【日系研修4】帰国研修員からの活動報告(前編)ーインクルーシブ教育の実践ー

2018年8月28日

2014年度日系研修「特別支援教育」コースに参加したブラジルの小野ナンシー富美子さんから帰国後の活動報告が届きました。活動報告を2回に分けてご紹介します。

インクルーシブ教育(注1)活動

私が研修を希望した理由は勤めている学校で支援が必要な生徒が増加していたからです。当時は自閉症が2人(2歳と3歳)、アスペルガー症候群が1人(15歳)、身体障害者が1人(7歳)、その他3人の生徒が在学していました。当時学校では特別支援教育というものは、ほとんどありませんでした。担任教師や学校職員もほとんどが経験不足であり、生徒の家族は障害自体も受け入れず、複雑な状況でした。学校でも障害を持つ生徒を在学させることがとても難しかったです。
でも、研修をさせてもらったお陰で特別支援教育を学ぶことができ、研修で身に付けた知識と技術で周りを少しずつ変える活動に取り組みました。今では、専門チームで生徒をみることができるようになり、障害を持つ生徒の担当教師の指導や保護者の相談にのることも出来るようになりました。保護者と少しずつ信頼関係を深めていき悩みを聞いたり、保護者が障害をどこまで気づいているかを確認したりしながら、必要なときは心理学者や言語療法士、作業療法士とも連携しています。そのお陰で、現在、当校では障害をできるだけ早く把握し、専門家につなぐ事で早期診断ができるようになりました。今までは、4歳や6歳で診断がされていましたが、現在は1歳から子どもたちの状況を把握できるチームを育てることができ、障害のある生徒を持つクラスの他の生徒やその保護者と生徒の障害について理解する活動にも取り組んでいます。
(注1)インクルーシブ教育:すべての子どもを受入れる教育

写真(1) J. 2歳(左)

写真(2) R. 4歳

写真(3) M. 3歳

<写真(1): J. 2歳>
入学したころはほとんど人と対話する事無く一人でTVを見ていた。回るものに興味を持ち、一人で遊ぶことが多かった。現在はみんなの中に入り、いっしょに遊んだり、座ることもできるようになり、言葉もほとんど話し、抱きしめたり、先生になついている。保護者は自閉症では無いと言う。でも学校のことをとても信頼していると感じる。

<写真(2): R. 4歳>
2歳から在学している。入学当初は、自閉症の特徴がはっきりしていたが、現在はほとんど普通の生徒と変わらない。天才的な特徴も見られる。2歳から字を読む事ができ、数学が好き。


<写真(3): M. 3歳>
1歳6カ月の頃入学し、自閉症の特徴の他に発達の遅れも見られた。保護者が障害を受け入れるのには少し時間がかったが、担任教師と私たちの説得で信頼関係がつくられ、専門家を紹介することができ、下垂体腫瘍の早期発見につながり手術を行ったことで、現在は驚くほど発達している。抱きしめたり、キスもほっぺにしたりする。とても明るくなった。保護者とはとても深い信頼関係を作ることができた。

ロンドリーナ市の取組み

田村ジャイロ市議を囲んで

学校での取組みの他にロンドリーナ市では、田村ジャイロ市議の招待により、自閉症者の為の障害者手帳承認を求める市民請求に参加する機会を得ました。(注2)
また私が日本から帰国した2015年の7月6日にブラジルの障害者の法律(障害者規約)(注3)が制定されました。そしてロンドリーナ市では、自閉症優遇サービスプロジェクトクリエータの田村ジャイロ市議、マリア医師、セーリー・レジナ(障害者の母親)、CEI(自閉症児童センター)、自閉症保護者友の会、障害者保護者友の会の取組みの結果、初めて市立自閉症インクルーシブの法律が制定されました。
自閉症の子どもを持つ親は、悩みや子どもの扱いについて共有する場や、専門家による知識共有の場の必要性を強く感じています。このようなニーズに応えるため、今後勉強会を開催したいと思っています。

(注2) 田村ジャイロ市議は、ロンドリーナ市において地方自治体法律12.541番、自閉症スペクトラム障害を持つ人々の優先的ケアを提供する商業、サービスおよび同様の施設において取り決めを行った人物。目に見えない障害を持つ人々と彼らの葛藤と苦しみを分かち合いプロジェクトを実施。自閉症スペクトラム障害を持つ人々や、その保護者は通常の行列に並ぶべきではなく、迅速かつ効果的な方法で彼らの要求解決が可能となる法律を制定し、優先駐車スペースも使用可能となった。

(注3) 第27条:教育は、身体的、感覚的、知的および社会的な才能と能力の最大限の発展を達成するために、障害者の権利を構成し、すべてのレベルでの包括的な教育制度と生涯学習を確保する 興味、学習のニーズに応じています。障害者のための質の高い教育を保証し、あらゆる形の暴力、放棄、差別から安全に守ることは、国家、家族、学校社会、社会の義務です。(小野さん訳)

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小野さんは研修の最終報告で、「ロンドリーナ市にある自閉症保護者友の会と連携し、研修で学んだことを多くの方に広げていきたい、インクルーシブ教育や養護教諭職のニーズを理解してもらえる活動を始めたい」と話していました。研修参加から4年経ち、小野さんの活動の成果がしっかりと広がっていることをとても嬉しく思いました。
帰国後の活動報告(後編)では、帰国研修員の仲間と共にロンドリーナ市で始めた活動についてご紹介します。

日系研修員受け入れ事業とは

中南米には213万人の日系人が暮らしています。彼らへの技術協力を通じ、移住先国の国造りに貢献することを目的に実施している研修が日系研修です。毎年約140名の日系研修員が農業、医療、保健福祉、教育といった分野の研修を日本で受けています。