【留学生と企業の連携】ソフトバンク株式会社でのインターン

2019年10月10日

「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)」は、アフリカ諸国の優秀な若手人材を社会人留学生として受入れ、修士課程での学位取得と日本企業でのインターンシップを提供するプログラムです。2014年秋に第1期生が来日してから5年が経過し、受入1,200名を超えました(2019年7月現在)。
豊かな天然資源を背景に成長を遂げるアフリカ諸国では、今後ますます産業の活性化が見込まれます。日本企業が高い技術力を生かして、社会課題の解決に貢献できる潜在的なニーズ(ビジネスチャンス)が数多くあります。研修員は、現地のネットワークや日本での経験を活かし、日本企業がアフリカで経済活動を進める際の水先案内人となって活躍することが期待されています。

JICA横浜では、過去に29名のABEイニシアティブ研修員を受け入れました。今回は、2016年にカメルーンから来日した第4期生、Ekolle Zie Eya(エコレ ジエ エヤ)さんの活動をご紹介します。

業務に取り組むEkolleさん

Ekolleさんは、2019年3月に横浜国立大学大学院で修士課程を修了し、4月からソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)で約4か月間のインターンシップに参加しました。

ソフトバンクは、海外での新規事業の創出や、既存事業と海外を融合させたビジネスの収益化など、ABE研修員の持ち味を生かしたビジネスチャンスの拡大に意欲を見せており、「アフリカ進出の際には是非Ekolleさんにも水先案内人となって活躍してもらいたい」と、期待を寄せています。

これに応えるべく、アフリカでの新規ビジネスアイディアの提案を見据え、既存プロジェクトの運営やビジネスモデリングの実践に取り組んでおり、マーケットリサーチからIoTソリューションの深掘り、パートナー会議への参加や人脈構築まで、日々の活動は多岐に渡り、チャレンジの連続です。

Ekolleさんが配属されたスマートシティプロジェクトは、ソフトバンクが通信事業で培ったネットワークを基盤に、IoTやAIなどの最先端技術を取り入れて展開する事業のひとつ。国内各地の自治体と協定を結び、ICTを利活用した社会課題の解決や地域社会の発展を推進しています。Ekolleさんによると、カメルーンではIoTなどのデジタル技術はeガバナンスなど一部での利用にとどまり、産業や公共サービス分野への普及は進んでいないとのこと。「農業や教育、医療など様々な場面での需要が見込まれるため、ソフトバンクのビジネスには学ぶところが多い。大学院で学んだ分野とも関連性が高くやりがいがあります」
実務スキルに加え、日本企業で働くことで企業文化からも多くの気づきを得たというEkolleさん。情報共有の大切さ、時間に対する意識の高さやチームワークの良さなど、身を持って実感しているそうです。
「企業はとても温かく迎え入れてくれ、日々のアドバイスやサポートに感謝しています。同じインターンシップに参加するABE研修員の4人も家族のような存在」。フロアを案内してくれるEkolleさんの表情からは、充実した日々を過ごしている様子が伝わってきました。

アフリカのビジネス環境を紹介

企業担当者によると、当初は少し緊張の面持ちだったというEkolleさんですが、今ではすっかりチームになじみ、積極的にアイデアを出すなど即戦力として成長しています。また、Ekolleさんの存在はチームにとってもよい刺激になっているとのこと。「ABE研修員がチームに加わることで、新たな発見があったり、これまでの常識が覆ったりすることもしばしば。ミーティングなどでも英語を使う機会がさらに増え、部署全体の活性化やブラッシュアップにつながっています」と、振り返ります。ソフトバンクでは、2017年からABEインターンシップの受入れを開始し、その数は14カ国18名に達します。「手探りでのスタートでしたが回を重ねるごとに工夫を凝らし、より有意義な機会として活用できるようになってきました」

帰国後は鉱山・産業技術開発省に復職し、インターンシップで学んだことを存分に生かしたいと抱負を語ります。日本のビジネス文化を紹介するセミナー開催もそのひとつです。カメルーンでは、「カイゼン」プロジェクトによって日本の知名度は高く、IT技術や日本米の優れた品質には定評があるとのこと。「日本企業に関心を持つ潜在的な現地企業は多い。カメルーンの企業が日本とビジネスを始めるきっかけを作りたい」と、意気込みを見せています。

「アフリカは日本にとってまだまだ遠い存在。知られざる歴史や文化の多様性を知ってもらいたい」と語るEkolleさん。カメルーンと日本にどのようなビジネスの息吹が生まれるのか、今後の展開が楽しみです。