イベント情報

REDD+ シンポジウム『REDDプラスの早期実現に向けて』
2015年7月3日(金)JICA市ヶ谷ビル国際会議場

4カ国から7名のキーパーソンが来日


雨天にも関わらず会場は満員でした。

7月3日、REDD+シンポジウム『REDD+の早期実現に向けて』が東京都新宿区のJICA市ヶ谷ビル国際会議場で開催されました。この日はあいにくの雨模様にも関わらず、満員の約130名が参加して、熱気あふれるシンポジウムとなりました。

このシンポジウムは、環境省、JICA(独立行政法人国際協力機構)、森林総合研究所と『森から世界を変える REDD+ プラットフォーム』が主催。日本におけるREDD+への取り組みを推進するために、実際に森林保全の舞台となる各国(ホスト国)政府の取り組みの現状を知り、日本の民間企業や団体が、今、取り組むべきことは何かについて考えるためのものです。

この日は、日本と二国間クレジット制度(JCM)に関する文書を署名している、インドネシア、カンボジア、ベトナム、ラオスの4カ国から、各国のREDD+推進のキーパーソン7名が来日。日本在住の各国関係者も多数参加して、日本側の民間企業や団体関係者とともに考え、親睦を深める素晴らしい機会となりました。

REDD+の重要性と課題


森林総研松本光朗氏への質疑応答風景。

シンポジウムでは、まずJICA地球環境部の宍戸健一氏が主催者を代表して挨拶。REDD+のプロジェクトをスムーズに実現していくために、官民連携で情報を共有し、日本の「強み」を集結することの大切さを、参加者のみなさんに改めて訴求しました。

続いて、環境省 研究調査室の竹本明生氏が『気候変動政策とREDD+に関する最新の動向』というテーマで講演。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書を例に挙げ、すでに「地球の気候システム温暖化には疑う余地がない」と結論づけられたことなどを紹介し、REDD+が非常に費用対効果の高い選択肢であることを解説しました。

さらに、REDD+についての国連での議論の流れや、今年12月にフランスで開催されるCOP21とその後に向けて考えておくべきことを解説。今年の6月に政府の地球温暖化対策推進本部が発表し、パブリックコメントを経て正式決定目前の『日本の約束草案(政府原案)』についての説明などが行われました。この『日本の約束草案』は、2030年度の温室効果ガス削減目標を2013年度比26%減とするものです。

また、森林総合研究所 REDD研究開発センターの松本光朗センター長が『REDD+向けJCM方法論開発ガイドライン(ドラフト)』について解説。日本においても官民連携でREDD+への取り組みを進める上で、二国間クレジット制度(JCM)が重要であることや、今まさに、より現実的なガイドライン策定に向けて協議が続いていることなどが説明されました。

JCMによるREDD+はまさに今年度中の開始に向けて、ガイドラインなどの協議が続いているところです。松本氏の解説の中では、たとえば、自然に発生する森林火災などのリスクを考慮した「ディスカウント」(排出削減量を割り引いてクレジットとする)の方法などが紹介されました。具体的なクレジット算定方法については参加者の関心も高く、温室効果ガス排出削減のベース値となる「リファレンスレベル(参照値)」の策定方法や、懸案でもあるディスカウントの割合の設定方法などについて活発な質疑応答が行われました。

各国のキーパーソンが日本への期待感を語る

続いて、インドネシア、カンボジア、ベトナム、ラオスの代表者が、それぞれの国内におけるREDD+と、森林保全への取組状況や、実際のパイロットプロジェクトなどの実例を紹介。今後、よりスムーズに効果的なREDD+プロジェクトを進めるために、より多くの日本企業や団体の参加への期待感などが語られました。

シンポジウムに参加した各国では、すでに日本が参画した多くのパイロットプロジェクトが進められています。そうした経緯を踏まえつつ、各国代表者からさらにスケールアップしたREDD+プロジェクトの推進やそのためのJCMの活用、GISによる精密な測定、生物多様性や森林保全に関する技術的なサポートなどを期待する意見が述べられました。


インドネシア 環境林業省
環境・気候変動担当大臣顧問
Dr. Yetti Rusli

カンボジア 環境省
グリーン成長国家委員会副長官
Dr. Choup Paris

ベトナム 天然資源環境省
気象水文気候変動局
Mr. Nguyen Trong Hung

ラオス 天然資源環境省
森林資源管理局次長
Dr. Inthavy Akkharath

ネットワーキングランチは会場内に用意された料理を囲んで、各国からのゲストや国内在住の各国の方々と、REDD+に関与・参加している日本の民間企業・団体関係者との親睦を深める時間として活用されました。さらに、元環境大臣の衆議院議員、小池百合子氏が駆け付けて、各国のキーパーソンや日本企業の関係者を激励してくださいました。


小池百合子氏が激励に
駆け付けてくださいました。

事業環境は急速に整いつつある

ネットワーキングランチの後は、『森から世界を変える REDD+ プラットフォーム』の実行委員でもある早稲田大学教授の天野正博氏をファシリテーターとして『REDD+の早期実現に向けて今取り組むべきこと』をテーマにしたパネルディスカッションを実施。

各国のキーパーソンと、環境省の竹本氏、JICA宍戸氏に加え、早くから実際のプロジェクトに取り組む兼松株式会社の矢崎慎介氏、一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンの浦口あや氏が参加して、日本企業がREDD+に取り組むためのポイントなどについての議論が深められました。

「5年前は、ホスト国でどこの誰を訪ねれば交渉を進められるのかさえ分からない状態だった。日本企業がREDD+プロジェクトを事業化するためのハードルは下がったということを、今日のシンポジウムで実感できた」(矢崎氏)

「大きく長いプロジェクトを実現していくためには、ひとつの企業や団体が丸抱えで進めるだけではうまくいかない。官民、そして複数の企業が連携して、さまざまなオプションを組み合わせていくことが重要」(浦口氏)

すでに実際に現地でのREDD+プロジェクトに取り組むパネリストの言葉には、各国の方々も大きく頷く姿が印象的でした。

また、民間企業がREDD+に投資するにあたり、ホスト国の側にどのような受け入れ体制が構築されているか、どのように民間企業が便益を得られるような仕組みを整備するかといったことについて、各国の代表者から具体的な説明がなされました。

さらに、生物多様性の保全や地域コミュニティの生計向上など「セーフガード」に関連する事項が、REDD+の進展にとってとても重要であることについて活発な議論がされて、各国の考え方や受け入れ体制などについて説明されました。

最後は、環境省 地球環境審議官の関荘一郎氏の閉会挨拶で幕を閉じたシンポジウム。今後、さらに多くの民間企業などの参加が大切であることを実感できる、有意義な時間となりました。




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