国際協力 ソーシャルビジネスカンファレンス
in 東京
〜開発途上国の課題を解決するビジネスの視点を学ぶ〜

開催日時:2017年6月3日(土)14:00〜17:30
会場:JICA市ヶ谷ビル国際会議場
主催:REDD+ プラットフォーム(事務局:JICA/森林総合研究所)
概要・プログラムはこちら

『森から世界を変える REDD+ プラットフォーム』(事務局:JICA/森林総合研究所)が主催する2017年度の企画、「森から世界を変えるソーシャルビジネスアワード」プロジェクトのキックオフとして、「国際協力ソーシャルビジネスカンファレンス 〜開発途上国の課題を解決するビジネスの視点を学ぶ〜」が、6月3日(土)、JICA市ヶ谷ビル国際会議場(東京都新宿区)で開催されました(6月10日には神戸でも開催予定)。

「森から世界を変えるソーシャルビジネスアワード」とは、イノベーティブなマインドを持つ若者(18歳~39歳)の参加を募り、7月に開催されるワークショップにおいて、途上国で森林保全を実践している企業やJICAの報告を通して途上国の森林保全の現状を知り、『森から世界を変えるソーシャルビジネスアワード』総監修を務めるビジネスプロデューサーの谷中修吾氏からソーシャルビジネスのフレームワーク作成について学んだ上で、途上国の森林を保全しながらビジネスとしても成立するイノベーティブな「ソーシャルビジネス」のアイデアを提案してもらうプロジェクトです。

62名の参加者を迎えて東京で開催されたカンファレンスでは、谷中修吾氏のナビゲートの下、イノベーターの白木夏子氏(株式会社HASUNA代表取締役CEO)、ジャーナリストの安田菜津紀氏(フォトジャーナリスト)、プラクティショナーの矢崎慎介氏(兼松株式会社)から、それぞれの立場で開発途上国の課題を解決するビジネスの視点についてお話しいただきました。登壇者の方々からのお話に続いて『森から世界を変えるREDD+ プラットフォーム』オフィシャルサポーターであり、アワードの特別審査員を務めるタレントのパックンマックンから、ポイントの振り返りとともに参加者の皆さんにエールが送られ、最後にJICA地球環境部森林・自然環境グループ担当次長の森田隆博氏からREDD+を巡る国際的な動きや課題について説明していただきました。

オープニング:谷中修吾氏
(ビジネスプロデューサー/BBT大学・BBT大学大学院MBA 准教授)

カンファレンスのオープニングでは、『森から世界を変えるソーシャルビジネスアワード』総監修を務める谷中修吾氏が登壇しました。

谷中氏からは、「森から世界を変えるソーシャルビジネスアワード」は、森林保全とソーシャルビジネスを両立するアイデアのヒントや、柔軟な発想のアイデアを求めるものであり、カンファレンスでは、カジュアルに楽しみながら学んで欲しいというメッセージが述べられました。続く登壇者の方々紹介では、参加者の皆さんから期待をこめた大きな拍手が送られました。

イノベーターTalk:白木夏子氏
(起業家、株式会社HASUNA 代表取締役CEO)

「イノベーターTalk」でお話しいただいた白木夏子氏は、2014年のForbes誌「未来を創る日本の女性10人」に選出されるなど、世界を舞台に活躍されています。白木氏がCEOを務める『HASUNA』では、ペルー、パキスタン、ルワンダなど、世界約10カ国の宝石鉱山で働く労働者や職人とともにジュエリーを制作し、作品は国内各地の有名百貨店などで販売されています。

白木氏からは、ジュエリーの原石を産出する鉱山があるにもかかわらず、安い値段で買い叩かれて貧困に苦しんでいる町を訪れたことがジュエリーを扱うエシカルビジネスを手掛けるようになったきっかけだったというエピソードや、途上国の人たちと共存共栄を目指すソーシャルビジネスの具体的な起業のあり方をお話しいただきました。

トークの締めくくりでは「これからソーシャルビジネスを目指す人へ」と題して、ご自身の体験に基づいたイノベーターとしての「心得」を紹介。

1.普通のビジネスとして組み立てる。
2.「社会起業家」だけで集まらない。
3.投資家と積極的に会う。
4.自分の情熱に忠実に。

情熱を維持するためには、立ち止まって考える時間も大切といったことなど、エシカルなソーシャルビジネスの実践者である白木氏の言葉は、参加者にとって有意義なアドバイスとなりました。

ジャーナリズムTalk:安田菜津紀氏
(フォトジャーナリスト)

「ジャーナリズムTalk」で登壇した安田菜津紀氏は、東南アジアやアフリカで貧困や難民の問題をテーマに取材を続け、東日本大震災後には陸前高田を中心とした三陸地方の現状を温かな視点で写し取り、写真集などを通して発信しています。

安田氏が撮影した写真をスクリーンに映し出しながら、谷中氏との対談スタイルでトークは展開。おもな取材地として長年追いかけているカンボジアでのエピソードなどが紹介されました。

カンボジアはREDD+ の対象となる森が広がっている国でもあります。取材を通じた経験から、地元の人たちと一緒に森を守る取組を進める心構えとして「何かをしてあげるという考え方ではなく、森や地元の方々からいただいているものに、自分たちがどんなお返しをできるか考えることが大切」と安田さん。出会いの数だけ価値観が広がっていく経験から、「私とあなたという関係をできるだけたくさん結ぶことが大切」とお話しいただきました。

プラクティショナーTalk:矢崎慎介氏
(兼松株式会社)

「プラクティショナーTalk」は、実際に森林保全と両立するビジネスモデルの確立に取り組んでいるキーパーソンによるプレゼンテーションです。矢崎氏は、兼松株式会社の担当者として、インドネシアのゴロンタロ州ボアレモ県におけるREDD+ プロジェクトを推進しています。

現地では、生計向上のために導入されたトウモロコシの焼畑農業が急激に拡大することで森林減少が深刻な課題になっていました。そこで、現地の企業や政府機関と連携し、農民の方々の理解を得ながら、森林保全と両立可能なカカオ栽培を指導。付加価値を高めるために、収穫したカカオを発酵させる技術指導も行っていることなどが説明されました。政府機関と連携し企業活動を通じて森林保全とビジネスを両立させる具体的な方法をご紹介いただきました。

現地の農民の方々に森を守ることの大切さも理解していただきながら生計の安定をもたらし、日本側の協力企業は良質なチョコレートの原料を調達できる、まさに「Win×Win」な関係の象徴的な事例でもあります。

サポーターTalk: パックンマックン

日米コンビのお笑いタレントとして人気のパックンマックンは、『森から世界を変えるREDD+ プラットフォーム』のオフィシャルサポーターであり、今回の「森から世界を変えるソーシャルビジネスアワード」特別審査員です。

大きな拍手に迎えられて登壇したパックンマックン。「今日の会場はJICA、つまり国際協力機構の国際会議場だけど、まさに僕たちパックンマックンは、日米の2人で毎日国際会議だからね!」とパックンの軽妙なトークで会場の雰囲気を和ませてくれました。

もちろん、笑いだけではなく、白木氏、安田氏、矢崎氏と、ここまでの登壇者の話の内容をわかりやすく振り返りながら、『森から世界を変えるREDD+ プラットフォーム』の公式サイトで紹介している『パックンマックンも納得。 Really? REDD+ !! 』を用いてREDD+ をわかりやすく説明していただくとともに、参加者のみなさんに「森林保全の大切さ」や「ソーシャルビジネスのアイデアを考えるためのポイント」を分かり易くお話していただきました。

JICA Talk:森田隆博氏
(JICA 地球環境部 森林・自然環境グループ担当次長)

プレゼンテーションの締めくくりは、『森から世界を変えるREDD+ プラットフォーム』の事務局を担当するJICA地球環境部森林・自然環境グループ担当次長の森田隆博氏が登壇。地球温暖化や世界の森林減少の現状などを解説する中で、なぜ森を守らなければならないのかということや、2015年に締結された「パリ協定」の意義などが、わかりやすく説明していただきました。

REDD+ など、森林保全とビジネスを両立させることを目指した取組では、焼畑など森林破壊に繋がる農業から、インドネシアでのカカオ豆をはじめとして、養豚や工芸品作り、きのこ栽培など、代替となる生計手段を生み出す試みが続けられています。森田氏からは、こうした経験を通じた「気付き」として、ビジネスを成立させるためには森林とともに暮らす人びとの視点に立ったマーケティングが大切な課題であることをお話しいただきました。

この日の登壇者のみなさん。パックン考案の「REDD+」のポーズで締めくくってくださいました。

交流会

カンファレンス終了後開催された参加者と登壇者の交流会は、1時間余りと短い時間ではありましたが和やかに盛り上がりました。参加者の声を一部、ご紹介します。

長野県上田市から参加いただいた加賀瀬悠さん(写真左)と徳永大樹さん(右)。「森林保全とソーシャルビジネスの両立といわれてもイメージがわかなかったが、この日のカンファレンスで、中学生時代を過ごしたコスタリカの森で、森から医薬品の原料を採取する研究が進められていたことを思い出しました」と話してくれました。

会場には高校生の姿もありました。筑波大学付属坂戸高校3年生の、中島さやかさん、ザーマン・ノエルさん、江田星來(せいら)さん(写真左から)の3人は、卒業研究の演習として、先生とともに参加してくれました。

「フェアトレードで国際交流を生み出す卒業研究に取り組んでいるのですが、今日のカンファレンスで、ビジネスモデル作りの道筋が見えてきた気がします」(ノエルさん)

「楽しむことが大切という登壇者の方々の言葉に勇気づけられました。自分自身のキャリアにも活かしていきたいです」(中島さん)

「登壇者のみなさんのお話しを聞いて、環境保全や途上国支援という『核』がしっかりとあることを感じました。参加してよかったです」(江田さん)

とても頼もしい高校生のみなさんは、7月に開催される「森から世界を変えるソーシャルビジネスアワード」のワークショップにも参加してくれるそうです。

さて、6月10日(土)には神戸でも、「国際協力ソーシャルビジネスカンファレンス 〜開発途上国の課題を解決するビジネスの視点を学ぶ〜」が開催されます。まだ席には若干の余裕がありますので、興味のある方はぜひご参加ください。

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