【教師海外研修】実践授業レポート from 横浜市立並木第一小学校(青山 仁美教諭)

2019年4月11日

実践授業とは…

実践授業とは、JICA教師海外研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業プログラムを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。

青山先生のレポート

ワークショップの様子

12月10日(月)担当している小学1年生の外国語活動の時間に教師海外研修の実践授業を行いました。

【国際教室のある学校】
横浜市立並木第一小学校は、国際教室が盛んな学校です。ベトナム・ペルー・バングラデシュなど、様々な国につながる子どもたちが多く通い、共に学校生活を送っています。秋には、児童運営委員会で「世界のあいさつ運動」が行われ毎朝正門に児童運営委員会の児童や先生が立ち、登校してきた子ども達と「Buenos(ブエノス) dias(ディアス)! (スペイン語)」「早(ザー)上好(シャンハオ)!(中国語)」など、様々な言語で「おはよう」のあいさつを交わすなど、様々な文化を身近に感じられる雰囲気があります。
4月に入学した1年生の子どもたちも国際教室に遊びに行ったり、色々な国の言葉で元気にあいさつをしたりして、楽しく過ごしています。異文化を身近に捉え、親しみをもって関わろうとしている子ども達と、多文化共生について一緒に考えてみたいと思い、今回の教師海外研修で作成したワークショップを実践しました。

ジェスチャー・ワールドで使用したカード

紙芝居を通して異文化について学ぶ

【授業実践:ジェスチャー・ワールド】
「ジェスチャー・ワールド」というワークショップは、ジェスチャーだけでコミュニケーションを図り、グループの友達が共通して「できること」「できないこと」を見つけるゲームです。子ども達は、このゲームを通して、国や地域によってジェスチャーが異なることや、ジェスチャーが異なることで起こるコミュニケーションの摩擦を体験しました。子ども達は、担任から「ジェスチャー・ワールド」という架空の世界の「はい」と「いいえ」のジェスチャーを教えてもらいます。そして、けん玉や一輪車などの絵カードをめくりながら、絵に描かれていることが「できる」か「できない」かを、「はい」「いいえ」のジェスチャーで答えていきます。
しかし、実はこのゲーム、人によって教わったジェスチャーが違います。半分のグループは、「はい」のジェスチャーがオッケーサイン(人差し指と親指をくっつけて円をつくる)で、「いいえ」のジェスチャーは、グッドサイン(親指を立てる)をします。ですが、もう半分のグループはその逆のジェスチャーを教わっていました。そうすると、同じジェスチャー同士では簡単に意思疎通が取れるのですが、ジェスチャーが異なる同士で共通点を探そうとするとなかなか上手くいきません。だんだんと、「何か変だぞ。」ということに気づき「先生、『はい。』ってこうだよね?」とアイコンタクトとジェスチャーで違和感を懸命に伝えようとする児童の姿もありました。
担任から、「ジェスチャー・ワールド」の種明かしを聞いて、「えー!」「そういうことか。」と、驚いたり、違和感の原因に納得したりした様子の子どもたち。このゲームを通して、世界には、国や地域によってジェスチャーが異なることがあること。日本で使われているものも、海外では通じなかったり、別の意味に捉えられてしまったりすることなどを体験的に理解することができたようです。

次に、ジェスチャーなどの習慣が異なることで、実際にどんな場面で困ることがあるのか、ブラジルから来た日系3世の女の子(「エメリンちゃん」)が日本の学校に転入した時に体験したカルチャーショックの紹介から考えを深めました。1年生に理解できるように紙芝居にし、ロールプレイも取り入れながら、実際の場面がイメージできるようにしました。
このワークショップを通して子どもたちは、「日本では、おぎょうぎの悪いことをしていると思った。けれど、エメリンちゃんはそういうつもりじゃないから、かわいそうだと思った。」「ブラジルでは、学校の中で靴(上履きではない)をはいていいなんて知らなかった。びっくりした。」といった、感想をもっていました。

【授業実践を終えて】
日系3世の女の子の体験に共感的に考えたり、課題意識をもてたりするかというところについては、女の子の立場に立って考えを深める子もいれば、異文化に対してコミュニケーションの難しさを感じる子もいて、子どもたちの捉え方は様々でした。ですが、このワークショップを通して、子どもたちはまず「異文化の存在を知る」ということができたように思います。今後も、子どもたちと日々の学びの中で多様な人の生き方や考え方にふれ、一緒に考えていけたらと思います。