[特集]派遣国と隊員をつなげる橋渡し役
ナショナルスタッフだから見えること

JICAマダガスカル事務所 ラスアナリヴ・デボラさん
JICAマダガスカル事務所
ラスアナリヴ・デボラさん

Welcome to Madagascar

地元の暑さ、寒さ対策は?
暑さ対策としては、現地ではアイスを食べたり、ココナッツウォーターを飲んだりしています。ただ、マダガスカルでも首都のある中央高地は寒くなることがあるので、そんな時には温かいコーヒーを飲むか、暖炉の近くにいるのがいいですね。

お薦めストレス解消法
街から離れて最寄りの公園(首都アンタナナリボならチンバザザ動物園など)などの自然豊かな場所を訪れるのがお薦めです。旅行であれば、バオバブの並木があるムルンダバや、レミュール(キツネザル)と触れ合える国立公園、イルカ・クジラがいるサント・マリー島への訪問がお薦めです。


―これまでの経歴は?

   私は2018年にボランティア事業のプログラムオフィサーとしてJICAマダガスカル事務所に入り、今に至ります。

―現在の担当業務は?

   業務内容は、マダガスカルに派遣された隊員の皆さんの活動がスムーズに進むよう後方支援すること。住まいの確保をはじめとして、地域コミュニティや受け入れ団体との連携がうまくいくように、隊員の皆さん自身が着任する前から、さまざまな調整を行っています。さらに、新規の隊員要請があった時は橋渡し役として配属先に連絡を取り、制度の説明や受け入れにあたってのアドバイスもします。

   JICAのボランティア事業は、地域コミュニティや配属先の双方に得るものがあり、隊員自身も活動の中で成長でき、Win‐Winの関係にあることが素晴らしいと感じています。私自身も皆さんの活動を通じて、特に教育分野に関していろいろ学ばせてもらっています。

―隊員へのアドバイス

   これからマダガスカルにやって来る隊員の皆さんに共通して伝えたいことは、この国は日本とは全く違った文化を持っているということです。そのために多かれ少なかれカルチャーショックを感じることもあると思いますが、それは根本的に価値観が相いれないのではなく、生活の習慣や様式の差から来るものでしょう。ですから、活動を続けていくに際しては、マダガスカルの日常生活を知ることがとても大切だと思います。

マダガスカル事務所で働く仲間たち

マダガスカル事務所で働く仲間たち

   マダガスカルの隊員の皆さんは、それぞれの性格や興味によって異なるさまざまな相談を私に持ちかけてくれます。皆さんから信頼してもらい、この国での活動を快適で生産的なものにしてもらうことが私の目標なので、皆さんには活動状況や任地での生活の様子をよく聞きます。ただし、問題があった場合は、まずは配属先や大家などの近所の人に相談するように促し、隊員自身で解決できるよう心がけています。そうすることで、周りの方々との関係が構築され、有意義な活動につながると考えるからです。時に孤独や悲しみを抱えてしまうことがあると思いますが、一人で悩まず、ぜひ周囲に相談できる現地の友人をつくってほしいと思います。

   マダガスカル人と接する上で一番大事なのは、ポジティブな意識です。そして、この国では「みんなで協力して助け合う」ということが一般的な考え方なので、前向きな気持ちで人々と接していれば、きっと周りの皆が協力してくれます。

JICAネパール事務所 ラガブ・カヤストさん
JICAネパール事務所
ラガブ・カヤストさん

Welcome to Nepal

ネパールの好きなところ
ヒンドゥー教のお寺がたくさんあって、週末に家族でよく訪れます。ヒンドゥー教徒でない観光客が入れる寺院もあり、気持ちが落ち着いてゆったりした気分になれます。

お薦めのお店
首都カトマンズには蕎麦や寿司の店があり、カツ丼や定食もあって、おいしいですよ。日本の味が懐かしくなったらぜひ!

お薦めストレス解消法
一人で考え込まず、とにかく誰かに話してアドバイスを求めることが大切。私にもぜひ相談してください。これまでネパールに派遣された隊員の中でネパールの音楽や踊りを習う隊員がいましたが、音楽やダンスでストレスを和らげるのもオススメです。


―これまでの経歴は?

   私は2001年から日本へ留学して大学および大学院で学び、その後、日本の開発コンサルタント企業でインターンとして政府開発援助(ODA)プロジェクトに携わりました。ネパールの首都カトマンズからインドとの国境地帯に幹線道路を通すJICAによる「シンズリ道路建設計画」ではネパールで現地調査を行ってレポートを提出するなどの仕事をしていました。そこで「地域の人と話したり情報収集したりする仕事は面白い!」と感じていたところ、JICAネパール事務所がネパール人のボランティア事業担当者を募集していると知って14年に入職。今年で10年がたちます。

―現在の担当業務は?

活動中の隊員の任地を視察する様子

活動中の隊員の任地を視察する様子

   担当しているのはさまざまな機関からの協力隊員の派遣要請の調整、隊員の語学研修、宿泊先の手配までさまざまで、多くは日本人のVCとの共同作業です。私はネパール国内の配属先などの要請を見ながら英語の要請書を作成したり、VCが本部から受け取った日本語の資料を英語で作成したりと、協力しながら進めています。

   活動中の隊員とも定期的に連絡を取り、困り事などがあればサポートしますが、やはり大切にしているのは皆さんとのコミュニケーションです。言語はもちろん、文化や習慣を教えることで、活動がスムーズに進むよう支えています。また、住居の安全対策も重要な業務で、複数のナショナルスタッフが力を合わせ、少しでも安心・安全な住居を確保できるよう努めています。

―ボランティア事業に思うことは?

   ネパールには世界各国からボランティアが派遣されているのですが、公用ビザで活動する協力隊は独特だと思います。一定の安全管理の下で、農業やコミュニティ開発、教育、保健分野の隊員が多く派遣されてきましたが、最近では剣道のベテラン指導者が武道の普及に貢献されたりもしています。JICA以外の組織ではスポーツ分野のボランティア活動はあまりなく、他の国が取り組んでいない日本ならではの支援分野の一つといえるでしょう。

   隊員の皆さんは大学を出て社会人経験を積んだ後、新しいことにチャレンジしようとして参加される人が多い印象ですね。翻ってネパールでは、大卒であっても就職先が少なく、卒業後すぐに経験を積むことができない方たちもいるので、基本的な社会システムをもっと向上させなければいけないと痛感します。


Text=新海美保 取材協力=岡部繁勝 Photo(NS近影)=飯渕一樹(本誌) 写真提供=各在外事務所

知られざるストーリー