【実施報告】2019年度 JICA横浜教師海外研修 第3回事前研修

2019年7月30日

7月13、14日の2日間に渡り、教師海外研修の第3回目事前研修を実施しました。第2回目の事前研修で、開発教育についての理解を深めた研修参加者7名は、今回は「多文化共生」について学び、帰国後の授業実践の構想を練りながら、渡航に際しての最終準備を進めました。

7月13日(土)

【ブラジル連邦共和国とJICAの活動】
午前のセッションでは、JICA中南米部 南米課 柏木正平職員より「ブラジルを知ると世界が見える?~中南米最大の超大国ブラジルと日本の歩み~」というタイトルでお話をいただきました。歴史や政治・経済から、ブラジルにおけるJICAの具体的な活動説明まで、あっという間の1時間でした。議員として活躍する日系人や、貿易など日本とつながりのあるブラジル、鉄鋼や製紙、土壌の開発などの歴史をたどってきた投資先としてのブラジルなど、様々な面からブラジルについて知ることができました。

NPO法人ABCジャパンにて

鶴見地区仲通りにある「ユリショップ」

【鶴見地区フィールドワーク】
午後は、「多文化共生」を学ぶために鶴見地区に出かけました。まずNPO法人ABCジャパン(注1)の横江美智子氏より、多文化共生、定住外国人の自立、子どもの教育保障の面から、ABCジャパンの活動についてお話しいただきました。鶴見に住む、南米から移住して来られた日系人や沖縄出身者、外国から移住して来られた方など、異なる背景を持つ多くの方が「一緒に」行動することを大切に、日本での自立を目指して日々活動していることを教えていただきました。教室内の掃除表に、日本の学校ならではの習慣にも慣れてほしい、という横江氏の思いを感じた参加者もいました。
その後、2018年度教師海外研修参加者の山本エメリン氏に案内していただき、鶴見の街を散策しました。ビルの一室にあるブラジル食材の商店、エメリン氏のお母様が経営するブラジルの軽食「パステル」の売店、南米のレストランや沖縄物産店が立ち並ぶ仲通りで「多文化」を実感した後、「ユリショップ」に立ち寄り、20年程鶴見に暮らしている日系人のユリさんにお話を伺いました。当事者から話を伺うことで、参加者は多文化共生や移民について、深く考えることができました。

7月14日(日)

ABCジャパンで見つけた鶴見区マスコットキャラクター「ワッくん」「ワッコちゃん」のイラスト

【1分間フォトランゲージ】
2日目の朝は、フォトランゲージの模擬授業を行いました。前日の鶴見地区フィールドワークで各自が撮った1枚の写真を使い、子どもたちにどのようなことを問いかけて、何を引き出したいのかを、各自2分以内で発表しました。
ある参加者は、右の写真(注2:鶴見区のマスコットキャラクター)を使い「世界をつなぐのは〇〇である。さて〇〇を考えてみよう」と問いかけ、多文化が共生するためのヒントを引き出したいと語っていました。

 
【ワークショップ体験】
帰国後のワークショップ(注3)作成のヒントにしていただくために、いくつかのワークショップを体験しました。「バーンガ」(注4)という異文化体験ゲームや、認定特定非営利活動法人 開発教育協会(DEAR)発行の「レヌカの学び」(注5)など、体験とふりかえりの組み合わせによって、学習者の気づきを引き出すようなワークを実際に体験したことで、参加者の中にイメージが沸いたようでした。

(注3)「ワークショップ」:ここでは参加型学習や体験型学習を促す教材・素材・アクティビティのことをいっています。

 
【日本の子どもたちに移民を伝える意義と手法】
森茂岳雄氏(中央大学教授)より、「国際理解教育としての移民学習の理論と実践 −グローバル教育と多文化教育をつなぐ−」と題した講義をいただきました。世界の移民の歴史や、日本と「移民」の歴史やかかわり、移民を学校で扱う際の意義や手法について、詳しくお聞きすることができました。参加者はこれから、ブラジルへ渡った日本人たちの過去や現在についてさらに深く学んでいきます。

グループディスカッションの様子

 
【「ワークショップ」骨子案作成】
かながわ開発教育センター(K-DEC)の小野行雄氏をアドバイザーとして迎え、「ワークショップ」の骨子を考えるセッションを設けました。
授業やワークショップの土台となる「Why(多文化共生と移民を伝える意義)」と、「What(何を引き出して何に気づかせたいのか)」について参加者7名が主体的にじっくりと話し合いました。どのようなワークショップが完成するのか楽しみです。

この2日間で得たことを8月4日からの海外研修とその後の実践に生かせるようにじっくりと振り返りながら第3回目の事前研修を終えました。海外研修の報告も楽しみです!