2018年7月25日
7月14、15日の2日間に渡り、教師海外研修の第3回事前研修を実施しました。2回目の事前研修で、開発教育についての理解を深めた研修参加者7名は、今回「多文化共生」について学び、帰国後の授業実践の構想を練りながら、渡航に際しての最終準備を進めました。
午前のセッションでは、JICA中南米部 高橋スリマラ職員が「ブラジルの概要とJICAのブラジルにおける活動」というタイトルで講義をしました。ポルトガル語のミニレッスンとアイスブレイクを兼ねて、ポルトガル語で自己紹介をし合うなど、参加者はどんどん話に引き込まれていきます。ブラジルの歴史から、ブラジルにおけるJICAの具体的な活動説明まで、あっという間の1時間でした。
参加者からは、現地のニーズと協力者側のマッチングについての質問もあり、ブラジルとJICAの活動についての理解を深めることができました。
鶴見国際交流ラウンジにて
鶴見地区仲通りにある沖縄物産店
1日目の午後は、「多文化共生」を学ぶために神奈川県の中でも在留外国人の多い横浜市鶴見地区に出かけました。まず横浜市が設置し公益財団法人横浜市国際交流協会が受託運営する、鶴見国際交流ラウンジを訪問し、館長補佐 沼尾実氏より鶴見地区における「多文化」についての講義が行われました。続いて鶴見在住のブラジル人が中心となり発足されたNPO法人ABCジャパンの横江美智子氏より、在留外国人に対する支援活動についてお話しをいただきました。
お二人の話から、鶴見は在日朝鮮人、南米から移住して来られた日系人、沖縄から移住して来られた方々など、異なる背景を持つ方が多く住んでいる地区であること、またその中で「多文化共生のまちづくり」をどのように進めているのかを具体的に知ることができました。
その後、JR鶴見駅から鶴見線に乗り、鶴見朝鮮幼稚園を訪問し、自らも同幼稚園の卒業生である皮進氏より、幼稚園の歴史や在日朝鮮人の歴史などについて説明いただきました。
当事者から話を伺うことで、参加者は鶴見における多文化共生について、理解を深めていました。
鶴見地区には、沖縄や南米を思わせるような街並みがあります。沖縄物産店や街の散策を通して「多文化」を実感した後、ボリビア料理店にて食事をしながら、お店を営む家族との交流でさらに様々なルーツを持った人々が同じ土地で共に生きることについて深く考えることができました。
ABCジャパン発行のポルトガル語による「第2種電気工事士筆記試験対策」の冊子
2日目の朝は、前日の鶴見地区フィールドワークで各自が撮った1枚の写真を使い、子どもたちにどのようなことを問いかけて、何を引き出したいのかを考えるフォトランゲージセッションを行いました。
各自、1分間の持ち時間の中で、「問いの質」を磨く練習をしました。ある参加者は、右の写真を使い「これから何が読み取れる?」と問いかけ、鶴見地区で多くの日系外国人が就く電気工事士のポルトガル語版試験対策教本を紹介し、その背景等を知らせ理解を深めさせたい、と語っていました。
「多文化共生」を考えるヒントになる2つのワークショップを体験しました。1つは「バーンガ」(注2)という異文化コミュニケーションゲーム。異文化に遭遇した時の自己の行動や、多様性の中での他者とのコミュニケーションのヒントについて気づき、考えることができました。
またもう1つ、認定特定非営利活動法人 開発教育協会(DEAR)発行の「レヌカの学び」を通じ、私たちの中に潜む固定観念や、文化の背景を知ることの重要性に気づいたようでした。
なお、ここでの「ワークショップ」とは、参加型学習や体験型学習を促す教材・素材・アクティビティのことを示します。
グループディスカッションの様子
かながわ開発教育センター(K-DEC)の小野行雄氏をアドバイザーとして迎え、これまでの事前研修で得た知識や気づき、抱いた疑問や伝えたいことなどをふりかえりながら、「ワークショップ」の骨子を考えるセッションを設けました。参加者7名が主体となりながらも、小野氏のアドバイスのもと、「どんな子を育てたいのか」「ワークショップで子どもと一緒に何を考えたいのか」などの根本部分についてディスカッションを行いました。
「教員としての想い」「地域」「参加型」「自己肯定感」「感性」などのキーワードのもとで多くのアドバイスをもらいながらも、参加者が特にハッとしたのが「単純化」だったようです。作り込み過ぎる教材は逆に使い難くなることがあるので、できるだけシンプルにすると良いとのことですが、このキーワードによって参加者のやる気に火が付いたようでした。
この2日間で得たことを7月29日からの海外研修(ブラジル)とその後の実践に生かせるようにじっくりと振り返りながら、第3回目の事前研修を終えました。海外研修の報告もお楽しみに。
教師海外研修は、国際理解教育や開発教育に熱心に取り組んでいる小・中・高の教員のみなさんを対象に、開発途上国における国際協力の現場を実際に体感することを通じて、途上国の現状や日本との関係について考え、その経験をそれぞれの教育現場で、児童・生徒の皆さんに伝え広げていただくことを目的として実施しています。