【研修報告】2018年度課題別研修「水産冷凍機器の保守管理」

2019年6月19日

JICA横浜では、2019年3月25日から4月18日にかけて、ドミニカ、セントビンセント、グレナダ、ソロモン、モロッコ、ギニアビサウの6か国から合計6名の参加を得て、課題別研修「水産冷凍機器の保守管理」コースを実施しました。

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【画像】水産物は鮮度低下が早いので、流通には氷や保冷が必要です。カリブ海および大洋州の小島嶼国やアフリカは開発途上国の中でも水産用冷凍機器の整備が遅れており、供与された製氷機や冷凍庫が重要な役割を担っています。
一方で、オゾン層の破壊と地球温暖化の影響が大きいフロン冷媒に対する国際的な規制が進んでおり、近い将来、既存施設・機材の冷媒の転換も必要となってきます。

本研修では、国際的な規制に則った自然冷媒のアンモニアやCO2を用いた冷凍機器の運用と維持管理に必要な基礎的な知識と技術の習得を目指し、専門家による講義をはじめ、冷凍機や製氷機のメーカーで運用・保守管理に関する実習を行いました。またアンモニアやCO2冷媒の冷凍機メーカーやそれら冷凍機を運用している会社を訪問し、それぞれの特徴を理解しました。

オーバーホール実習

長谷川鉄工(株)
圧縮機オーバーホール実習の様子

産業用冷凍機の製造販売などを行っている長谷川鉄工(株)にて、圧縮機のオーバーホール(気体になった冷媒を圧縮する機械の分解・清掃・再組み立て)実習を行いました。圧縮機は冷凍サイクルにおける重要な機械であり、長年の稼働で起こり得る問題やその解決方法についての説明に対して、研修員は熱心に耳を傾けていました。

現場視察の様子

日本熱源システム(株)は、CO2冷媒冷凍機、空調用および産業用大型冷凍機などを製造しています。本研修では、製造工場である滋賀工場を訪問し、CO2冷媒の長所および短所について説明を受けました。(株)鏡運送は、冷凍・冷蔵による食品・生鮮食品輸送事業を行っており、上記日本熱源システムが製造しているCO2冷媒冷凍機を運用しています。フロン冷媒と比較してエネルギーの消費量が大きく削減されている事例について説明を受けました。研修員からは、フロン冷媒からCO2などの自然冷媒への転換についての背景を深く理解し、所属先と今後の方針を検討する手助けになったとの感想がありました。

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長期の鮮度保持が可能な凍結

アイスマン(株)
ソルトアイスを用いた凍結実験の様子

アイスマン(株)は、各種製氷機を製造しています。研修では、ソルトアイス(シャーベット状にした海水氷)を用いた水産物の凍結実験を行いました。ソルトアイスは、施氷時に魚体を包み込むことで均一冷却が可能で、製氷時に使用する塩の量によって温度調節が可能です。これにより急速凍結と長期の鮮度保持が可能になります。また、研修員は、毎日、製氷設備の点検項目を確認・記録し、異常があった際に迅速に対処することの重要性を学びました。

【画像】研修参加国では冷凍機器の保守管理を担当する技術者数が少なく、人的資源が限られていることが多いです。今後は、今回の研修を担当してくれた講師などとの繋がりに加え、同様の問題を抱える研修員間でも協力し合うことで、水産冷凍機器を取り巻く環境が改善されることを期待しています。

(記事制作協力)一般社団法人マリノフォーラム21

閉講式後の集合写真

 

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持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

SDGsとは、2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題する成果文書で示された具体的行動指針。17の個別目標とより詳細な169項目の達成基準からなる。

本研修コースは、SDGsで定められた17の個別目標のうち、目標 14.「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」への貢献が期待される。