【教師海外研修】実践授業レポート from大和市立上和田小学校 特別支援学級(わかば級)(兵頭絵梨教諭)

2020年2月18日

実践授業とは…

実践授業とは、JICA教師海外研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業プログラムを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。

兵頭先生のレポート

 

【授業までの取り組み】
11月18日、本単元の1時間目として、ワークショップ①「みんなにあるもの なぁんだ」を行いました。この時間のねらいは、「(見た目だけではわからない)ちがいは誰にでもあると知る」です。ブラジルの人たちの情報をクイズ形式で聞き、「いいね」もしくは「そうなんだ」のサインで反応します。意外な答えに対して「えー!」「日本人だと思った!」などと驚きつつ、サインを挙げる子どもたち。「日本人っぽい」という感覚を持っていることに、担任が驚きました。さらに、訪問先のブラジルで出会った登場人物4人の写真が並ぶと、その見た目のちがいから「みんなちがうね」と、つぶやきが聞こえました。「わかば級の先生たちはみんな同じかな」と尋ねてみると、子どもたちは「ちがう」と答えました。
ねらいをおさえつつ、今回の単元ではサインで「ちがい」を受けとめることを確認しました。また、登場人物の一人について、写真を見ただけで「こわそう」「怒りそう」というイメージを持った子たちがいたので、次時の導入として用いることにしました。

 

【本時の実践】
11月21日、本単元の2時間目(本時)として、ワークショップ②「じぶん いいね」を行いました。
突然のことに対応できない子たちもいます。活動に入る前の説明は丁寧に進めるよう意識しました。前時のねらいを確認し、「こわそう」「怒りそう」と言われた登場人物の「いいところ」を紹介しました。前時にも使った「いいね」「そうなんだ」のサインで反応することをおさえるとともに、忘れている子や前時にいなかった子のためにサインを挙げる練習をしました。また、道徳の時間に学習した「ふわふわことば」「ちくちくことば」(※1)をふり返り、「ふわふわことばを使おう」と約束しました。
「今日は自分のいいところを友だちに伝えます」と話しましたが、サインをくるくる回すことに夢中になって集中できない子もいました。しかし、担任2人による活動のデモンストレーションが始まると、しっかりと目を向けていました。担任の劇やモデルは普段から見る機会が多いので、視覚的に一番わかりやすい手段でした。担任の「いいところ」にも「いいねー!」「そうなんだー!」とサインを挙げながら元気よく反応する子どもたちの様子に安心しました。
活動は、5人×4グループで行い、それぞれに一人ずつ担任がつきました。自分のいいところは比較的書くことができる子が多くいました。中には「自分のいいところ、ありすぎて選べないよ!」といった発言もありました。反対に「自分のいいところなんて、自分で書いていいのかな…」と悩んでいる子には担任が相談にのりました。また、発語が難しい子は「表情カード」から顔を選ぶことで自分を表現しました。

 

自分のいいところを伝えたり、友だちに伝えてもらったりして、サインを挙げてもらうと、子どもたちの素直な笑顔が見られました。グループ分けは、11月初旬に行った遠足のグループにしました。その経験だけではまだ互いのことを知るには不十分だったグループもあり、相手にいいところを伝えるのに考え込む様子もありました。見方を変えれば、ワークショップがいい機会になりました。

※1
ふわふわことばとは
言われると、うれしくなるいい気持ちになる「あったかい」ことば

ちくちくことばとは
言われると、かなしくなるいやな気持ちになる「相手を傷つける」ことば
(※なお、これらふたつの言葉の概念は、学級で話し合って決定したものです)

【ふり返り】
ねらいが達成できたか確認した後、「気づいたことや思ったことを教えてください」と話しました。子どもたちからは、「グループのみんなのいいところを見つけられてよかった」「○○くんが優しくて、手伝ってくれた」「他のグループのことも聞きたい」といった素敵な反応をもらうことができました。「ぼくたちのもいいですが、先生たちのも作った方がいいと思います!先生たちのも見たいです!」との発言には、思わず笑ってしまいました。

【その後】
いいところを書いた用紙は「花びら」になり、子どもたちの写真を囲むように4枚貼ると「花」になります。色も4色から好きな色を選ぶようにしたので、みんなの花が集まるとよりカラフルになります。「交流級の友だちや先生たちにも見てもらえるように、廊下に掲示します」と伝えると、笑顔や驚きの表情が見られました。次の授業では、みんなの花を咲かせ、「わかば いいね!」の花畑をつくります。
本単元は、ブラジルの人たちの物語を、自分のことや友だちのことを考えるきっかけとしました。最後である4時間目には、JICA職員の方をお呼びし、ブラジル以外の世界の話を聞く予定です(2019年12月実施済)。自分のことも友だちのことも大切に想う気持ちとともに、世界とのつながりも忘れずにいてほしいです。