イベント情報

REDD+ プラットフォーム『第1回 ナレッジセミナー』
2015年6月25日(木)15:00〜17:00 JICA市ヶ谷ビル国際会議場

JCMガイドラインとボン会合に高い関心


JCMガイドラインは、今、
具体的な協議が進んでいます。

『森から世界を変える REDD+ プラットフォーム』が主催する、『第1回 ナレッジセミナー』が、6月25日(木)、東京都新宿区のJICA市ヶ谷ビル国際会議場で開催されました。

今年(2015年)5月には、インドネシアとの合同委員会で「REDD+のためのJCM提案方法論開発ガイドライン(案)」の協議が始まりました。また、6月1日〜11日にかけて、ボン(ドイツ)で国連の気候変動枠組条約の作業部会が開催され、REDD+の実施方法のガイダンスの議題で残されていた3つの課題に合意し、2020年以降の枠組みの中でREDD+をどのように位置づけるかについての議論もありました。二国間クレジット制度(JCM)は、今まさに運用開始に向けて具体的な協議が進んでいるところであり、かつ12月のCOP21会合に向けてREDD+プロジェクト実施に関心をもつ民間企業や団体の関係者の関心も高く、会場は満員の参加者で埋まりました。

ガイドラインはより運用しやすいものに

セミナーは大きく二部構成で実施。まず前半は、森林総合研究所 REDD研究開発センターの松本光朗センター長が『REDD+ JCM ガイドラインの解説』というテーマで講演を行いました。

REDD+にとって、JCMは排出権クレジットなどのベネフィットを生み出すために重要なチャンスです。現在、2010年に開催されたCOP16における『カンクン合意』(注1)等の国際合意に沿って、JCMに関する文書を署名した国との合同委員会と詳細の検討が進められているところであり、ガイドライン策定の日本におけるキーパーソンでもある松本氏の説明に、満員の来場者が真剣に聞き入る様子が印象的でした。

松本氏の説明によると、JCMガイドライン策定は、科学的な厳密さを追求するのではなく、プロジェクトレベルで適切に導入しやすくすることに主眼を置いて、科学性を保ちながら、よりオペレーショナルなガイドラインとなるような方向で検討が進められているということです。

さらに、温室効果ガス排出削減を測定するためのリファレンスレベル(参照値)の策定方法や、予期せぬ森林火災の発生などを考慮したディスカウント(あらかじめ獲得クレジットから割り引く)の割合などについて、詳細な解説が行われました。

この日用意された資料は、今年5月、松本氏自らがインドネシアで開催された第4回合同委員会に出席し、ガイドラインについての討議を行った時とほぼ同様の内容ということでした。リファレンスレベルの定義や、自然災害などの取り扱いの問題は、インドネシアなど森林保全の対象となる国にとっても重要な論点であり、今後、さらに協議が進められていきます。

COP21に向けて、世界的な議論が進行中


林野庁、井上泰子氏の講演風景。

セミナー後半は、林野庁計画課海外林業協力室の井上泰子氏による『気候変動枠組条約・ボン会合 第42回科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA42)等におけるREDD+関連の議論』についての講演が行われました。

SBSTA42は、COP21に向けて、REDD+を実施していく上で残されていた方法論的な課題について検討し、合意を形成した重要な会合となりました。井上氏からは、2020年以降の全ての国が参加する法的枠組みの発効と実施に向けて、今までの世界の議論の経緯や、SBSTA42での議論のポイントが解説されました。

REDD+に関して残されていた課題とは「セーフガード(注2)概要情報のガイダンス」「非市場ベースのアプローチ」「非炭素便益」の3点です。今回のSBSTA42での決議がCOP21で採択されることにより、各国におけるREDD+実施に向けた具体的な取り組みが更に進んでいくことが期待されます。

非市場ベースのアプローチや非炭素便益については、ようやく世界的な合意が成立したばかりの目新しい概念だったこともあり、挙手制の質疑応答にも続々と手が挙がり、会場に集まった民間企業などの担当者の関心の高さが感じられました。

一方、SBSTAとは別に、2020年以降の気候変動対策枠組におけるREDD+の位置づけや、市場メカニズムとして取り扱う(REDD+由来のクレジットの国際移転を認める)べきかどうか等については、年末のCOP21での合意に向けて議論が続けられています。

REDD+ プラットフォームでは、今後もこうしたセミナーを開催していく予定です。次の機会にも、より多く、幅広い民間企業や団体関係者のみなさまの参加をお待ちしています。





(注1)カンクン合意
2010年12月にメキシコのカンクンで開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第16回締約国会議(COP16)で採択された合意事項。2013年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みとともに、REDD+実施に関わる基本的なアプローチが採択されました。

(注2)セーフガード
REDD+の準備や実施において負の影響が起きないよう、森林に居住する先住民・地域住民の知識や権利を尊重し、天然林や生物多様性の保全が促進されるようにすること。




▲ TOP