先輩隊員のシューカツ記

帰国後、内定までの就職活動の方法を聞きました。

【今月の先輩の就職先】株式会社NTCテクノロジー

花田健悟さん
花田健悟さん
ガボン/柔道/2017年度2次隊、2019年度9次隊・鹿児島県出身

就職先:株式会社NTCテクノロジー
事業概要:ITシステムの運用マネジメントとネットワークの設計・構築・運用・維持管理および、各種サーバーの監視・運用・保守。

花田健悟さんの略歴

  • ▶1994年           鹿児島県生まれ
  • ▶2017年3月      大学卒業
  • ▶2017年10月    柔道隊員としてガボンに赴任
  • ▶2019年10月    任期終了
  • ▶2019年12月     短期派遣でガボンに再赴任
  • ▶2020年3月      コロナ禍で一斉帰国
  • ▶2021年4月      JICA国内協力員となる
  • ▶2022年3月      JICA国内協力員の契約終了
  • ▶2022年11月    株式会社NTCテクノロジー入社

技術を身につけて社会に提供したい
進路相談で見いだした自分の興味

   小学生の頃から柔道に熱中し、大学卒業後も実業団で柔道を続ける予定だった花田健悟さん。ところが大学4年の秋に、先方の手違いで実業団入りがなくなった。協力隊に柔道の案件があることを知ったのは、その時だ。

「建設業界でODAの仕事にも携わっていた父は協力隊員とも関わりがあったようで、柔道を続けたいなら協力隊に柔道の職種もあると教えてくれました。いずれは指導者になりたいと思っていたので、迷わず応募しました」

   大学卒業から約半年後、花田さんは柔道隊員としてガボンに赴任し、ナショナルチームの指導を中心に活動した。その後の短期派遣も合わせて東京2020オリンピック・パラリンピックの時期まで指導を続ける予定だったが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大により任期終了を待たずに帰国。2021年3月に再赴任の話が持ち上がったが、実際に現地入りできる時期は不透明という問題があり、日本で社会人経験を積みたいとも感じていたことから、JICAの国内協力員として国内で働くことを選んだ。

   この頃、将来のキャリアについて考え始めた花田さん。当初は、経験を生かして国際協力か柔道に関わる仕事を意識していたが、JICAの進路相談カウンセラーに相談する中で、気持ちが変わっていった。「カウンセラーからは『まずは視野を広げよう』と言われました。業種や分野を問わず、やりたいことや興味があることを挙げていき、自分に合った仕事を考えるという作業をカウンセラーと一緒に行いました」。

   そこで挙がったのは、IT、建設、整体師など、業種の異なる仕事だった。いずれも懸け離れた仕事に思えるが、花田さんにとっては共通点があった。

「どれも技術職です。技術を身につけて、社会に提供することに興味があるのだと、自分自身で気がつきました」

   元々プログラミングにも興味を持っていたことから、最終的にIT業界を選んだ花田さん。「将来は地方や海外で働きたいとも思いますが、今はそのために技術を身につけたいと考えています」。



1.協力隊時代   2017年10月~2019年10月、2019年12月~2020年3月

巡回先の一つで子どもたちと準備運動をする花田さん

巡回先の一つで子どもたちと準備運動をする花田さん




ガボン柔道柔術連盟に所属し、首都リーブルビルの七つの道場・学校を巡回指導したほか、東京2020オリンピック・パラリンピックが近いこともあって特にナショナルチームの強化を求められました。ガボンの柔道のレベルは、アフリカでは中の上くらいで、国際大会ではなかなか上位入賞ができずにいました。しかし、私が指導していた選手がアフリカ大会で3位に入賞し、自分たちもやればできると彼らに示せたことは、私にとって大きな成果でした。2年間の任期終了後すぐ、引き続きの指導のため短期派遣で再赴任しましたが、コロナ禍で2020年3月に一斉帰国となりました。

2. JICA 国内協力員   2021年4月~2022年3月

帰国してからは、地元の市役所で事務のアルバイトとして働いていましたが、一斉帰国した隊員を対象とした1年契約の国内協力員の求人があることを知って応募し、1年間、青年海外協力隊事務局で、協力隊員をサポートする業務に当たりました。

3.就職活動   2021年10月~

JICAの進路相談カウンセラーに相談をしつつ、転職フェスに参加したり、転職エージェントに登録したりと就職活動を開始。エージェントから紹介を受けたり、フェスで見つけたりした企業約30社にエントリーしました。就職先をIT企業と決めてからは、ITに関する基礎的な知識を証明するITパスポート試験を受けたり、ハローワークが提供する職業訓練でプログラミングを学んだりもしました。

4.書類提出   2022年9月上旬

提出書類 ▶履歴書、エントリーシート

履歴書を書く時には、進路相談カウンセラーに何度も相談しました。協力隊での指導経験については、いくつの道場で何人に指導したのかなど具体的な数字を出して説明する、自己PRは謙遜しすぎない、といったアドバイスは非常に参考になりました。協力隊関連の独特な用語を一般的な言葉に直すのも、普通の転職エージェントでは難しい部分だろうと思います。

5.面接   9月中旬~下旬

面接は2回あり、1回目は採用担当の部署の担当者、2回目は役員が相手でした。いずれも、志望動機や会社でやりたいこと、勉強していることなどを聞かれました。2回目の面接の1時間後に転職エージェントを通じて採用決定の連絡があり、エージェントからは、真面目な人柄とITの勉強をしていたことが評価されたと聞きました。

2022年11月1日 入社

現在の仕事

就職先のNTCグループにて

就職先のNTCグループにて

私の担当はシステムの保守・運用です。システムの中にウイルスが紛れ込んだり不正にアクセスされたりしないように、また、システムの更新などが正常に行われるように、シフトを組んで24時間体制で監視しています。夜勤が多く、まだ体が慣れていない状況ですが、健康維持のために柔道も続けています。趣味程度ではありますが、年に1~2回は大会にも出場したいと考えています。

後輩へメッセージ

進路を考える時は周りに相談することが大事だと思います。私の場合、国際協力か柔道の分野を漠然と考えていたのですが、進路相談カウンセラーと話す中で、自分がそれまで見てきた範囲内でしか選択肢を見つけられていないことに気づくことができました。自分以外の視点を持つことで視野が広がり、自分がどう見られているかわかりますし、新たな気づきもあります。私自身、それにより選択肢が増え、就職活動の方針も大きく変わったので、進路に迷っている人は、家族や友人、専門のカウンセラーに思いや気持ちを話してみることをお薦めします。

Text=油科真弓 写真提供=花田健悟さん

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