【日系研修3】医療を通して日本とアルゼンチン日系社会の架け橋に

2018年7月17日

工学研究棟入口にて研究室の仲間と(左:谷ノ口さん)

2018年5月より約10カ月間、日系研修「医用材料と再生医療」コースが横浜国立大学大学院工学研究室にて実施され、アルゼンチンから医学部を卒業した谷ノ口 誠(タニノクチ・マコト)さんが参加しています。

人口増加と高齢化の兆しがみられる中南米諸国では、医療機器市場が拡大しており、高度な医療機器や再生医療を始めとした次世代の医療技術や新しい医療材料に関する知識・経験を持つ人材の育成が急務となっています。本研修は、研修員が自らテーマを設定し最先端の分析機器を使用した研究を行うことにより、帰国後に活用できる様々な知識や経験を身に着けることを目標に実施されています。また再生医療分野の日系人材の育成により中南米諸国における医療技術向上に裨益すると共に、日系人を通じて日本の先進的医療技術の海外展開の後押しになることも期待されています。

今回は、谷ノ口さんに現在の研修内容や日系研修への参加を決意した経緯をうかがい、指導教官である福田淳二教授からもお話をうかがいました。

武道を通して育まれた日本への思い

研究機材を利用する谷ノ口さん

お父様が日本人、お母様がイタリア人の、日系二世の谷ノ口さんは、幼少期はコロンビアで過ごしましたが、政情不安により6歳で家族と共にアルゼンチンへ引っ越しました。お父様が空手道の師範であったため、幼いころから空手道を習っており、武道を通して日本の文化や考え方を教わり、日本に対する関心や憧れを抱くようになったといいます。
本研修への参加を決意したのは、横浜国立大学大学院工学研究室は、医療材料と再生医療において優れた設備や研究が進められており、先進的な技術や知見を学ぶことができると考えたからです。「人を助けたり、誰かの役に立ちたいという思いがあり、医師の道を志した」と話す谷ノ口さんから、熱い思いを感じました。

始まったばかりの日系研修

日本語クラスで自己紹介

谷ノ口さんの研修は、JICA横浜での講義から始まり、日系人である自身でも知らなかった日本人の海外移住の歴史や、分刻みに組まれたオリエンテーションプログラムにも驚かれたそうです。

5月下旬からは、横浜国立大学で技術研修が始まっています。福田教授をはじめ、研究室の仲間から機材の説明やトレーニングを受け、6月から自身の研究が本格的に始まりました。また日本語能力を向上させるべく、専門的な研究以外に日本語クラスにも意欲的に参加しています。

福田教授から見た谷ノ口さん

福田教授と所属研究室にて

所属研究室の福田教授は、本事業に積極的に関わってくださり、これまで受け入れた研修員の中には帰国後も継続して共同研究を行っている方もいます。「日本からのアプローチが難しい中南米地域に対して、日系研修員受入事業が日本の医療技術を広めるきっかけとなると嬉しい。谷ノ口さんには研究結果を論文として学会で発表することも一つの目標とし、研修終了後は日本と連携しながら現地の医療技術の発展に貢献してほしい」と帰国後の活動にも期待していらっしゃいます。研究以外の場においても、日本の文化や社会を楽しんでもらいたいという想いがあり、積極的に研究室の方々や学外の方とコミュニケーションを取る場を提供してくださっています。

最後に谷ノ口さんに将来の夢をうかがったところ、研修で学んだことを活かして外科医となり、多くの人を助けたい」と語ってくれました。また、「Japan is a part of me(日本は私の一部)」と話す姿から、現地の日系コミュニティと日本の“架け橋”となり、帰国後には日本での経験やたくさんの学びを現地の日系人の方々へ伝えたいという思いが伝わってきました。

谷ノ口さんの研修は始まったばかりですが、すでに新しい環境に慣れつつあり、今後の研修を非常に楽しみにしている印象を受けました。また、先生や学生との関係も良好で、研究に専念できる環境を着実に構築している様子がうかがえました。今後の研修が実りのあるものとなり、谷ノ口さんが研修を通して学んだことを現地日系社会の発展につなげていくことを期待します。

日系研修員受け入れ事業とは

中南米には213万人の日系人が暮らしています。彼らへの技術協力を通じ、移住先国の国造りに貢献することを目的に実施している研修が日系研修です。毎年約140名の日系研修員が農業、医療、保健福祉、教育といった分野の研修を日本で受けています。