水産物流通改善に係る活動

2019年12月20日

樋野 芳樹 専門家(付加価値向上1)

本プロジェクトでは資源管理支援方策の活動の一つとして3つのパイロットサイトを対象に水産物流通改善の取り組みを行っています。しかし、それぞれのサイトが持つ特徴も抱える課題もその複雑さも多種多様です。

例えば、ある集落の漁業者たちは、漁獲物の売り先は同じ場所(山を越えた島の反対側の市場)であるにもかかわらず、バラバラに車両を傭車して水産物を輸送し販売していました。各漁業者が高い輸送費を支払う必要があり、いくら魚を売ってもあまり儲けに繋がりません。別の見方をすれば、儲けを出すためにたくさん獲る必要があり、水産資源管理の観点からは好ましい状況とは言えません。一見するとシンプルな課題に思えますが、背景には地域的・伝統的な風習や慣習、インフラ環境上の制約など様々な要因が取り巻いています。プロジェクトでは地元漁業者と連携し、当該集落にとって最も取り組みやすくかつ持続性のある問題解決の方策を考え、その第一歩として漁業者同士が協力して共同出荷をすることで漁業者一人当たりの輸送費を下げるという方法に取り組んでいます。コストが下がるため漁獲量をある程度にとどめても漁業者の収入確保が見込めるため、資源管理と漁業者の生計維持の双方にメリットをもたらすことが期待されます。

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また、別の島では近くに良い漁場があるにもかかわらず「最近魚を食べていない」という声が上がっていました。島民への聞き取りや現状の水産物流通を調査してみると、次のような現状が見えてきました。1)基本的には島外出荷がメインであり、島内の人々は必要な分だけ自分たちで獲り、漁業者からの購入は少量でしかない、2)地域的な海況の違いから季節や時期によって水産物供給が止まってしまう集落が出現する(特に山中にある集落は水産物へのアクセスが滞りやすい)、3)伝統行事の開催時には一時的に特定の集落の需要が増加する、4)物々交換による取引が一般化しているため他の産物の収穫時期や生産状況が水産物の需要に影響する、などです。これらを総合すると、これまでは島外にばかり水産物を流通させていましたが、実は島内の需要が満たされていない可能性が示唆されたのです。プロジェクトでは、漁業者組合と連携し島内での水産物移動販売という実験的な取り組みを行っています。この方策により、荒天により島外出荷ができない場合や大漁時の水産資源の有効利用にもつながることが期待されます。

このように、現地状況の把握を試みつつ、どのような取り組みが支援方策として有効に作用するのかを日々模索しながら活動しています。

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離島での販売状況1

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離島での販売状況2