【教師海外研修】実践授業レポート from 横浜市立宮谷小学校(冨田 明広教諭)

2017年2月16日

実践授業とは…

 実践授業とは、開発途上国への海外研修の経験を活用し、それぞれの先生方が工夫を凝らした授業プログラムを作り、学校現場で実践いただくものです。

以下、冨田先生のレポートです

授業の様子1

菊池博士とマナティー

 11月29日は、教師海外研修(ブラジル)の実践授業を行う日でした。その日は朝から子どもたちに「早くブラジルの学習がしたい」と急がされていました。何人かの子は、調べてきただけでなく、自分で資料を用意して、発表の準備を整えていました。子どもたちは、ブラジルの国立アマゾン研究所(INPA)の菊池夢美博士から手紙が届いたと知らされ、その内容が気になって仕方なかったからです。

 教師海外研修でブラジルを訪問した際、アマゾン地帯のマナウス市にある国立アマゾン研究所を訪れました。その時お会いしたのが、INPAとの日本の共同プロジェクトの一員として活動し、マナティー保護に尽力する研究者の菊池博士(京都大学野生動物研究センター)です。

 ブラジル研修から帰国した後、実践授業に向け9月から少しずつブラジルの映像を見せながら、子どもたちの関心を高めてきました。広大なアマゾン川、見たことのないヘビやクモ、大きな魚で活気あふれる市場。そんな中、絶滅の危機にあるマナティーの映像を見たときに、「どんな動物なの?」、「なぜ数が減っているの?」と、たくさんの問いかけが生まれました。
 これは、「菊池博士と子どもを出会わせるチャンス!」と、ブラジル帰国後もやりとりを継続していた「菊池博士」に質問を送ることができることを伝えると、子どもたちの目が輝きました。貴重な動物や自然を守る仕事をされていることに憧れを感じているようでした。
 菊池さんは、やさしさにあふれた手紙を送ってくださいました。3年生にも分かりやすい言葉で、語りかけるように書かれた、菊池さんの温かい人柄が伝わってくる文章です。そして、子どもたちの学習を熱帯雨林の減少問題に導くために、ひとつの問いかけを入れてくださいました。「遠く離れた日本に暮らす私達が、気づかないうちに熱帯雨林を犠牲にしていることに気づいていますか?」。

 子どもたちは戸惑いました。「菊池博士の言っていることがよく分かりません」「僕は熱帯雨林の木を切っていないのに、どうしてなのだろう」菊池さんの最後の文章に子どもたちの心は揺れました。その手紙をきっかけに、子どもたちは受身の姿勢から脱していきました。
 「ブラジルの熱帯雨林は1日に宮谷小8個分なくなっている」「熱帯雨林に火を付けて伐採し、植物だけでなく動物たちも被害にあっている」「そんなことをしているのは、私たちの生活が原因?」学習が進むごとに、子どもたちは新しい情報をどんどん調べてきました。「図書室の本に書いてありました!」「おうちでJICAのホームページを調べてきました」「お父さんが会社の本をもってきてくれました」。自分の時間を使って、子どもたちの家族も巻き込んで、たくさんの情報を集め、実践授業当日の11月29日を迎えました。

授業の様子2

 実践授業では、子どもたちが一人ずつ、紙芝居のように資料をめくって発表しました。「熱帯雨林は牛を飼うために切られています」「パーム油から作られたものを知っていますか?」。事実を受け入れるためか、静かな雰囲気で授業が進んでいきました。様々な食品が描かれたカードから、熱帯雨林に関係のあるものを選ぶ活動を通して、子どもたちは、自分たちの生活のあらゆるものが熱帯雨林の犠牲のもとに、作られているという事実を知りました。
 子どもたちが書いた振り返りは、元気なものではありませんでした。「どうしたらよいのだろう」「さっき食べた給食にも出てたよね」。沈んだ表情になりましたが、彼らが自然環境について真剣に学ぶきっかけになったのではないかと思います。

 振り返りを終え、どこか沈んだ雰囲気が漂う教室を元気づけるために、「実は菊池博士の手紙には続きがあります」と伝えたところ、子どもたちの表情は驚きと期待にあふれ、くわえて「先生ずるい!」という歓声まであがりました。
 菊池博士の手紙の続きには、「私たちに今できる大切なことがあります。マナティに何が起きているのかを知ること、そしてそれを自分以外の人に伝えることです。」とありました。
 これから、手紙の最後にある通り、「知ること」「伝えること」を大切にした学習へと進んでいきます。菊池博士をはじめ、ブラジルでのたくさんの方との出会いのおかげと、感謝をしています。
                               横浜市立宮谷小学校 冨田明広