JICA Old Volunteers' Reports

大阪を拠点にPNG隊員グループが発足
〝ワントク〟のつながりを広げたい

近江竜也さん
近江竜也さん
<パプアニューギニア/青少年活動/2014(平成26)年度3次隊・
大阪府出身>



   2023年7月、パプアニューギニア(以下、PNG)OVの有志が主催し、PNGに関するテーマに特化したオンラインの国際協力理解セミナーを行った。セミナーは青年海外協力隊大阪府OB・OG会(以下、大阪府OB・OG会)との共催で、20年11月の初開催から数えて3回目となる。今回のセミナーに際し、有志の集まりはグループとしての形をより明確にするため〝ワントク パラダイスの会(仮)〟の名称を掲げた。

「『ワントク』とは英語のワン・トーク(一つの言葉)に由来するピジン語で、同じ言葉や文化を共有する集団・仲間を意味します。OVや派遣中の隊員、これから協力隊に応募してPNGへ行く人も含めて、PNGに関わる人たちをつなげていきたいとの思いを込めました」と話すのは、元PNG隊員で、大阪府OB・OG会に所属する近江竜也さんだ。

   元々、有志のセミナー活動は、コロナ禍で一斉帰国して待機中のPNG隊員に活動の場を設けようと、近江さんらが支援を検討したことから始まった。その当時、大阪府OB・OG会メンバーの高森 靖さん<スリランカ/環境教育/2009(平成21)年度4次隊>が19年から企画調査員(ボランティア事業)としてPNG事務所に赴任しているなど、大阪府OB・OG会とPNGのつながりも多かったことから、大阪府OB・OG会の下でPNGセミナーを行う運びとなった。

2022年4月の協力隊まつりの関西会場で大阪府OB・OG会のブースを訪ねた人(左)が、協力隊に合格してPNGへ派遣されることに。「OV会を通じて縦のつながりができ、今後のセミナーにも協力してもらえるといい」と大阪府OB・OG会メンバーの高森さん(右)

2022年4月の協力隊まつりの関西会場で大阪府OB・OG会のブースを訪ねた人(左)が、協力隊に合格してPNGへ派遣されることに。「OV会を通じて縦のつながりができ、今後のセミナーにも協力してもらえるといい」と大阪府OB・OG会メンバーの高森さん(右)

   第1回ではOVに加え、一斉帰国して待機中の感染症・エイズ対策隊員が登壇してPNGでの活動について発表。以降、第2回では観光をテーマにPNGの旅行会社に勤務するOVが登壇したり、今回の第3回では任期終了後もPNGと交流し続けているOV3人が自身の経験談を紹介したりと、毎回テーマを工夫し、協力隊関係者に限らず、PNGに関心を持つ人に広く門戸を開いて情報を発信してきた。

「PNGの場合、まだまだ日本からは現地情報を得にくい現状があります。しかし、観光地や自然環境、伝統文化など魅力の多い国なので、隊員が持つ情報を一層発信できればいいですね」

   ワントク パラダイスの会(仮)は大阪府OB・OG会の分科会という位置づけで活動していることもあり、関西という地域にちなんだ取り組みにも目線が向いている。

「第3回セミナーの際に実施した懇親会では、25年の大阪・関西万博に向け、対面式で何か活動ができるのではないかとの声も出ました。徐々に人を巻き込みつつ、各自ができることを緩くつなげて取り組んでいければと思います」

▼第3回PNGセミナーに登壇したPNGのOV

大野政義さん
<体育/1984(昭和59)年度1次隊、SV/体育/1987(昭和62)年度0次隊>
隊員経験後、国連機関やJICAでPNGなど各国での業務に従事し、現在はアジア開発銀行PNG事務所に勤務。セミナーでは自身のキャリアについて話した。

笹瀬正樹さん
<小学校教育/2014(平成26)年度3次隊>
帰国後に教育系NGOの業務でタンザニアへ赴任。独自に一般社団法人Wakwak for Everyoneを設立して異文化理解や教育などの活動にも努め、セミナーでは2023年6月から7月にかけて再訪したPNGでの活動を報告した。

服部晃平さん
(理科教育/2017年度3次隊)
帰国後、〝パプア服部〟のペンネームでブログ・コミックエッセイの執筆を始め、現在は漫画家として活動中。セミナーの全体司会を務めたほか、自らの体験を交えてPNGという国の紹介も行った。

Text=飯渕一樹(本誌)   写真提供=近江竜也さん

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