[特集]派遣国と隊員をつなげる橋渡し役
ナショナルスタッフだから見えること

JICAガーナ事務所 フィデリス・トゥーリさん
JICAガーナ事務所
フィデリス・トゥーリさん

Welcome to Ghana

地元の暑さ、寒さ対策は?
気候の変化は、気持ちをオープンにして何でも受け入れられるよう心の準備をしていれば、適応できるというのが私の持論です。同様にガーナの人々に対してもオープンな心で接すれば、現地文化に適応できるとガーナ隊員にアドバイスしています。

お薦めストレス解消法
やはり食べることはストレスを解消することにつながるので、ガーナにたくさんある地元のグルメを楽しむとよいと思います。代表的なのは「フフ」という食べ物で、キャッサバと調理用バナナをゆでて日本のお餅のようについて作る主食です。トマトスープやピーナッツスープと一緒に食べる料理ですが、多くの隊員の好物になっています。

現地の日本食事情
ガーナ事務所の近くにも日本食レストランが2軒ありますが、私は焼きそばが好きですね。


―これまでの経歴は?

   私の母はJICAの健康管理プロジェクトで助産師として働いていて、私も昔からJICAのことはよく知っていました。大学生の時にガーナ国内のNGOで活動する中で3人の協力隊員と知り合って日本文化などについて教えてもらい、子どもの頃からの憧れだったJICAに対する気持ちがもっと大きく膨れ上がりました。その後、採用試験を受けるチャンスが来て、JICA事務所で働いています。

―現在の担当業務は?

   ボランティア事業のプログラムオフィサーをしています。主な仕事内容は、協力隊員派遣の要請を集め、VCが日本語で要望調査票を作成するのを支援します。ガーナで活動する隊員の皆さんが到着した後も、国についての理解を深めるためのオリエンテーションを実施したり、現地語学訓練のための連絡調整などさまざまなサポート業務を担当しています。また、派遣要請のあった機関や学校などの担当者やカウンターパートと、隊員に対する研修も行っていて、研修を通じて、協力隊員の派遣や活動に関する条件、日本人とガーナ人が協働する際のコツなどを理解してもらっています。

―隊員へのアドバイス

隊員とカウンターパートを交えたワークショップを実施

隊員とカウンターパートを交えたワークショップを実施

   どの土地に行くか、どんな組織に行くかによって違いはありますが、ガーナ各地には独自の生活文化があるので、活動中の隊員の皆さんにはその中で生活する方法をアドバイスしています。

   もう一つ、ボランティア事業の担当として感じている大切なことは、間違いを恐れずにコミュニケーションを取ることです。着任したばかりの頃は、英語でも現地語でも思うようにコミュニケーションを取れないことがあるかもしれません。すると怖くなり、余計に話しづらくなる方もいます。そういう隊員にアドバイスしているのは「間違いを恐れず自由に話をしましょう」ということです。一言、現地の言葉で挨拶をするだけでも現地の人たちは喜んで受け入れてくれるはずですから。

―隊員に思うことは?

   私が考える協力隊員の強みの一つは、赴任した土地の生活や言葉を吸収する適応能力です。ガーナには公用語の英語以外に、チュイ語やガ語、エウェ語など約70もの現地語がありますが、多くの隊員が、赴任からさほどたたないうちにまるで現地で育ったかのように言葉を操っていて、「よくこんなに早く習得し、流ちょうに話せるな」と驚かされます。現地の言葉で話ができるというのはその土地の人々に受け入れられる第一歩なので、これは重要なスキルです。

JICAエルサルバドル事務所 ジェシー・サラビアさん
JICAエルサルバドル事務所
ジェシー・サラビアさん

Welcome to El Salvador

お薦めエルサルバドル料理
エルサルバドルの名物料理といえば、「ププサ」。とうもろこし粉の生地の中に、豆のペーストや肉、チーズなどを包んで平たく伸ばして鉄板で焼いた料理で、1ドルほどで手軽に食べられますよ。

お薦めストレス解消法
海の周りを歩いたり、食べたいものを食べたりするのがいいですよね。ぜひ、好きなことをしながらリラックスできる時間をつくってください。

現地の日本食事情
エルサルバドルには日本食レストランがあります。ただ、私は和食の中でツナおにぎりが好きなのですが、エルサルバドルの日本食レストランのメニューには日本のようにおいしいおにぎりがなくて残念です。


―これまでの経歴は?

   私は大学卒業後、エルサルバドルのNGOで子ども支援や福祉事業に携わりました。2011年、新聞でJICAエルサルバドル事務所の求人を見て、母国の発展に携わることができることと安定して働ける環境に魅力を感じ、応募しました。

―現在の担当業務は?

   ボランティア事業担当のスタッフとして、隊員の派遣を継続的に運営するため、配属先やホストファミリーとの関係を大切にし、新しい受け入れ機関の開拓や広報活動にも力を入れています。コロナ禍で中断していたエルサルバドルへの協力隊派遣は22年4月に再開し、地域開発や保健、教育、防災、スポーツなどの分野で現在19人の隊員が活動しています。配属先での活動以外にも日本文化イベントなどを通じて両国の親善に尽くしています。

   私が日々の仕事の中で特に意識しているのは、隊員の皆さんと頻繁に連絡を取ること。異国での暮らしや健康管理、そして配属先での活動がうまくいっているか確認しながら、少しでも快適に過ごせるようサポートしています。

―隊員に思うことは?

JICAのイベントブースにて隊員と

JICAのイベントブースにて隊員と

   エルサルバドル事務所で働き始めてからかれこれ12年がたちますが、私はこの仕事が大好きです。歴代のエルサルバドル隊員の皆さんとの出会いは、いずれもとても印象深いものですが、中でも短期派遣で地方に赴任した音楽隊員のことはよく覚えています。学校で音楽を教えていた隊員で、短期派遣は語学研修がないという事情もあって配属先やコミュニティの人たちとのコミュニケーションには苦労していましたが、私は彼女に「エルサルバドル人はどんな時も笑顔を絶やさない人々なので、恐れずに受け入れる心を持って接していれば気持ちは伝わる」と伝えていました。やがて、彼女は学校の生徒や地域住民からとても愛される隊員となりました。それは彼女が活動や人々に対して、深い愛を持って接していたからでしょう。

   JICA事務所に入職する前、他国から派遣されているボランティアと接したことがありますが、彼らの多くは英語を話します。他方、協力隊員はエルサルバドルの人々が日常的に使うスペイン語で話そうと努力をしています。拙い語彙力でも一生懸命会話しようと努力し、すごい速さで適応していく姿に感銘を受けています。これからも隊員の皆さんを支える仕事を続けていきたいと思っています。


Text=新海美保 取材協力=岡部繁勝 Photo(NS近影)=飯渕一樹(本誌) 写真提供=各在外事務所

知られざるストーリー