派遣国の横顔   ~知っていますか?
派遣地域の歴史とこれから[コスタリカ]

中進国の課題と可能性を感じて

コスタリカで隊員たちは中進国が持つ課題に向き合って活動してきた。土壌肥料、作業療法士、環境教育、日本語教育の活動を紹介する。

佐々木正吾さん
佐々木正吾さん
土壌肥料/1987年度3次隊、シニア隊員/土壌肥料/1990年度0次隊・北海道出身

PROFILE
帯広畜産大学で畜産環境学を専攻。卒業後、環境計量証明事業を行う民間企業での勤務を経て協力隊に参加。グループ派遣「環境に優しい農業プロジェクト」のシニア隊員、ドミニカ共和国やエルサルバドルでJICA専門家として活動後、2005年から宮崎県で「しょうご農園」を営む。12~19年にはJICAの研修員を受け入れ、有機栽培と自然養鶏の組み合わせによる小規模有畜複合農業の知識や技術を伝えた。

大島愛さん
大島 愛さん
作業療法士/2016年度1次隊・茨城県出身

PROFILE
大学卒業後、4年半、作業療法士として日本国内の総合病院に勤務。フィリピンへの語学留学、オーストラリアでのワーキングホリデーなどを経て、「作業療法士として海外で働きたい」と協力隊に参加。帰国後、訪問看護事業を行う企業で作業療法士として勤務する傍ら、協力隊仲間2人とコスタリカコーヒーなどの輸入販売を行うNatuRica(ナチュリカ)をクラウドファンディングで設立。収益でコスタリカの障害者自立センター「モルフォ」を支援している。

藤本優太さん
藤本優太さん
環境教育/2015年度4次隊・東京都出身

PROFILE
大学で環境教育を専攻。卒業後、海外旅行中にネパール地震の発生に居合わせた際、現地のJICA事務所員と話す機会を得て、海外に長期滞在する方法の一つとして協力隊があることを知って応募した。帰国後は環境省のアクティブレンジャーとして日光国立公園で働いた後、造園を行う総合建設会社勤務を経て、現在は自治体職員。

仲野麻理さん
仲野麻理さん
日系SV/ブラジル/日系日本語学校教師/2012年度0次隊、コスタリカ/日本語教育/2019年度2次隊、2022年度7次隊・東京都出身

PROFILE
神奈川県の小学校で28年間教員を務めた後、日本語教師資格を取得。日本語学校で日本在住の外国人や留学生に日本語を教える。東日本大震災後のボランティア活動を機に、JICA海外協力隊に応募。2012年から日系SVとしてブラジルで日本語教師に指導法などを教える。その後、日本で日本語教育に携わった後、再度、協力隊に参加。コスタリカ派遣から4カ月でコロナ禍により一時帰国。1年4カ月間の待機を経て、22年7月末に再派遣。

農薬漬けの野菜から安心安全な野菜へ
有機農業のノウハウを伝えた隊員

   約40年前、環境意識が高まり始めたコスタリカで、農薬や化学肥料を使わない有機農業のノウハウをゼロから築いて教えた一人の協力隊員がいる。1987年、土壌肥料隊員として派遣された佐々木正吾さんだ。根づいた技術は任地の農家によってコスタリカ国内はもとより、中南米各地へと広がっている。

   佐々木さんの配属先は標高1800メートルの山間の農業地帯サルセロにあるブリッサ農業協同組合。恵まれた気候の下で年間通じて高原野菜を生産していたが、トラクターなどが入りにくい急斜面の狭い農地で、農家はスコップのみの重労働による作業を行っていた。そこで手軽に多くの収穫を得るために農薬と化学肥料が多用され、結果、土が痩せて傾斜地では表土が流出して耕地が荒廃し、作物の生育不良や病害虫の発生が深刻化。農業技術についての基礎知識をあまり持たない農民はマスクや手袋を使用せずに農薬散布を行っていたため、健康被害も懸念される状況になっていた。

   配属先からの要請内容は、土壌分析と施肥設計の手法を農協職員に指導すること。そこから農民に適切な施肥方法の指導を行うことが考えられていた。しかし、畑地を見て回った佐々木さんは化学肥料・農薬の大量使用を防ぐためには根本的解決につながる土壌の質の回復が重要と考え、有機質肥料の製造技術の確立と普及を農協長にかけ合った。

ブリッサ村の展示畑で、任地の農家に有機栽培の実証について説明する佐々木さん

ブリッサ村の展示畑で、任地の農家に有機栽培の実証について説明する佐々木さん

「農作業の経験はなかったけれど、持てる知識でやってみるしかない。チャレンジさせてもらいました」

   まず試みたのが安価で導入できる堆肥作り。酪農地帯でもあったため牛糞、野菜の残渣(ざんさ)などを利用し、勉強会に集まってきた農民10人と始めた。

   スコップで牛糞を集めてきて他の材料と共に積み上げ、発酵分解を促すために途中で積み替える「切り返し」を月に1回行い、完成までに3カ月かかった。便利な化学肥料に慣れていた農民にとって手間のかかる大変な作業で、3回目の堆肥作りを行う頃にはほとんどが興味を失っていた。

「自分も就農した今になって思えば、農家の人たちには多くの作業があって重労働なことがわかります。実情をきちんと理解せずに、『土をよくするために必要だから、ぜひやってください』と勢いで進めてしまった。失敗でした」

   たった一人、堆肥作りを継続してくれたのがのちに成功モデルとなるガブリエルさんだ。その地に入植して浅く、貸畑で野菜を作る努力家で研究熱心。人と違う新しい方法を求めていた。

「子どもが生まれたばかりで、この地での農業に危機感を持っていた。そこに僕が現れたので『こいつと一緒にやってみよう』と思ってくれたようです」

   佐々木さんは、堆肥よりも肥料効果の高い発酵有機質肥料「ボカシ肥」を導入することにした。日本の伝統的な農業技術だが、化学肥料の出現と共にあまり使われなくなったものだ。鶏糞や米糠などの新鮮な有機物を混ぜて発酵させることで有効微生物による効果も期待でき、仕上げに乾燥させるので堆肥に比べ軽量で扱いやすい。約10日で製造でき、コストも化学肥料購入の3分の1になった。比較実証のための展示畑で自らもボカシ肥と他の有機農業技術を使って野菜を栽培すると、化学肥料と比べ生育には勝るとも劣らない効果が認められた。

「農民は新しい技術を頭で理解しても、誰かが成功してもうける様子を見なければ信用しない」と感じていた佐々木さん。ガブリエルさんの畑でその仲間と共に、ボカシ肥の導入や育苗法の改善、木酢液などの自然農薬の利用を組み合わせて野菜栽培を実施。1年後には化学肥料や農薬を使わずにキャベツ、レタス、ジャガイモ、ブロッコリーなど多くの野菜の生産に成功した。

   農家によるコスタリカ初の有機農法の実現だったため、「有機肥料による健康なキャベツ」と全国紙に取り上げられて大きな反響を呼び、全国から視察が相次いだ。大手スーパーの契約栽培にもこぎ着けた。

   その後、周辺農家に技術が普及してサルセロは有機野菜の一大生産地として有名になり、ガブリエルさんらは中南米の他地域にも技術を伝えるまでになった。農場の世代交代も進み、2代目の息子・娘たちが活躍している。

   隊員時代、ガブリエルさんらが苦労しながらも生き生きと働く姿に農家の喜びを感じ、いずれ自分も農業をやろうと決めたという佐々木さん。現在、宮崎県で有機栽培の米・野菜と自然鶏卵を生産販売しながら、途上国へ技術を伝え続けている。

支援不足の地方の特別支援学校で
保護者も巻き込んで自立支援

   福祉国家として知られるコスタリカ。障害者支援のための政策や制度整備が進む中で、障害者の物理的アクセスや医療を含む社会サービスの実施面が追いつかないというギャップが存在してきた。特に地方においては医療人材の不足から、適切なリハビリテーションが行われていない状況がある。

教師と保護者向けに研修を行う大島さん。食事やトイレの練習も学校と家庭の両方で行えるよう働きかけた

教師と保護者向けに研修を行う大島さん。食事やトイレの練習も学校と家庭の両方で行えるよう働きかけた

   そんな課題に取り組んだ一人が作業療法士隊員の大島 愛さんだ。2016年からカリブ海に面した東部リモン県グアシモ市にある公立のグアピレス特別支援学校で活動した。

   0歳から21歳まで約180人のさまざまな障害のある生徒が通っているが、車椅子や姿勢補助具などの道具の供給が不十分。カリブ海沿岸地域は産業が少なく、貧しい家庭も多い。道具の購入も難しいため、廃材を使った補助具や自助具の作製・使用方法を同僚である教員や生徒の保護者に指導することが大島さんへの要請だった。

   配属先では初の協力隊員で、みんな日本人に会うのも初めて。大島さんが慣れないスペイン語で説明してもなかなか伝わらず、「この人は一体何をしに来たんだろう」という雰囲気だった。「自分に何ができるのか、まずは見てもらおう」。大島さんは生徒が日常生活に必要な動きを自身で行えるようサポートする用具の製作を始めた。

   学校で廃棄される段ボールや発泡スチロール、牛乳パックなどを活用し、手の拘縮(※)を予防する装具や食事を助ける用具、姿勢補助具などを手作りした。使い心地、通気性、耐久性なども工夫したもので、生徒たちに使い方も指導し、一人で食べる、座るという動作をできるよう支援を続けた。すると同僚たちからは「こんなの作れない?」という相談が来るようになった。

   また、小学校に上がってもオムツをつけている生徒が多いことが気になり、オムツ外しのためのトイレトレーニングを行うことにした。しかし、当初、計画を聞いたカウンターパート(以下、CP)はピンとこないようだった。

「CPはやる気のある優秀な理学療法士。身体機能自体の改善を重視していたので、食事やトイレといった生活や習慣についてあまり問題意識を持っていなかったのです。でも、一緒にJICAの在外研修などで学ぶうちに障害のある子どもの生活への理解が進んで共に働いてくれるようになりました」

   トレーニングでは声がけやつき添いと段階を経て進むマニュアルを作り、同僚たちに誘導を促した。トイレに行けたらシールを貼るなどのちょっとしたアクティビティを取り入れると、生徒自身も一人でできた達成感を感じ、徐々にオムツは不要になっていった。

   大島さんは保護者にも強く働きかけた。障害のある子どもを大切にし過ぎて、「何でもやってあげる」母親が多いと感じたためだ。

「自分でやる機会を与えないと子どもたちが将来困ることになります。練習するとできるようになりますから」と学校での食事やトイレのトレーニングに参加してもらった。

   実は、母親たちが気軽に参加できるのにも事情があった。母子家庭が多く、とりわけ自宅の遠い母親はバスで子どもを学校に連れてきて、学校が終わるまで学校の待合室でおしゃべりや携帯電話を見ながら過ごす。現金収入を得る機会の乏しい生活ではわずかな交通費さえ負担になるためだった。

   任期も残すところ半年という頃、大島さんは待合室の母親たちに声がけし、「折り紙アクセサリープロジェクト」を開始。生徒の母親に折り紙を教え、低コストでできるアクセサリーを作製、販売するというものだ。同僚と協力して校内のバザーで販売すると売り上げは上々。その後も続く学校と保護者の協働活動のきっかけとなった。

未来につなぐ環境教育を
国立公園を舞台に子どもたちと共に学んだ隊員

自然教室に来た子どもたちと藤本さん。首都から離れたニカラグア国境近くの地域で日本人は珍しく、覚えてもらいやすかった

自然教室に来た子どもたちと藤本さん。首都から離れたニカラグア国境近くの地域で日本人は珍しく、覚えてもらいやすかった

   1970年代初頭から80年代終わりにかけて国立公園や野生生物保護区の指定が増加し、国土の約4分の1までになったコスタリカ。それと同時に、保護地域を適切に保全・管理していくためには地域住民の協力や理解促進が欠かせないため、環境教育が重要視されてきた。そうした背景の下、国立公園での小学生向け自然教室に携わったのが藤本優太さん。派遣されたのは2016年のことだ。

   配属先はニカラグア国境近くにあるサンタロサ国立公園。世界自然遺産でもあるこの公園は、他の国立公園をリードする存在で、子ども向け自然教室を行って30年になっていた。環境エネルギー省の関連組織の生物教育部門が運営に当たっており、藤本さんへの要請は自然教室プログラムと、周辺の学校などでの環境教育の充実化だった。

   自然教室は近隣の約30の小学校の4年生から6年生を対象に年に4回、火山、熱帯乾燥林、海辺の生き物などのテーマの野外実習プログラムを行っており、配属先作成の指導案を基礎に環境教育担当の職員がオリジナリティあふれる授業をしていた。「すでに高いレベルのことが行われている中に新卒で派遣されたので、要請に応えるまでに時間がかかりました」と振り返る。

   それでも、藤本さんは慣れないスペイン語の専門用語を必死に覚え、2年目には一人で自然教室の授業を行えるまでになった。授業冒頭で日本の動物についてのシルエットクイズを出したり、現地の人にとって身近なサルのモノマネをしたりし、一気に子どもたちとの距離を縮めた。

藤本さんが地域の小学校で行ったコンポストのワークショップ

藤本さんが地域の小学校で行ったコンポストのワークショップ

「初めて会う日本人ということで覚えてくれて、2回目以降の授業では真剣に話を聞いてくれるようになりました」

   公園内の動植物を観察させてその生態を教えたほか、国立公園と民家が近いためにシカやサルなど多くの動物がゴミをあさって病気になってしまうことなど、さまざまなテーマについて伝えた藤本さん。その傍ら、小学校でゴミ分別の啓発やコンポストのワークショップにも取り組んだ。自然教室に来た学校の引率教員でコンポストに関心を持った人がいれば、その学校にどんどん出向いた。学校菜園を行っているところが多かったこともあり、肥料として使ってくれるようになった。

   コスタリカの人々は環境への意識が高く、理解を得られやすい。そう藤本さんが感じる出来事は他にもあった。野生動物へのゴミ被害を軽減する目的で蓋つきゴミ箱を設置することになった際、予算捻出のため、藤本さんはTシャツやシール、エコバッグなどの販売を提案した。公園の広報部門の協力で製作・販売すると、来園者らによく売れてかなりの収益につながった。

「コスタリカの人たちに自然環境を守る気持ちが強くあって共感してくれたんだと思います。ゴミの分別や処理など実態面でまだ課題が残るコスタリカですが、未来のために環境教育を継続する大切さを教えられました」

「日本をもっと知りたい」
意欲の高い学生たちに
真摯に向き合う日本語教師

   コスタリカでは日本語学習熱が非常に高い。アニメやゲームなどのポップカルチャー人気を背景に、中米域内の学習者数ではメキシコに次ぐ規模になっている。長年の日本語教育支援もこの国への協力の特徴で、JICAは現在、国立のコスタリカ大学とナショナル大学に日本語教育隊員を派遣している。首都の本校ではコスタリカ人の日本語教師も育ってきているが、地方の分校にはおらず、増え続ける学習希望者のニーズに応え切れない状況だ。そんな中で奮闘しているのが、コロナ禍での一斉帰国を経て2022年7月末に再派遣された仲野麻理さんだ。

日本語の授業を行う仲野さん。パワーポイントにはスペイン語の解説文も添えてわかりやすい内容にしている

日本語の授業を行う仲野さん。パワーポイントにはスペイン語の解説文も添えてわかりやすい内容にしている

   配属先は中北部のサンラモン市にあるコスタリカ大学のオキシデンテ校。教養課程の選択制第2外国語として学生に初級(日本語Ⅰ、日本語Ⅱ)を教え、8クラス、延べ約150人に教えてきた。そのほか、大学の休暇中には大学が実施する一般市民向けの講座や子ども向けの日本文化教室も担当する。

   授業では日本語を使ってコミュニケーションすることを目標に、自己紹介や買い物などいろいろな場面で使える日本語を中心に教えている。その中で生活や文化のトピックに触れ、学生からの質問に応じて解説する。質問は「日本人の苗字や名前はなぜ一つなの?」など、日本人からするとユニークなもの。スペイン語圏では両親の苗字を二つとも受け継ぐことが当たり前で、名前もセカンドネームまであり長いため、日本人の名前の構成は興味深かったようだ。その質問に対して、仲野さんは自身の家系図を見せたり、日本では結婚によって夫婦どちらかの姓を選ぶことなどを説明したりもした。

   コスタリカ派遣が決まって初めてスペイン語を学び、今も苦労しているという仲野さん。授業で伝えたい内容を漏らさないようパワーポイントにわかりやすくまとめたものを使う。

「スペイン語で作成するので大変なのですが、生徒が納得してくれている顔を見ると、よかったなと思います」

仲野さんは、授業では巻き寿司や天ぷらなど日本料理の体験を通じて日本文化を知ってもらうことも大切にしている

仲野さんは、授業では巻き寿司や天ぷらなど日本料理の体験を通じて日本文化を知ってもらうことも大切にしている

   仲野さんは、日本語クラスの生徒が真面目で勤勉なことに感心している。概して時間にルーズな傾向があるコスタリカだが、日本の規律を知ってもらうため、授業をほぼ定刻通りに開始することを徹底した。すると、遅刻者がほぼいなくなり、授業の30分も前から教室で待つ学生まで出てきた。「宿題もきちんと提出し、真剣に学び、教師を尊敬するところは日本人に共通するものを感じます」。

   コスタリカは他の中南米諸国のような日本人移住の歴史や日系企業の進出が少ないため〝日本〟について触れる機会は限られる。それだけに、「遠く離れた日本についてSNSなどでは得られないものを生徒たちに提供したい」と、過去にシニアボランティアが造った日本庭園へ遠足に行ったり、書道・折り紙・料理などの日本文化体験の企画にも力を入れている。

   残り数カ月に迫った任期終了までに計画しているイベントは、配属先である大学と日本大使館共催の日本祭りの2回目の開催だ。1回目は再赴任から10カ月目に実施。隣の市で日本祭りを開催したことがある環境教育隊員の人脈を元に協力先を見つけていき、盆栽や武道などコスタリカ人のみで活動する団体の参加も得られた。JICA支所や他の隊員たちの協力もあり、約800人の市民が集まった。

「皆さんの協力あってこその成功で、本当に感謝しています。次は雨期前の4月に開催し、前回以上の人たちに日本文化に触れて楽しんでもらいたい。頑張ります」

活動の舞台裏

1日4回はコーヒータイム

   コスタリカは中米で初めてコーヒー産業を発展させた国で、高品質なコーヒーで知られる。コーヒーは外貨獲得の重要な手段となるため、生産しても飲む習慣はないという国も多いが、コスタリカでは生産量の4分の1近くが国内消費されている。

スーパーの棚一面に並ぶコーヒー。自国産のさまざまなブランドのコーヒーが並び、安くてビッグサイズ

スーパーの棚一面に並ぶコーヒー。自国産のさまざまなブランドのコーヒーが並び、安くてビッグサイズ

「スーパーなどでも回転が速く、常に新鮮なものが棚に並び価格も安いです」と言うのは大島 愛さん。家庭では布製フィルターのネルドリップでコーヒーを入れるという。「紙のフィルターを使うよりもコクがあっておいしく、洗って繰り返し使えて節約にもなるんです」

   朝、10時のおやつ、昼食時、午後のカフェタイムと1日4回はコーヒーの時間がある生活を経て、「日本へ戻っても、お店でドリップコーヒーを頼むより自分で入れたほうがいいと思うようになりました(笑)」と言う大島さん。帰国後は同期隊員3人でコスタリカ産のコーヒーや雑貨などの輸入販売会社「NatuRica」を起こし、現地の障害者支援につなげてきた。

   輸送費の高騰や円安など厳しい環境が続く中、今年2月から個人事業へと転換したが「今後も同様にコーヒーなどの販売を行い、支援を続けながらコスタリカの魅力を日本に届けていきたい」という。

活動の舞台裏

やはり素晴らしい自然大国

   国土の両岸が海に挟まれ、起伏に富んだ地形をしているコスタリカ。地域によって降水量や気温がまったく異なる気候で、隊員は普段の生活でも貴重な野生動物に出会うことがある。

左:世界一美しい鳥とも形容されるケツァール。右:ビビッドなツートンカラーのくちばしのオオハシ。国立公園のガイドツアーに参加すると、特に珍しい動物が見られる(写真提供=いずれも大島 愛さん)

左:世界一美しい鳥とも形容されるケツァール。右:ビビッドなツートンカラーのくちばしのオオハシ。国立公園のガイドツアーに参加すると、特に珍しい動物が見られる(写真提供=いずれも大島 愛さん)

「私の任地ではケツァールが飛んでいました」と言うのは、北西部の山間地域にいた佐々木さん。世界一美しい鳥といわれ、漫画家の手塚治虫が『火の鳥』のモデルにしたとされる鳥だ。村から森に出かけると珍しい鳥をたくさん見かけたという。

   カリブ海沿いの熱帯地域にいた大島さんは通勤途中で野生のナマケモノや鮮やかな色のくちばしを持つオオハシなどに出くわした。「早朝の出勤はまるで動物園のようでした。国立公園などでガイドを雇えば、確実にもっと珍しい動物に出会えます」。

   活動先が国立公園だった藤本さんは多数の国立公園の視察に行っている。中でも、オスティオナル野生生物保護区では、数万匹のウミガメが一斉に上陸して産卵する「アリバダ」を目撃。一斉産卵は1年にたった数日だけというもので、貴重な体験になった。

※拘縮…けがや病気、障害により関節を動かす機会が減ることで、関節が硬くなり動かしにくくなってしまうこと。

Text=工藤美和 写真提供=ご協力いただいた各位

知られざるストーリー