【教師海外研修】実践授業レポート from 川崎市立子母口小学校(石井 宏明教諭)

2018年11月27日

実践授業とは…

実践授業とは、JICA教師海外研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業プログラムを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。

石井先生のレポート

【画像】9月11日、担当している6年生の総合的な学習の時間にて教師海外研修の実践授業を行いました。

【学習単元について】
現在、日本でも外国に関わりのある人々は増加傾向にあります。また文化の違いを考えずに一方的な価値観の押しつけをすることで双方に予期せぬ問題が生じるケースもあります。このことはなかなか経験できないことである一方、これからの生活の中で出くわすであろうことと考えます。
そこでマジョリティ(多数派)のあたりまえがその社会のあたりまえであること、そしてマイノリティ(少数派)がそのあたりまえを目の前にしたときの気持ちを体験させたいと思い、本単元では導入として役割カードを用いてのワークショップを行うこととしました。
海外教師研修を通して自分や他の参加者が体験したことをそのまま題材(※1)にすることによって児童も体験的に異文化を理解できることをねらい、役割カードに出てくる例はブラジルで実際に体験したことを題材にしました。その上で世界の人々の文化や生活を調べることにより自分たちの文化や生活を知り、世界の人々の文化や生活に違和感を持つことは自分が日本に住んでいて日本人としてのあたりまえを中心にものを見ているからということを知ってもらいたいと考えました。
また、課題を解決していく上で、社会科の歴史学習と同じように本単元で学んだ同じことが世界の人々だけでなく、友達同士や身近な小さなことでも起きていることに気づき、「自分の身近な人々も含めた世界の人々との共生」について新たな課題がでてくるようにしたいという目的もあります。
本単元を通じて学んだことをきっかけとして、人権教育、共生教育などあらゆる教育活動に取り組む中であたりまえが人によって違うことは海外の人たちだけでなくとなりの友だちも一緒であり、子どもが「人と違ってもいい」「自分との違いを理解してもらったり理解してくれるように説明することが大切」と感じさせていきたいです。

【画像】【本時の流れと振り返り】
今回は導入とまとめで同じフォト・ランゲージ(※2)での質問を行いました。ブラジルの日本語学校で出会った6年生の児童の写真(右)を見せて「この女の子二人が自分のクラスに転校してきてそうじをしたくないと言っています。あなたたちならどうしますか?」という質問です。一見すると日本人かブラジル人かわからない中での質問なので児童の回答も様々でした。こうした質問に対する回答で児童の思考を把握すると、今回のワークショップがねらいに迫れていたかがとてもわかりやすかったです。
その後、児童を3~4人のグループに分けて、役割カードをもとに役割になりきっての話し合いを行いました。役割カードだけでは役割になりきれない児童には、台詞が書かれたヘルプカードも用意しました。このグループワークによるねらいは「マイノリティの存在がいた場合の自分の対応を自覚すること」です。そのため、数ある話し合いの議題ごとに必ず1対2~3の構図となるように役割設定をしてあります。話し合いでは、ヘルプカードもあったことにより役割になりきる児童がほとんどで、机をたたきながら自分の意見を主張する児童や強引にでも意見を通そうとする児童など様々でした。
次に、役割人物の文化的な背景などが書かれているカードを見せると、「そういうことだったのか…」「これを知っていたらちがう話し合いになるよ」「もう一回話し合いをしたい」という声があがりました。このように、自分たちが普段、無意識的に行っていることを表面化させることに一定の効果があったワークショップになったと思います。今回は45分という限られた時間だったためにここまでで終わりましたが、文化的背景を知ってから別の役割になってみることで今回のワークショップはさらに児童たちが「人によるあたりまえの違い」について考えることができるのではないかと考えます。

【画像】今回の授業では導入とまとめでの考えの変容がある児童がいる一方で変容のない児童もいたのが課題です。ワークショップ型の授業では、教師から誘導をすることはできないので、ねらいを達成するための枠組みや活動の精選が非常に重要です。今回、一見するとブラジルとは直接的に結びつかない題材を選択したことで役割になりきりやすいというメリットも出た一方で、直接的にねらいに結びつかないというデメリットも見受けられました。

今回のワークショップでの根本的な活動は、4人での話し合いの中で必ず一回は3人対1人のマイノリティ側に立つことです。本実践ではブラジル研修での体験の中から児童がより体験しやすい題材を選びましたが、児童の実態や学校の地域性を生かしながら教師が役割カードの条件を変えることでねらいに即した教材へと変化していくことが可能なのではないかと考えています。


※1教師海外研修で訪問した学校では、「児童・生徒が掃除を行う」という考えがありませんでした。そのことに異文化を感じた参加者が多く、今回の授業の導入として取り上げられました。
また、役割カードについても参加者がブラジルで感じた異文化体験が題材になっています。

※2「フォト・ランゲージ」は、写真やイラスト等を使って行うアクティビティ(学習活動)  

今回実施されたワークショップについて、2019年1月12日・13日に開催するJICA横浜開発教育教員セミナー(応用編)で、体験することができます。セミナーの詳細は決まり次第JICA横浜ウェブサイトに掲載いたします。