【教師国内研修】実践授業レポート from 横浜医療専門学校 柔道整復師科(専任教員:森 倫範)

2022年3月6日

JICA横浜では教員の方々を対象に教師国内研修※1を実施しています。今年度は7名の方々にご参加頂きました。実践授業とは、このJICA教師国内研修に参加した先生方に、研修で得た経験を活用した授業・ワークショップを作っていただき、学校現場で実践いただくものです。
森先生のレポートです。

2021年12月21日に、柔道整復師科 1 年生の「臨床柔整学Ⅰ:医療面接」の授業の一環として「多文化共生の概念を元に共感的態度について考える」ことを目的とした実践授業を行いました。

【今回の授業までの取り組み】

 実践授業の前週に、SDGsと多文化共生の関係性について説明しました。具体的には「対立する文化」、「異文化交流」と「多文化共生」の違いについて、模式図を用いて解説しました。授業の最後に翌週に行うワークのため、Classroom等への登録などの準備を行いました。

【今回の授業の流れ】

 90分の授業の中で、2021年度JICA教師国内研修作成教材「たぶん・か」※2を用いて、「多文化共生」をテーマとした2つのワークを行いました。医療系の学校という特性を活かし、医療関係者と患者の両側面を体感できるよう構成して進めました。1つめのワークでは「会話とジェスチャーの重要性」をテーマに、2つめのワークでは「見えない内面を予想しつつ、複数の希望の合意点を探す」をテーマに実施しました。

【ワーク1で期待した内容】

【画像】 「会話とジェスチャーの重要性」を実感してもらうため、ドブルカード※3を用いて勝ち負けがつく競争をするという状況を設定しました。1回目は、勝負がついた時点で、その時の感情を喜怒哀楽の4種から選び、ジェスチャー等を用いてできる限り他者に伝わるよう表現し、対戦相手と一緒に写真を撮影。写真を他者に見せて、自分の感情が他者に伝わるかを確認しました。2回目は、会話もジェスチャーも禁止し表情だけで感情を表現することとし、「会話とジェスチャーの重要性」について感じたことを、Forms を用いて回収し、全員で共有しました。

【ワーク2で期待した内容】

 「見えない内面を予想しつつ、複数の希望の合意点を探す」ために、ピクトカード※4(ドブルカードの裏)と「内面カード」を用いました。相手に与えられる情報はピクトカードで表された外観のみ。「内面カード」には相手に見せることができない自分の持っている特性を、言ってはいけない「NGワード(赤文字)」として加えた条件づけカードを使い、1グループ6名ずつで、「全員が安心して楽しく遊びに行ける場所を探す」というワークを行いました。
 演じる人は、自分のみが読める内面カードの内容を自分以外の人にわかるように演じる必要があるので、他者へどうやって自分の特性を伝えるか工夫をこらす必要があります。試行錯誤しながら、メンバー同士で会話やジェスチャーから特性を読み取り、その内容から6名で合意した行き先を検討しました。ワーク終了後、ワーク2を通じて感じたことを、ワーク1同様に回収し全員で共有しました。

【実践授業を通じて】

 終了後のアンケートでは、「多文化共生を実践するために何が大切だと思いましたか?」という問いに対して、「お互いの状況の把握や価値観の違いを理解することが必要」、「相手のことをよく観察して、理解する努力が必要」という回答がありました。多文化共生の活用領域を「国籍」や「性別」という条件に限らず、「他者理解」のための全ての分野で用いることができる内容として理解してもらえたと感じました。
 今回の授業を通じて、実際の社会で自分以外の人がどう考えているのか?について積極的に興味を持ち、理解しようとする努力ができ、自分自身のことも大切であると感じることができる学生に育つことへ役立ててもらえることを願っています。自分自身も、「多文化共生」の概念を用いて「他者を自分と同じように大切にできる教育」を継続していきたいと思います。

※1 コロナ禍を踏まえJICA教師海外研修の代替として2020年度より実施。通年のプログラムで研修を通してワークショップ教材を作成頂いております。
※2 先生方に作成頂いた教材「たぶん、か」は後日HPに掲載予定
※3 カード同士を見比べて同じ絵柄を見つけるカードゲーム
※4 ピクトグラムを用いたカード