【研修報告】課題別研修「港湾戦略運営」のタイでの在外補完研修

2019年4月4日

タイ王国-バンコク湾周辺

JICA横浜では、「港湾戦略運営」という港湾分野の研修コースを実施しています。アジア、大洋州、アフリカの国々から港湾局職員が参加して、日本での港湾開発及び運営管理の取り組みを学び、各国の港湾の戦略的な開発や適切な管理、運営に活かすことを目指しています。

この研修では、日本での研修だけでなく、第三国での「在外補完研修」も行っています。「在外補完研修」は、日本の研修によって得た知識に加え、異なる背景事情を持つ第三国における港湾視察を行うことで、多様な背景・事情における港湾開発及び港湾運営の適用事例についての知見を深めるものです。
日本の援助による開発や、後述する日本企業の進出による開発途上国の港湾開発の成功事例として、今回はタイが研修地として選ばれました。タイの東部臨海開発を学び、またタイ港湾局(Port Authority of Thailand)職員とのワークショップを開催し、研修員が日本・タイ両国で学んだことを自国の現場で活用できるよう、支援・指導を行いました。

2018年度の本研修では、去る2019年2月24日から28日まで、タイのバンコクに一般財団法人国際臨海開発研究センターの専門家が出向き、研修員14名を対象として在外補完研修を行いました。バンコク港、レムチャバン港、そしてラッカバンICD(インランドコンテナデポ)(注1)を主な対象地として、研修員と共同で現場研修を行いました。

(注1)ICD(インランドコンテナデポ):内陸部に位置するコンテナ貨物の集貨拠点

【バンコク港】

【画像】バンコク港は、チャオプラヤ川の河口を約30km北上した位置にある市街地に近いリバーポートです。西側がバルク船(注2)、東側が10,000~12,000DWTのコンテナ船を取り扱い、タイの海上輸送拠点として60年以上の歴史を持ちます。
研修員はバンコク港を訪問し、港の利用実態について視察しました。また、開催したタイ港湾局職員とのワークショップでは今後の開発方針が紹介され、研修員と港湾開発について意見を交わしました。バンコク港では、タイ港湾局関係者から横浜港をモデルとした再開発に関心を寄せている旨の意見が表明されました。

(注2)バルク船:梱包されていない穀物・鉱石・セメントなどのばら積み貨物を船倉に入れて輸送するために設計された貨物船

【画像】

【レムチャバン港】

レムチャバン港ポートタワー視察の様子。港全体を俯瞰し、研修効果を高めました。

レムチャバン港は、バンコク湾の中で最も外海近くに位置する国際港湾です。当時タイではバンコク港後背地の拡張制限が課題であり、JICAにより開発調査が多数実施されました。地域産業と港湾開発の調和を軸とした、鹿島港総合開発をモデルケースとする日本の提案が受け入れられ、技術・資金両面で強力な支援を日本から行った歴史を持ちます。日本企業(トヨタ自動車等)の進出は雇用機会や輸出などタイ経済に貢献し、今ではバンコク港を抜いてタイ最大の貨物取扱量を誇る港に成長しました。
研修員はレムチャバン港のポートタワーを訪れ、港全体を俯瞰しました。事前にタイ港湾局職員から今後の開発内容について説明を受けていたため、実地見学としては高い研修効果を得ることができました。研修員からは、「港のつくりが日本とそっくりだ」との声を聞きました。また、NYK(日本郵船株式会社)ターミナルを訪問し、Ro-Ro船(注3)とクルーズ船の運営について学びました。これからの更なる発展と、日本企業の関わり方について注目すべき港です。

(注3)Ro-Ro船:フェリーのようにランプを備え、トレーラーなどの車両を収納する車両甲板を持つ貨物船

【ラッカバンICD】

ラッカバンICDは、バンコク港の北東に位置します。バンコク近郊にありながらも、鉄道輸送を並行させることで混雑解消の役割を担います。鉄道はレムチャバン港と直結し、主にレムチャバン港からバンコク市内への内陸輸送に使われます。
研修員はタイ国有鉄道(The State Railway of Thailand)を訪れ、鉄道輸送の役割について説明を受けました。またコンテナターミナルオペレーション会社のESCOを訪れ、ICD内オペレーションルームの見学を行いました。コンテナを管理する手法の一つとして、研修員も関心を寄せていました。



日本での研修中に、研修員は帰国後の取り組みについてアクションプラン(帰国後の取組計画)を作成しています。研修員は今回の在外補完研修の成果を自国に持ち帰り、アクションプランをアップデイトします。それが各担当港湾の開発に反映され、各国の発展に寄与することを期待しています。

(記事制作協力)一般財団法人 国際臨海開発研究センター