REDD+とは?

いま、なぜ熱帯林の減少・劣化に取り組むのか。

洪水や干ばつなどいま世界で起こっているさまざまな自然災害や異常気象の大きな要因のひとつが、 熱帯林の減少・劣化と言われています。

世界中で排出される大量の温室効果ガス。
この温室効果ガスを吸収・貯蔵している熱帯林の減少と劣化を食い止めることが不可欠です。
2015年は、国連で2020年以降の地球温暖化対策のしくみが決まり、
日本の取り組みや国際貢献が期待されています。
世界のために、地球のために、
まさに、いま始めなければならないことなのです

REDD+は、熱帯林の減少と劣化対策により
気候変動を抑制するための国際的メカニズム。

途上国が、森林減少・劣化の抑制により温室効果ガス排出量を減少させた場合や、
あるいは森林保全により炭素蓄積量を維持、増加させた場合に、
先進国が途上国への経済的支援(資金支援等)を実施するメカニズムがREDD+。

一方、支援した先進国も気候変動抑制への貢献が評価されます。

REDD+は
途上国、先進国ともにベネフィットが与えられる
画期的な取り組みなのです。

民間企業・民間団体・政府機関・研究機関・関係省庁など
協働で取り組むオールジャパンの国際貢献。

途上国の森林保全は緊急課題です。
国連、日本政府、民間企業、研究機関など様々なレベルで
国際交渉や具体的なプロジェクトの取り組みが始まっています。
しかし、一般社会における理解と認知はまだ十分ではなく、
いまこそ、あらゆる人たちに呼びかけて、活動を拡げていく必要があります。
途上国での森林保全活動にオールジャパンで取り組んでいく時なのです。

REDD+

REDD+ : Reducing emissions from deforestation and forest degradation and the role of conservation,
sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks
in developing countries
途上国における森林減少・森林劣化に由来する排出の抑制、並びに森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積の増強

REDD+は、途上国における森林減少・劣化の抑制や持続可能な森林経営などによって温室効果ガス排出量を
削減あるいは吸収量を増大させる努力にインセンティブを与える気候変動対策です。
森林減少・劣化が予想される途上国においてREDD+を実施し、排出削減・吸収増大を達成すれば、
その成果(排出削減量・吸収増大量)はREDD+実施者の貢献分として評価されます。

ノウハウのシェアと連携が成功のカギ

排出削減・吸収増大を達成するためには、森林の保全活動が欠かせませんが、途上国政府の制度づくり、森林に蓄積されている炭素量の測定(モニタリング)、生物多様性や地域住民に対する配慮など、さまざまな活動も不可欠となります。そのため、REDD+の実施にあたっては、民間企業を含む多様な主体が得意な技術やノウハウを持ち寄り、互いに連携することが成功のカギとなります。

目に見える貢献策

REDD+の大きな特徴は、森林保全活動の成果を、対象となる森林に蓄積されている炭素を継続的に計測することにより、定量化することです。
既に自主的取り組みとして、REDD+の排出削減量をクレジット化した取引が行われています。これにより、REDD+実施者は長期的にクレジットを得て、その売却により収益を獲得できるようになります。これらのクレジットの購入により、量的に検証された社会貢献が可能です。
また、REDD+は、排出削減・吸収のほかに生物多様性の保全や途上国の持続可能な発展に寄与するなど、さまざまな副次的効果も期待されます。

国内外の動き

2020年以降の国連下での実施を目指すREDD+

REDD+は、既に2013年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第19回締約国会議(COP19)において基本的な枠組みが決定されました。
UNFCCCの枠組みのもとでは、国または準国(州や県など)の単位でREDD+事業が進められることが決まっており、現在、2020年以降の実施を目指して資金面や技術的な詳細な点に関する交渉が行われています。
並行して、2020年に向けて、国連機関やJICAを始めとする各国の援助機関等は、途上国政府がREDD+を導入するために必要な制度の検討、モニタリング技術の確立、人材育成などに既に取り組んでいます。

政府・民間企業の自主的な取り組みのスタート

一方、日本をはじめとする各国や国際機関、民間企業、NGOなどは、2020年以降のUNFCCCでのREDD+開始に先立ち、自主的な取り組みとして、準国よりも小さなスケールでのプロジェクトが実施されています。
これらの自主的な取り組みのプロジェクトについて2010年より米国にVCS(Verified Carbon Standard)という団体が設立され、REDD+プロジェクトの認証・登録やクレジット(排出権)の発行などを行っています。
また、日本政府も二国間の取り組みとして日本の民間団体が実施するREDD+プロジェクトを2015年から開始する準備を進めています

国連での交渉状況

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)におけるREDD+の検討は、2005年、パプアニューギニアとコスタリカの共同提案をきっかけに始まりました。
途上国における森林減少・森林劣化を抑制するアプローチの必要性を説いた両国の提案は、数多くの国に受け入れられ、
2年後の2007年には将来の気候変動対策として位置づけられました。

具体的なルール作りが始まると、各国間の意見対立が表面化し、議論は難航しました。
しかし、REDD+に対する各国の熱意と粘り強い交渉の結果、2011年の第16回締約国会議(COP16)において枠組みの方向性が決まりました。

国・準国レベルで実施
段階的アプローチを採用
(体制整備や能力向上などの準備活動を重視)
生物多様性への配慮や先住民・地域住民の
権利尊重などのセーフガード活動が必要

さらに、2013年の第19回締約国会議(COP19)において基本的な枠組みが決定に至りました。
現在は、2020年以降のREDD+実施を目指して資金面や技術的詳細についての議論が行われています。
クレジット取引のあり方や早期行動の取り扱いなど、引き続き国連交渉に注目する必要があります。

国際的な自主的取り組み(VCS)

世界各地でREDD+の自主的な取り組みが行われていますが、それらを推進するもののひとつがVerified Carbon Standard(VCS)です。 VCSとは、気候変動対策活動から得られる排出削減量・吸収量を認証し、クレジットとして発行させる認証スキームです。

自主的な認証スキームの構築

Verified Carbon Standard(VCS)とは、気候変動対策活動から得られる排出削減量・吸収量を認証し、クレジットとして発行させる認証スキームです。発行されるクレジットは自主的市場において流通するものであり、UNFCCCに基づく各国の排出削減目標の達成に使用することはできません。しかし、民間企業等が、自社排出量のオフセットや環境への貢献等を目的に活用することが可能です。

すでに確立された認証制度

VCSは、UNFCCCにおけるREDD+の位置づけやルールが定まる以前から、REDD+を対象とし、排出削減量・吸収量の評価のためのルール(ガイドラインや方法論)を整備してきました。これまでに取り組まれたREDD+活動の多くはVCSの下でクレジットを発行していることから、VCSは自主的市場におけるデファクトスタンダードとしての地位を確立しています。

市場取引の始まっているVCS

2011 年、ケニアのREDD+プロジェクトが世界で初めてVCS認証を受けました。以降、これまでに30件近くのREDD+プロジェクトが承認されています。それらのプロジェクトからの発行クレジット量は2,000万t-CO2あまりに達しています。そのうち半分程度が既に市場で取引されており、日本においても社会貢献としてVCSのクレジットを購入した民間団体もあります。

日本の取り組み(JCM)

JCMとは

日本では、二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)によるREDD+の取り組みに期待が集まっています。 JCMは、気候変動対策の仕組みの一つで、優れた低炭素技術等の普及を通じ、地球規模での温暖化対策に貢献するとともに、日本の削減目標の達成に活用するものです。

JCMは、日本と制度実施に合意した途上国(以下、ホスト国)の二国間で実施されます。2015年9月現在、15の国と合意に達しています(モンゴル、バングラデシュ、エチオピア、ケニア、モルディブ、ベトナム、ラオス、インドネシア、コスタリカ、パラオ、カンボジア、メキシコ、サウジアラビア、チリ、ミャンマー)。
日本から低炭素技術等を提供し、ホスト国でGHGの排出削減・吸収のための活動を実施、その貢献分を日本の排出削減目標の達成に活用するものです。 民間企業は、技術・サービスの提供や、現地での活動実施の主体として活躍します。取り組みを促進するため、環境省や経済産業省等の関係各省庁が支援事業を実施しています。
詳細は、こちらのウェブサイトをご覧ください。

JCMにおけるREDD+

JCM対象となる分野はホスト国との間で決定されますが、インドネシアやカンボジア、ラオスといった複数のホスト国からREDD+プロジェクトを実施することが求められており、2015年からの実施が検討されています。JCMの下でのREDD+(以下、「JCM - REDD+」)を実施することによって、自国の森林保全が進み気候変動対策に貢献し、生物多様性保全や地域住民の生計向上にも寄与することを期待されています。

2009年以降、民間企業等が環境省や経済産業省の支援を受けながらREDD+事業形成に向けた実証調査を実施し、森林のモニタリング方法や現地関係者との連携方法等、事業に必要な知見を蓄積してきました。2014年から関係省庁がJCM-REDD+用のルールづくりに着手。2015(平成27)年度からは環境省の「二国間クレジット制度(JCM)を利用したREDD+プロジェクト補助事業」がスタートしました。

「JCM - REDD+」の枠組みは着実に進展しつつあります。民間企業は、「JCM - REDD+」を通じて自社の技術やサービスの海外展開を進めることが可能です。

FAQ

2016年11月時点の情報です。

なぜREDD+が必要ですか?

大規模な開発や火災などによって森林が減少・劣化すると、温室効果ガスが発生します。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告によると、途上国における森林の減少・劣化に伴う温室効果ガス排出量は地球上の全排出量の1~2割にも達するとされ、森林分野が主要な排出源のひとつであることが示されました。

現在この瞬間も森林の減少・劣化は進行しており、対策は待ったなしの状況です。ところが、UNFCCC(国連気候変動枠組み条約)の京都議定書の枠組みでは途上国の森林からの排出削減が対象となっておらず、問題解決に向けた取り組みは遅れています。

こうした中、REDD+は森林減少・劣化の抑制や持続可能な森林経営などについて途上国にインセンティブを与える画期的なメカニズムとして提案されました。REDD+は、森林分野における有望かつ実現可能な気候変動緩和策として、また生物多様性の保全や途上国の持続可能な発展に寄与する取り組みとして関心を集めています。

REDD+の仕組みは?

森林減少・森林劣化が予想される途上国において、それを抑制するための活動を実施し排出削減・吸収を達成すれば、その成果である排出削減量・吸収量が活動実施主体の貢献分として評価される仕組みです。評価された排出削減量・吸収量は、排出権のクレジット取引やCSR目的などに活用されることが想定されます。

なぜ、森が減っているの?

人口増加や経済発展に伴う農地の拡大、焼畑移動耕作の拡大、用材・燃料材の採集、違法伐採、鉱山開発、インフラ開発などが背景にあります。FAO(2010)によると、2000年代には毎年約1,300万ヘクタール(日本の面積のおよそ1/3)のペースで森林が減少しました。

いつから始まるの?

UNFCCCの下では、2020年の開始を視野に現在も議論が続けられており、数多くの途上国や機関がパイロットプロジェクトの選定や実施体制の構築などを進めています。並行して、自主的排出削減の取り組みとしては、既にVCSなど海外の機関による認証や取引の制度があり、社会貢献としてクレジットを購入した日本企業もあります。また、日本政府も二国間クレジットの制度(JCM)として、2015年からREDD+事業を試行することを予定しています。REDD+は既に動き始めています。

歴史は

2005年、パプアニューギニアとコスタリカの共同提案をきっかけに、UNFCCCの下で検討が始まりました。当初、対象は森林減少・森林劣化の抑制活動(REDD)に限られていましたが、持続可能な森林経営などの活動(プラス)も含めるべきと主張する一部途上国の意見が取り入れられ、現在のREDD+となりました。

REDD+の考え方は、先進国と途上国の双方に幅広く受け入れられ、2007年の第13回締約国会議(COP13)では将来の気候変動緩和策として位置づけられました。その後、具体的なルール作りに議論が移ると、各国間の意見対立が表面化し、交渉は難航しましたが、REDD+に対する各国の熱意と粘り強い交渉の結果、2013年の第19回締約国会議(COP19)において基本的なルールが決定されました。

現在は、気候変動の2020年以降の新たな枠組みにおいてもREDD+実施を目指して、資金面や技術的詳細な点に関する議論が行われています。

読み方は?

通常「レッドプラス」と読みます。

REDD+の意味は?

Reducing emissions from deforestation and forest degradation and the role of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest carbon stocks in developing countries(途上国における森林減少・森林劣化に由来する排出の抑制、並びに森林保全、持続可能な森林経営、森林炭素蓄積の増強)」の略称です。当初、議論の対象は森林減少・森林劣化の抑制活動(REDD)に限られていましたが、その後、持続可能な森林経営などの活動がプラスされたため、REDD+となりました。

誰のための取組み?

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書では、気候変動の影響によって、作物収量の低下、暑熱による死亡率や疾病率の増加、干ばつや洪水による被害などが地球規模で発生していることが報告されました。気候変動による被害は、地球上のすべての国や企業、そして個人に及んでいます。REDD+は、途上国における森林減少・劣化の抑制や持続可能な森林経営などによって温室効果ガス排出量を削減あるいは吸収量を増大させる取組ですが、その効果は日本を含めて地球上のすべての国や企業、個人に波及します。

REDD+のコストはどれくらい?

一般的なREDD+の実施コストを示すことは困難ですが、2014年に公表されたIPCC第5次評価報告書(AR5)において、REDD+は、あらゆる排出削減対策の中でも非常に費用対効果の高い取組であるとされました。

一方、英国財務省が2006年に作成した「気候変動の経済学」(通称:スターン・レビュー)も森林減少の抑制を費用対効果の高い取組として紹介し、早急な取組実施の必要性に触れています。

スターン・レビューによると、土地利用に由来する総炭素排出量の70%は8ヶ国が占めており、その森林保護にかかる機会費用は、当初はおよそ50 億ドルであり、時間とともに徐々に上昇するとされています。

どんな価値があるの?

REDD+は、温室効果ガス排出量の削減あるいは吸収量の増大に加えて、生物多様性の保全や途上国の持続可能な発展にも貢献するなど、さまざまな副次的効果が期待されます。参加企業にとっては、CSRによるブランド価値向上のほか、クレジット収益を獲得するチャンスにもなります。

具体的にはどんな方法があるの?

例えば、森林を保全する区域を事前に決めてそれを遵守する、あるいは持続的な森林経営手法を導入するなど、地域の特徴に応じてさまざまなアプローチが考えられます。こうした取組を円滑に進めるためには、相手国の政府や地域住民との関係構築、代替生計活動の導入、定期的なモニタリング活動の実施なども欠かせません。

課題は?

REDD+を進める上での課題は、相手国との関係構築実施体制の整備モニタリング方法の確立などです。こうした課題について、決まった解決方法は用意されていませんが、日本には数多くの先行事例やREDD+を支援する機関があります。先行事例を学び、関連機関とうまく連携することが課題解決の近道となります。

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