【日系研修2】都市公共交通計画を学びをブラジルでも活かしたい

2018年7月11日

三浦先生(左)と白又さん(右)

2018年5月21日から約3カ月間、「都市公共交通計画」コースが研修実施機関である横浜国立大学で実施され、ブラジルの日系人である白又エリカ(しらまた・えりか)さんが参加しています。

経済発展の著しいブラジルをはじめとした新興国の多くの都市では、道路交通環境に起因する多くの問題が発生しています。本研修は、大学の講義や研究室での研究と各都市におけるフィールドワーク等を通して、都市交通政策立案に向けた基礎理論の理解に加え、帰国後に活用できる実践的な知識を習得することを目的として実施されています。

研修開始から約1カ月。今回は、横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院の三浦詩乃(みうら・しの)助教と白又さんのお二人に、これまでの研修で得た学びや今後の目標についてお話を伺いました。

ブラジルで抱いた問題意識・日本での学び

日常生活からも知識を習得

サンパウロに程近い400年の歴史を誇るイツー市の市役所に勤めている白又さんは、3・4年ほど前から同市の交通計画事業に従事しています。また、普段から一市民として公共交通機関を利用する中で、バスや道路の安全性や利便性の確保、適切なメンテナンスの必要性を感じていました。日系研修に応募するに当たり職場の上司の後押しも受け、本研修への参加を実現させることができました。

現在白又さんは、大学で都市公共交通計画の基礎理論を学ぶと共に、理論を現場に応用するために、フィールドワークや日々の生活における実体験を通して日本の公共交通機関の仕組みについて学んでいます。

横浜で暮らす中で、歩道が電車のプラットフォームまで繋がっていることや電車からバスロータリーへの移動が円滑化されている点等、電車・バス・道路が一つの公共交通システムとして「統合」されていることにとても感心し、一つ一つの交通機関が独立しているのではなく、各々の交通機関の長所を活かせる計画を立案することの重要性について実感しています。

また、大学では、日本だけでなく世界中の事例を取り上げながら学んでいます。ブラジルの大学で扱う事例はもっぱらブラジル国内の例に限られており、世界中の事例から学んでいく方法を是非ともブラジルの教育にも反映させたいと話してくれました。

研修実施機関から期待すること

三浦先生からは、研究室から白又さんへ期待することとして、「教科書で学ぶ理論を現場に応用していくプロセスを学ぶこと」が挙げられました。都市公共交通計画の策定過程では、様々な関係者と協働していくことになります。そのため、計画段階において誰に、いつ、どのようなことを話すのか等、柔軟に考えて対応する必要があると仰っていました。今後、地方都市へのフィールドワーク実施も計画されているため、白又さんには、その機会を最大限に活用して積極的に現場の声に耳を傾けてほしいと期待の言葉をいただきました。

【画像】研究室の皆さんによる歓迎会(中央:白又さん)

日本とブラジルの架け橋に

今回のインタビューの機会に、白又さんご自身の日系人としてのアイデンティティーについても語っていただきました。

白又さんは、日本人のお父様、ブラジル人のお母様を持つ日系2世です。ブラジルでは周囲から日本人と見られ、日本ではブラジル人と見られることが多いという白又さん。ブラジルでは、一般的に日本人は礼儀正しく勤勉であるというイメージを持たれているため、自分もそのように振舞いたいという意識を常に持っているそうです。

白又さんは日系人であることをプラス要素と捉えており、自身のルーツを活かして日本で都市公共交通計画について深く学び、その成果をブラジルに還元する役割を担っていきたいという強い意志がインタビューを通して伝わってきました。

日本滞在中に学びたいこと、ブラジル帰国後の活動

講義の様子

白又さんの日本滞在は、残り2カ月となりました。最初の1カ月は、研究室や講義で都市公共交通計画の基礎知識を習得することに重点を置いてきましたが、これからは日本の事例から学びを得るために現場に足を運ぶ機会を増やしていく予定です。

理論と日本における応用事例をブラジルでも活かせるよう、先生や研究室の学生との議論を重ねながら考えていきたいと、楽しそうに語っていました。

イツー市役所都市計画課の同僚(前列左から2番目:白又さん)

帰国後は、職場でのプロジェクトを通じてイツー市における交通機関の快適さや質、安全性を高めていくことが目標です。日本で学んだことをまとめ、市役所の同僚と共有することで、都市公共交通計画に係る人材育成にも貢献したいと考えています。

実際の都市公共交通計画策定に加え、一般の人々向けのワークショップ等の活動も実施することで、交通インフラ整備の重要性がより認識されるよう取り組んでいきたいとのことでした。

日系研修員受け入れ事業とは

中南米には213万人の日系人が暮らしています。彼らへの技術協力を通じ、移住先国の国造りに貢献することを目的に実施している研修が日系研修です。毎年約140名の日系研修員が農業、医療、保健福祉、教育といった分野の研修を日本で受けています。