OVのレシピで食生活の充実を図る
青年海外協力隊大阪府OB・OG会

   任地で元気に活動するための源になるものといえば食だ。毎日自炊するという隊員もいるだろう。2020年、青年海外協力隊大阪府OB・OG会は、協力隊派遣国の〝現地メシ〟を一冊にまとめた『くらして初めて知った（ど）ローカルごはん−日本で作れる世界のレシピとお話−』を出版した。現役隊員が派遣先で料理する時も、協力隊OVが派遣先の思い出の味を再現する時も役立つレシピ集で、アマゾンの電子本と受注印刷で紙版も販売している（利益は国連関連団体に寄付している）。

   制作の経緯について、発案者で、現在同会の副会長を務める佐藤省吾さんはこう語る。「コロナ禍で一時帰国した隊員に対して、青年海外協力隊大阪府OB・OG会としてできることは何だろうと〝考える会〟を設けたんです。任期は満了できなかったけれど、隊員としての活動を何か形に残せたらいいんじゃない かと話しているときに、この本のアイデアが出てきました。同じ時に、たまたま『世界の料理本』という本を見つけたのもきっかけの一つです。というのも私の赴任先のボツワナの料理も載っていましたが、私はそれを食べたことがなかったんです。もしかしたら隊員がレシピを書いたら、もっと身近でリアルな本ができるかもしれないと。その話をしていたのが、ボツワナOVで現役のデザイナーの伊藤洋美さんで、レイアウトすれば絶対にいいものができるだろう、やってみようか、という感じで始まりました」。

   制作には現役隊員40名、OV隊員26名が参加し、66カ国の「リアル現地メシ」の情報が集まった。完成したレシピ集は、イベントなどでレシピの使用を許可したり、料理画像をフリー素材として利用可にしたこともあり、思わぬ広がりを見せた。青年海外協力隊事務局でも、動画クリエイターとコラボした料理動画を制作した（ ※ 編集部注　JICA海外協力隊公式サイトでの公開は終了しています）。

   レシピ集の発刊後、21年6月には「コロナ禍で活動する隊員の今」というテーマで、現地隊員に話してもらうオンラインセミナーも開催した。

「隊員がぼちぼち活動を再開できたタイミングでしたので、ルワンダ、ザンビア、ジンバブエの現地隊員に現地から参加してもらい、活動の状況を伝えてもらいました。当時はリアルな声が入りにくい状況ということもあり、現役隊員30名を含む約160名が参加し、大盛況でした」と話すのは、現在会長を務める相川香菜さんだ。

   こうしたオンラインでのコミュニケーションは増えているが、大阪府OB・OG会では現役隊員に大阪府の小学生から手紙を送ることが慣習的に行われてきた。「コロナ禍で休止しているものの、私がガーナで活動している時にも、クリスマスにカードが届き、温かい気持ちになりました」。デジタル時代だからこそ、人のぬくもりを感じる手紙は続けたいと相川さん。そしてこれからも現役隊員との関わりは増やしていきたいという。

   他にも、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の大学院生からの相談を受け、大阪府OB・OG会の主催で、同大学の院生やボツワナ人に参加してもらい、ツワナ語講座をオンラインで開いている。当初は大学の研究者・院生の参加が中心であったが、これに現役隊員が参加するようになり、コロナ禍前は隊員連絡所などで先輩隊員たちから教わった、生活や活動のちょっとしたコツや将来の進路相談などにも応えているそうだ。「会としては、なるべく現役隊員や帰国隊員のサポートに回って応援したい気持ちが強いですね。そのためには、こちらから発案するだけでなく、要望ベースで一緒に活動していきたいので、ぜひ現役隊員の方もお声かけください」（佐藤さん）。

Text = 池田純子   写真提供＝相川香菜さん、佐藤省吾さん