[特集]派遣国と隊員をつなげる橋渡し役
ナショナルスタッフだから見えること

JICAタイ事務所 ジャールック・ユクントンさん
JICAタイ事務所
ジャールック・ユクントンさん

Welcome to Thailand

暑さ寒さ対策は?
タイはなんといっても暑い国です。室内ならエアコンや扇風機をつけ、野外ならば直射日光が強いので肌の露出をできるだけ避けて十分な水分補給を忘れずに。ですが、もちろん水道水は飲まないでくださいね!

ストレス解消法
私は昔から走ることが趣味で、一番のストレス解消法でもあります。今回の来日中、東京でも皇居の周りを走りました。フルマラソンの大会では13回完走しています。

タイの料理事情
タイ料理といえば、トムヤムクンやパッタイが有名ですが、他にもタイ北部にはおいしいソーセージ料理があったり、東北部のイサーン地方の料理はとても辛いことで知られていたりと、バラエティに富んでいます。


―これまでの経歴は?

   私は前は民間の銀行で働いていて、友人からJICAタイ事務所での仕事について耳にした時、大学で日本語を専攻していたこともあって興味を持ちました。気づけばもう9年目。9という数字はタイでは縁起がいいので、特に感慨深く思っています。

―現在の担当業務は?

   ボランティア事業担当としての私の仕事は、隊員の安全管理や住居の確保、予算管理、配属先との連絡・調整など多岐にわたります。特に赴任する隊員のアパート探しでは、長期で滞在する隊員が安全な環境で暮らせるようにセキュリティ面を重視していて、できれば警備員がいる住居を探し、地域の条件によっては下宿やホームステイなど、あらゆる可能性を検討しています。

   発展の進むタイで、JICAタイ事務所は都市と地方双方の産業人材の育成や社会的弱者のための支援に力を入れています。協力隊員もこうした取り組みの担い手として派遣され、人々の能力向上や両国のつなぎ役として重要な存在となっています。

―隊員へのアドバイス

野球指導を行う隊員の配属先への視察

野球指導を行う隊員の配属先への視察

   タイには、タイ外務省国際協力機構のボランティア派遣プログラム(FFT)があり、2003年から周辺国へタイ人ボランティアを派遣しています。数年前、タイ外務省の担当者がJICA事務所を訪れ、熱心にボランティア事業やその手続きなどについてのアドバイスを求めてきたことがありました。現在FFTは日本にも派遣されており、JICAもこの派遣に協力しています。日本とタイ、お互い学び合いのステージが始まっています。これまで長い間日本からの支援を受けてきたことを、タイの人々はよく知っています。両国には深い親交の歴史があり、いわばタイ人は日本の一番の「ファン」ですから、皆さんがタイ社会に対してオープンな気持ちで接すれば、多くの人は大歓迎してくれると思います。

   隊員の皆さんから活動について時々受ける相談は、「誤解」を解くことで解決できる問題がほとんどです。目指す目標にズレがないか、共に働く人と密にコミュニケーションを取りながら活動しましょう。

   タイ人は自国を「ほほ笑みの国」と呼びます。もちろんいつも笑顔でいるわけではないのですが、この国にはほほ笑みがあふれています。隊員の皆さんはすでに「共に働くボランティア」として認識されていて、人々は「友だちになろう」と考えています。困ったことやわからないことがあれば、何でも地域や配属先の人に相談してください。何でも〝分かち合う〟という気持ちがあれば、解決できることも多いはずです。

JICAパラオ事務所 ユウル・エメシオールさん
JICAパラオ事務所
ユウル・エメシオールさん

Welcome to Palau

パラオの人と仲良くなるには?
パラオ人は食べることが大好き。仲良くなるには、パラオの食事を積極的に楽しみながら、パラオの人との交流を深めてください。笑いを誘うコミュニケーションで、ユーモアも忘れずに。

現地の日本食事情
パラオでは寿司などの日本料理を食べられる場所は身近にあります。ただ、私はカツカレーが大好物なのですが、これはなかなか食べられません。日本にまた来る機会があったら、必ず食べたいです。

パラオの料理
パラオの食事は魚が多く、スープにするほか、揚げたり焼いたりもして食べます。主食はタロイモで、ココナッツミルクと混ぜて使います。タピオカも身近な食材ですよ。


―これまでの経歴は?

   私の協力隊員との最初の出会いは、学校に来ていた日本人の先生で、とても印象的でした。また、大学生の時に交換留学プログラムで沖縄に2年間滞在したこともあって日本が大好きになりました。帰国後に仕事を探す中、JICAはボランティア事業のみならず、母国の発展を支援する多様なプロジェクトを展開していると知り、パラオにいながら日本の人々と働ける環境に大きな魅力を感じました。

―現在の担当業務は?

   JICAパラオ事務所は2021年に「支所」から「事務所」に替わり、今は新オフィスでスタッフを増員しています。日本人・パラオ人合わせて10人以上が働いていて、私はパラオで活動する協力隊員の派遣前から派遣後まで全プロセスに携わっています。

   パラオでは教育や保健医療、農・水産業、廃棄物管理などの分野で隊員が活躍していますが、一人ひとりと積極的にコミュニケーションを取ってそれぞれの性格や考え方を知り、深く密な関係性を築けるよう努力しています。もちろん、一人ひとりの安全を守ることも大切な仕事です。

―隊員へのアドバイス

パラオに到着した隊員たちとのフィールドトリップにて

パラオに到着した隊員たちとのフィールドトリップにて

   皆さんからよく受ける相談は、パラオの人々の働き方などの話題です。パラオ人はのんびりしていて、仕事は丁寧ではないかもしれません。でも、すぐに批判したりせず、穏やかな視点を持ちながら活動を進めてほしいと願っています。以前、やる気に満ちあふれ、少しでも早く成果を出そうと頑張っている隊員がいましたが、迅速に動くあまり同僚や周囲の人の存在を無視して一足飛びでトップの立場にいる人へ交渉を持ち込み、周囲を混乱させる結果になってしまいました。2年で目に見える結果を出すのは難しいでしょうが、配属先や周囲の人たちに配慮しながら一緒に活動を進めていくことも意識するといいでしょう。

   もう一つ、パラオならではの文化や習慣もあります。以前学校に赴任した隊員から「同僚の教員からお金を求められたがどうしたらいいか」と聞かれたことがあります。聞けば、その同僚の親戚が亡くなり、その葬儀に必要な資金を隊員にも求めたようですが、パラオでは知人の関係者が亡くなった際には親戚関係でなくても資金を支援する習慣があります。わからないことがあったら、ぜひ私たちに聞いてほしいですね。

   今、協力隊の皆さんは私にとってわが子のような存在で、心から応援しています。配属先での活動がうまくいくように、できる限りのサポートをしていきたいと思います。


Text=新海美保 取材協力=岡部繁勝 Photo(NS近影)=飯渕一樹(本誌) 写真提供=各在外事務所

知られざるストーリー