イベント情報

【REPORT】 日経BP環境経営フォーラム 15周年記念シンポジウム
2015年10月21日(水)ベルサール汐留




環境意識の高い多数の企業人に『REDD+』の意義と魅力をアピール

10月21日、『日経BP環境経営フォーラム 15周年記念シンポジウム』がベルサール汐留(東京都港区)で開催されました。日経BP環境経営フォーラム(EMF)とは、企業の立場から経済の健全な成長と地球との共生を目指し、会員企業の情報収集や情報発信を支援する組織で、今年、設立から15周年を迎えました。今回のシンポジウムは「進化するサステナブル経営」をテーマとして、サステナブル経営に関する理解を深め、今後の企業経営の指針となる場となるよう企画されました。

フォーラムは大きく2部構成。午前中の基調講演などに続いて、午後は2つの分科会が開催されました。そのうちの一つの分科会において「森林保全とサステナブル経営」(協力:JICA)をテーマとして、REDD+ の概要や、海外や日本の企業の取り組みについての講演や報告が行われました。

会場には、すでに『森から世界を変える REDD+ プラットフォーム』に加盟している企業、団体はもちろん、この環境経営フォーラムの会員となっている環境への意識が高い企業人が満員の席を埋め、REDD+ についての有意義な情報発信の場となりました。

「サステナブル経営と日本企業」をテーマとした午前中の部では、冒頭に日経BP 代表取締役社長の長田公平氏が主催者挨拶を行った後、花王 代表取締役社長執行役員の澤田道隆氏が、「社会のサステナビリティへの貢献」と題して基調講演を行いました。続いてEMF諮問委員長の小宮山宏氏(三菱総合研究所理事長、プラチナ構想ネットワーク会長、東京大学第28代総長)による講演「プラチナ社会とサステナブル経営」の後、エシカル協会代表理事でフリーアナウンサーの末吉里花氏、日経BP発行フリーマガジン『ecomom』編集長の村上富美氏による「エシカル」をテーマにしたトークセッションが行われました。



午後の分科会では REDD+ の情報を発信

昼食休憩を挟んだ午後の部は2つのテーマ分科会が開催されました。REDD+ の紹介を含む森林保全をテーマとした「森林保全とサステナブル経営」(協力:JICA)と、男女共同参画社会等をテーマとした「ダイバーシティとサステナブル経営」です。「女性の力を活かす」という社会的に注目度の高い話題をテーマとする分科会と参加者を二分することになりました。とはいえ、「REDD+=森林保全」というまさにこれからのテーマであるこちらの分科会会場も、用意した席が足りなくなりそうなほどの盛況となり、日本企業のキーパーソンたちが、地球温暖化やREDD+ のような世界的な取組に、高い関心をもっていることを実感できました。

分科会は、まず環境省地球環境局研究調査室の竹本明生氏の挨拶で始まりました。続いて、EMF学識諮問委員である末吉竹二郎氏(UNEP FI特別顧問)が「サステナブル社会と日本企業の役割」というテーマで基調講演。地球温暖化の現状解説などに続いて、ユニリーバCEO、ポール・ポールマン氏の「これまでは、社会や環境を搾取してきた。これからは社会や環境に貢献する」という言葉を紹介し、今後の企業活動にとって、環境や社会に対する責任を果たすことが重要であるという熱い提言が印象的でした。

続いては、森林総合研究所REDD研究開発センター長の松本光朗氏が「我が国の温室効果ガス排出削減目標と森林保全」をテーマに講演。世界の森林面積減少が、赤道直下の途上国に集中している現状などを説明し、地球温暖化の大きな要因のひとつとされている森林減少を食い止めるために、REDD+ が果たす役割の大きさを解説。さらには、生物多様性の保全や地域コミュニティの参加など、REDD+ の特徴的な考え方である「セーフガード」があることで、企業がREDD+ に取組んだ際、社会貢献の大きな意義をもつポテンシャルがあることなどが語られました。

基調講演の後は『森から世界を変える REDD+ プラットフォーム』のメンバーでもある企業、団体による事例報告が行われました。コンサベーション・インターナショナル・ジャパンの浦口あや氏が「グローバル企業による森林保全とREDDの取組」と題して、国際環境NGOであるコンサベーション・インターナショナルと連携しつつ、REDD+ に積極的に取り組む世界的な企業、そして日本企業の事例などがプレゼンテーションされました。

続いて、兼松株式会社エネルギー部の矢崎慎介氏が「インドネシア ゴロンタロ州における REDD+ プロジェクトの取り組み」と題して、現地自治体政府や住民と緊密な連携を取りながら進めているカカオ農業支援などについて説明。この地域での森林減少はトウモロコシ栽培のための農地拡大による森林伐採が大きな要因になっています。より収益性の高いカカオ生産を増やし、さらに付加価値を高めるために発酵させる技術指導も行うことで、現地農家の生計向上と安定化を図り、森林伐採を減らしていこうとする取組です。

2つの事例報告は、さまざまな強みをもつ複数の企業との官民連携がいかに効果的な力を発揮するかということを示す、象徴的な例だといえるでしょう。

分科会の最後を締めくくったのは、『日経エコロジー』編集長の田中太郎氏をファシリテーターとして、基調講演、事例報告の登壇者に、国際協力機構(JICA)地球環境部次長の宍戸健一氏を加えたパネルディスカッションが行われました。

「REDD+の、プラスは何を意味するのか」という田中氏からのベーシックな質問に始まり、REDD+をめぐる世界各国の動きや、日本が果たすべき役割、そして、日本が世界に貢献するために「官民連携」が重要であることなどが話し合われました。

ディスカッションの中では、「個人として価値を知り興味をもっても、会社の経営陣にREDD+ を理解してもらって取組に参加することのコンセンサスを取るのが難しい」といった現実的な話題も飛び出して、末吉氏が「温室効果ガス削減への取組は21世紀に生き残る企業の必須条件です」と檄を飛ばすなど、時に和気藹々と盛り上がるディスカッションとなりました。

この日、会場内にはREDD+ に関するパネルも展示され、多くの参加者が足を止めて興味深げに見ていました。これを機に、日本におけるREDD+ への理解がさらに深まり、『森から世界を変える REDD+ プラットフォーム』に加盟する企業、団体がさらに増えることを期待します。

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