【教師海外研修】実践授業レポート from横浜市立三保小学校(名原道子教諭)

2020年2月28日

実践授業とは…

実践授業とは、JICA教師海外研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業プログラムを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。

名原先生のレポート

11月14日(木)に担任をしている小学6年生の特別活動の時間に教師海外研修の授業実践を行いました。

【授業を行うにあたって】
本校は、年々様々な国にルーツをもつ児童が増加傾向にあり、全校の人数は現在千人近くの大規模校になります。ルーマニア、マレーシア、中国などにルーツをもつ児童や保護者の転勤等で海外に移住していた、あるいは本校よりシンガポール、ブラジルなどの学校に転校した児童もいます。よって、同じ学校内に様々なルーツをもつ人がいて、一緒に生活している現状があります。しかし、自分と違う文化、慣習、考え方の違いや見た目なども含め、「違い」に直面した時に、互いに否定的になったり、受け入れなかったりして、トラブルになることもあります。
そこで、今回、教師海外研修を通して体験したことやそれを通して感じたこと、考えたことなどを基にして、研修参加者で2つのワークショップを作成しました。児童に授業の中で、相手のことをより知ることで、自分と違うところがあることに気づくことを通して、それぞれのよさを再確認するとともに、人にはそれぞれ背景がたくさんあり、自分たちが見たもの、知っていたことなどだけでは判断できず、まず、自分の視点、価値観、先入観に気づくこと、疑ってみることなどが必要であることを教え込むのではなく、体験を通して気づくことをねらいとしました。また、この作成した2つのワークショップを通して、人それぞれ違いがあることを知ることの楽しさや他者をもっと深く知ることや自分自身の背景や文化などを自己開示することで、よりよい人間関係を築くことにつなげていけたら思い、授業を行いました。

学級目標からつなげてワークショップへ

ワークショップ「my ストーリー」

【本時授業について】
特別活動の授業において、教師海外研修参加者で作成した二つのワークショップ(「my ストーリー」と「自分オープン」)を実践しました。今回は、小学校学習指導要領特別活動の学級活動の内容(2)日常生活や学習への適応と自己の成長及び健康安全-イ「よりよい人間関係の形成」に基づいて行ってみました。「よりよい人間関係を築くためには」というめあてに向かって、学級という社会からまずは見直して、そして様々な人たちとの関わりへと関心を広げたいと考えました。

【2つのワークの実施】
導入では、自分事として考えさせるために、学級目標を前時でふり返り、その中で「同じ人たちばかりで行動したり、遊んだりしている。」や「同じ人とばかりと話したり、接したりしている。」などの意見があがっていることを伝え、学級の課題をつかみました。
1つ目のワークショップ「my ストーリー」では、グループワークの最初に「さて、どんな人でしょうか。話さず考えてみよう。」と伝え、「どんな人だろう?」と4人の写真だけを見て思考する時間をもちました。「この人は、こんな仕事をしていそう。」や「外国人かな。」「日本人だよ。」「服装が先生をしている人みたい。」・・・など、見た目で判断していることが見えてきました。
次に、人物写真4人の「名前、両親の国籍、生まれ、育ち、言語、スポーツ、仕事」について書かれた情報カードを各クループに配り、人物写真と情報カードをマッチングする活動を行いました。互いの意見が違って、話し合いが活発になっている様子が見られました。「この名前なのかな。そんな感じに見えない。」「この人は絶対にこの名前だよ。」「ブラジル!?」「この人はこう見えるよ。」などと、4人が自分の想像していない背景をもっていることを少しずつ感じてきました。
最後に、4人の詳しい背景の書かれた解説カードを配り、1人1役で、声に出して解説を読み合い、4人の見えない背景について知りました。ここでは、「えー意外だな。」「やっぱりそうか。」「おどろき!!」「そうは、見えなかったな。」など多様な反応が見られました。
「my ストーリー」ワークショップを終えて、クラス全体で振り返りをしました。児童からは、「見た目で改めて人を判断していることに気づいた。」「自分が思っていたことと違う。」「予想と違った。」「決めつけないで、互いに話し合ったり、知ったりすることが大切だと思った。」「気遣いが大切。」などの発言がありました。
最後に、本時の前に作成していた自分オープンカード(※)を使って、2つ目のワークである「自分オープン」ワークショップを行いました。自分のことを伝えることに緊張している様子や友達のことを知って、驚いている様子など様々な反応が見られました。楽しかったようで、別のグループの人たちともやりたいという声があがりました。
その後、それぞれ児童1人1人の行動目標を立て、日常生活で日々振り返りをしています。

【授業を終えて】
今回は45分に納め、参観してもらうために「自分オープン」ワークショップを最後に活動して終わるという流れでやりました。児童の実態から、深く考える時間の確保を考慮すると、ワークショップを1つずつ1時間で取り組むのも有効であると思います。また、今回は、特別活動の中で授業を行いましたが、道徳、総合的な学習の時間や社会科など取り組める教科は、多岐に渡ると感じました。ねらいや目的が大切であり、学習の組み立て次第では、多くの学びへと広がる教材になることが今回の実践や振り返りでわかりました。特に「my ストーリー」ワークショップについては、私たち教師が今回、教師海外研修を通して出会った人たちから気づかされた目には見えない人々の背景にせまり、その背景を知ることで自分の視点や見方に改めて気づいたり、人のことを互いに理解し合い、違いを知ることの楽しさや人々とわかり合うことの良さに気づいたりできたことを、児童に疑似体験させることができたように思います。また、2つ目の「自分オープン」では、自分のことを自己開示することで、自分のことを知ることは勿論のこと、互いに深く知ることの楽しさや受容する心、そして互いに興味をもっている様子が感じられました。そして、本時では、児童はカードを通して4人に出会い、背景を探りましたが、これからたくさんの人に出会い、互いの違いに目を向けて楽しく、興味をもって関わり合ってほしいと思いました。

※自分オープンカードは本研修参加教員によって作成されたワークショップで、子どもたちに自分の好きなものや意外な一面を書いてもらい、互いに自己開示するワークショップです(校種や子どもたちの様子によって、書いてもらう内容は変えています)