世界の森林の再生に向けて 課題別研修コース「アジア・アフリカ地域における荒廃地植生回復」

2012年12月14日

テレビ会議の様子

 開発途上国においては、産業活動を通じた土地開発や、人口増加に起因する様々な課題があり、これらの中で森林を始めとする樹木が生育している地域の減少は、生物多様性の減少などの環境悪化のみならず、災害防止や地球温暖化防止の観点などからも重要な地球環境問題の一つとして位置付けられています。
 このような背景から、JICAは2007年から課題別研修「アジア・アフリカ地域における荒廃地植生回復」を公益財団法人地球環境戦略研究機関国際生態学センター(IGES−JISE)(注1)とともに実施しています。
 この研修は、アジア・アフリカの諸国のうち、森林などの減少や劣化が著しく、緊急な対策が必要な国を対象として実施されています。本年度はラオス、ミャンマー、インド、ケニアから合計6名の研修員が参加し、10月中旬から12月中旬まで実施されました。
 研修員はJICA横浜において各国の森林の状況を報告したり、森林保全に関する講義を聴いたり、森林の状況を解析するための演習を行うほか、神奈川県内の森林を中心にして、日本国内の森林やその保全などの状況を見学しました。特に、この研修コースにおいては、それぞれの土地本来の木を植える「宮脇方式」(注2)についての講義がなされました。
 その研修の中で、12月3日(月曜)、4日(火曜)の両日、フィリピン、インド、ケニアおよびラオスにあるJICA事務所とJICA横浜をテレビ会議システムでつなぎ、過去数年間に本研修に参加した各国の帰国研修員と今年の研修員の間の意見や情報の交換を行いました。このテレビ会議で、フィリピン、インドおよびラオスにおける、研修員の帰国後の活動状況の報告がありました。特に、近年経済成長の著しいインドからの報告では、研修終了後二年間に行った様々な鉱山跡地の植林を中心に、成果の報告がなされました。ケニアから昨年度参加した元研修員は帰国直後ということもあり、日本での研修を活かした今後の植林活動に関連して研修の講師や本年度の研修員に対して改めて質問をしていました。また、このようなやり取りを通じ、インド、ケニアおよびラオスから参加している研修員は、これまでお互いに知り合う機会もほとんどなかった自国の研修員と知り合いになることができました。
 このテレビ会議に参加した研修員からは、「研修に参加することにより、どのような成果を得ることができるかにつき、具体的なイメージを持つことができた。帰国後も連絡をとりたい」(インドからの研修員)、「同じ国の帰国研修員との話は、問題意識を共有できるなど、有意義であった」(ラオスの研修員)といった感想がありました。
 各国から参加した研修員が帰国の後、それぞれの国において効果的に植林を進めることにより、各国における環境の保全のみならず、地域の住民は森林がもたらす利益を享受することとなります。また、地球環境の保全に寄与するものとなり、我が国も国際社会に対しコミットメントしているミレニアム開発目標(MDGs)(注3)に掲げられる目標7の「環境の持続可能性の確保」にも貢献し、さらには日本もその恩恵をこうむることとなります。
 今回の研修においてはテレビ会議を行いましたが、IGES−JISEおよびJICA横浜は、本邦研修を通じ研修員が習得した技術や知見が帰国後どのように活用されているかを知る機会を得、今後とも研修の実施に際してより大きな成果を挙げるための様々な工夫を行っていくことを検討しています。


(注1)公益財団法人地球環境戦略研究機関国際生態学センター
 詳細は関連リンクをご参照ください。 

(注2)「宮脇方式」
横浜国立大学名誉教授(植物生態学者)の宮脇昭氏が提唱する植樹方法。その土地本来に生息する多様な樹種を混植・密植方法で植林を行う手法。

(注3)ミレニアム開発目標
2000年9月、189ヵ国が参加した国連ミレニアム・サミットにおいて、21世紀の国際社会の目標として、国連ミレニアム宣言が採択され、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げている。
詳細は関連リンクをご参照ください。