【教師海外研修】実践授業レポート from神奈川県鎌倉市立御成中学校(谷川大介教諭)

2020年2月18日

実践授業とは…

実践授業とは、JICA教師海外研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業プログラムを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。

谷川先生のレポート

11月20日の特別活動の時間を使って、担任をしている1年2組で教師海外研修の実践授業を行いました。

【授業を行うにあたって】
本校は鎌倉駅の近くに位置し、土地柄、海外の人々と出会う機会の多い場所です。外国にルーツをもつ生徒も通学していて、生徒たちは日々、様々な文化や価値観にふれながら学校生活を送っています。一方で、自己肯定感がやや低く、自分らしさを表現することに苦手意識をもつ生徒もいるように感じます。また、一つの「正解」を求めてしまいがちで、それ以外のものを受け止めることが上手とはいえない状況にあります。
そんな中で、ワークショップによる自己開示を通して、お互いの目に見えない背景を知るとともに、「みんなが安心して過ごせる世の中にするために」というテーマのもと、自分らしさを表現しやすい環境をつくりたいと考え、本実践を行いました。

【授業について】
特別活動の時間を使い、「みんなが安心して過ごせる世の中にするために」というテーマで、「多文化共生」について体験する2つのワークショップを行いました。2つのワークショップは、今年度の教師海外研修参加者で作成したものです。

ワークショップ①「Myストーリー」
まず初めに、世界の食文化について、食べものの写真を見て感じたことや、現地の人々に日本の寿司の写真を見せたときの反応の内容から感じたことを共有しました。その後、今回のブラジル研修で出会った4名分の顔写真と、生まれや育ち、職業や趣味のカードをマッチングさせるグループ活動を行いました。各グループに正解の組み合わせを伝えると、見た目だけではわからない背景に気付き、驚いていました。

【生徒の感想】
・私たちが食べている寿司も、外国の人たちの見方や感じ方が色々だと気付き、不思議な気持ちになりました。文化や感覚が違うから感じることは違うかもしれないけれど、相手の感じることや感じ方を否定してはいけないと思いました。
・私たちの班は見た目から「この人はダンスをしていそう」「この人は大学の教授っぽい」と決めました。全問正解できましたが、外見で決めつけられて傷つく人も多いのではないかと思いました。
・自分たちの常識が、他では非常識であることもある。自分たちの勝手なイメージ、偏見で決めつけることはよくないし、失礼である。

 

 

ワークショップ②「自分オープン」
2時間目には「自分カード」を作成しました。似顔絵、今までで一番うれしかったこと、自分が大切にしているもの・こと、今までで一番つらかったこと、半年経った今なら言える!実は私…について、それぞれが画用紙に書き込み作成したものです。そのように作成した「自分カード」を使って、2種類の「いいねシール」と「わかるシール」を活用し、聞く側は必ず反応するというグランドルールのもと、4人グループで自己開示をしました。
その後、ワークシートを活用し、自己開示前の気持ちや自己開示後の気持ちを話し合いました。最後にはまとめとして、「みんなが安心して過ごせる世の中にするために」という視点から、多様な背景・文化や自分との違いをどのように受け止めたらいいかについて考え、話し合いをしました。

【生徒の感想】
・世の中にはいろいろな意見をもった人がいて、それぞれ思っていることはバラバラかもしれないけれど、どんな人の意見でも受け入れてあげることがよい方法だと思った。誰かの意見に対して、賛成するだけじゃなくて、何か意見を言ってあげるのもいいと思う。「わかる」、「いいね」を言ってあげるだけでも安心できると思った。
・自分では変だ、理解してもらえないと思っていても、意外と受け入れてもらえるものだと知った。また、相手も同じように不安を抱えていることも多いと思うから、私も自分からいいね、共感できる、と示すことも大切だと思った。自分の思っていることははっきり言う。でも、それだけではなく、相手の意見も聞いて考えることが大事だと思う。
・発表する前は、相手は私の発表を聞いてどんなことを思うのか、少し心配だった。発表したあとは、ほっとした感じ?恥ずかしいとか、心が痛いとかは全然なかった。逆に、少しすっきりした。
・顔とか声のトーンで相手が不安になることもあれば、うれしい気持ちになることもあるから、真顔ではなくニコニコしていれば、相手もニコニコできて、お互いに安心し合うことができると思う。反応してあげればいいんだとわかった。

【実践授業を終えて】
「多文化共生」という言葉について、ブラジルでの2週間で考え続けました。はっきりとした答えは出ていません。そのため、「みんなが安心して過ごせる世の中にするために」という視点から、さまざまな価値観を受け入れられるような土壌づくりができればと思い、本実践を行いました。
ワークショップ②は、生徒が活動を楽しんでいるのが伝わってきました。カードの作成に時間がかかり、振り返りの時間を十分にとれなかったことが反省です。作成までの時間と、自己開示や振り返りの時間は分けたほうが、学びがより深まると考えます。
今後、グローバル化がより進み、様々な背景や価値観をもった人々が社会に増えてくるのではないでしょうか。そんな中でも、安心して自分らしさを表現することができるように、今後も社会と学校を結び付けられるような実践を続けていきたいと考えています。