【教師海外研修】実践授業レポート from 横浜市立神大寺小学校(柴田 浩行教諭)

2017年12月26日

実践授業とは…

 実践授業とは、JICA教師海外研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業プログラムを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。

以下、柴田先生のレポートです

【画像】 本校6年4組は、「世界で満開!とびだせ6の4〜ブラジル編〜」という単元名を掲げ、総合的な学習の時間に取り組んでいます。11月29日(水)の実践授業では、単元の6時間目という位置づけで31名の児童に道徳の授業をしました。

写真を見て気付いたことを付箋で共有

【日本とブラジルの違いに注目】
 これまでの学習の中で、子どもたちは日本とブラジルの違いに注目し、「自然」「文化」「歴史」の3つのカテゴリーに分けて調べてきました。この3つのカテゴリーは、7月の修学旅行で栃木県日光市に行ったときの学習を進める視点だったので、さらに世界に目を向けたいという子どもたちの思いとつながって意欲的に調べ学習に取り組む姿が見られました。
 その中で、子どもたちが特に関心をもったのが、日本食や盆踊りなど、日本らしい文化がブラジルにも存在することでした。日本から遠く離れた地に、自分たちが親しんできたものがあるのはなぜか。子どもたちはさらに追究したいという思いをもっていました。しかし、そのような中でも“日系ブラジル人”の存在にはまだ気づいていませんでした。

【日系ブラジル人の学習を通して】
 そこで今回の授業実践では、日系ブラジル人の存在を知るとともに、その方たちの思いに触れることで、「人にはいろいろな見方や考え方があることを理解し、それぞれの個性や立場を尊重しようとする」という相互理解の態度を養うことを目指しました。単純に移民のことを調べさせるのではなく、人々の思いに触れさせたかった理由は、子どもたちがこれから生きていく社会についての私なりの考えがあったからです。
 この日本においても、様々な文化をもった人と関わる機会が増えています。価値観が異なる人と時間をともにすることが多くなってくる世の中で、自分との違いを「ふつうは○○でしょ」と差別的にとらえるのか、それとも「どうして○○なのかな?」と理解しようとするのかによって、関わり方は全く変わります。違いを受け入れる、違いから学ぼうとする態度はこれからの社会を生き抜いていくうえで必要なことであり、さらには多文化共生社会を実現するためには不可欠だと思います。その第一歩となるような授業をしてみたいと考えました。 

日系2世へのインタビュー紹介の資料

初めに紹介したホームステイ先の一族の集合写真

日系2世の方の思いについて考え、発表

 実際の授業では、大きく3つの活動をしました。1つ目に、「あなたは何人(なにじん)ですかと聞かれたら、何て答えますか?」と子どもたちに投げかけました。この質問は、事前研修の中で本研修参加者のみなさんと授業づくりをしている中で出てきたものです。これに対し、子どもたちは当たり前のように「日本人!」と答えました。
 2つ目に、私がホームステイした日系ブラジル人のご家族の集合写真を見せました。気付いたことを話し合う中で、映っている人の多くが日本人に見える顔立ちをしていることに注目が集まりました。そこで、日系という言葉とその意味を教え、ご主人(日系1世)以外はみんなブラジル生まれであることを伝えたところ、とても驚いていました。その中で、子どもたちは自分たちが無意識の偏見をもっていることにも気付き始めました。
 3つ目に、現地で訪問した厚生ホームでのインタビューを紹介しました。インタビューの内容は、上記と同様の質問に対する答えです。いずれも日系2世の方を紹介しましたが、同じ質問に対して3種類の答えがあり、その理由を想像してみんなで語り合いました。その3種類というのは、「日本人です」「ブラジル人です」そして「それに答えるのはとても難しいです」です。子どもたちは特に3つ目の答えの根拠についてよく考え、様々な想像を膨らませていました。それをグループやクラスで共有する中で、3つの中でどの答え方が正解というわけでなく、人によって考え方や大切にしているものがちがうだけなのだということに気付くことができました。
 授業の最後に、今回の学習で学んだことを振り返りました。その中には、「どの人の気持ちもわかる気がする」や「考え方は人それぞれだとわかった」など、自分とは異なる考えも尊重しようとする言葉がありました。また、「人種は気にしないで、だれもが堂々と人間ですと言えるような社会がいい」という、まさに多文化共生を目指すようなことを述べる子もいました。

【相互理解のきっかけに】
 今回の授業を通して、相互理解という視点をもってこれから多様な人たちと関わっていくための、ひとつのきっかけになればと思い実践をしました。ですから、この実践にどれくらいの価値があったのかは、これからの子どもたちの姿によるのだと思います。また、わずか45分で十分に身に付けられるようなことでもないと思います。今回は道徳という授業でしたが、別の教科や行事、あるいは日常生活の中で継続的に子どもたちに伝えていきたいと考えています。

                            横浜市立神大寺小学校 柴田 浩行