ手を付け、持ち運びしやすくした商品でその名も「Compact Mat(コンパクトマット)」(写真3、写真4)

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写真3:大きなマット

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写真4:大きなマット(写真3)も小さく小さくたたんで取っ手を付けるだけで持ち運びやすくなるコンパクトマット

商品開発を行う中で、慣れたものを日々作り続けている生産者にとって全く新しい商品を提案し、作り始めることは製作へのモチベーション、材料調達の煩わしさなど、彼らにはハードルが高い場合が多く感じられます。そのため、新しい商品の定着に求められるのは短時間でできたり、すぐ手に入りやすいものでできる、または作り続けているものに工夫を加え、付加価値を与えるようにできるものであると考えられます。

これらを踏まえて考え出されたコンパクトマットは生産者が編みなれているかつバヌアツならどこでも手に入りやすいマットにパンダナスで編んだ持ち手を付けるだけなので、地方で行ったワークショップでも多くの生産者の注目を集める商品となりました。喜ばしいことに、首都にあるハンディクラフトハウス(Haos Blong Handicraft)で働く生産者はこのコンパクトマットを精力的に作成し、これまでに10個を売り上げ、作るたびに品質も上がってきているように感じます。

地方出張で行われたワークショップでは普段生活している首都ではあまり見ることのできない現地の人々の生活を経験することができ、私にとってとても貴重な時間となりました。開催した場所はエファテ島シヴィリ村、エマエ島、トンゴア島、ウナ島でした。

ワークショップは2日間のプログラムで行われ、コンパクトマットをはじめコースター、ブックカバー、ココナッツシェルキャンドルホルダーなど6~10種類の商品を試作するというものでした。初回の場所でのワークショップは現地の人のワークショップの「やり方」をつかむのが難しく感じることがありましたが、同僚や現地の参加者のおかげで上手く終えることができ、その後のワークショップの開催に生かすことができました。また、ワークショップを行う中であれもこれも作ってみたいという制作意欲の高い参加者が多く見られたことは、こちらの日々の活動への意欲を与えてくれたように思います。

私の協力隊活動において、私の今までの経験から得たものづくりの楽しさや喜び、驚きを現地の人々と分かち合いたいということを大切にし、目標にしています。それがこの瞬間に少しでも達成できたかなと思える地方出張でした。

ある出張では風雨が強く、帰りの飛行機が遅延するという事がありました。飛行機の運航が再開するまで3日ほど時間を持てあましましたが、宿泊場所を提供してくれていた学校の校長先生家族は快く私と同僚を延泊させてくれ、地域の人はラップラップ(郷土料理)を作るところを見せてくれたり、話し相手になってくれたり、一緒にパンダナスを編んだりして過ごすという素敵な時間を与えてくれました。そこでは牛を多く飼育しており、夜、宿泊場所から少し離れたトイレに入っていたとき、近くで牛の気配がし、すごく驚かされたというハプニングもありましたが、飛行機の遅延にしても自然や動物と共に暮らしているということが実感できた経験は私の感受性を豊かにし、視野を広げてくれたように感じました。

今回、指定された地域でのワークショップを行うという配属先の目標はおおむね達成され、私はあと少しでこのバヌアツを離れることになります。バヌアツの魅力的な伝統からなる手工芸品にあるそれぞれのストーリー。この強みをしっかり生かして、バヌアツメイドを盛り上げるべく奮闘するフレンドリーでクールな産業局チームを日本から応援し続けたいと思います。