イベント情報

【REPORT】 ビジネスモデル分科会 平成27年度第一弾イベント『REDD+ ビジネスマッチング』
2015年11月26日(木) JICA市ヶ谷研修所

民間企業が参入するための、具体的なビジネスプランを考える


進行役は三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)の矢野雅人氏。

MURCの岩垂麻理絵研究員

MURCの力石晴子研究員。

住友林業の佐藤裕隆チームマネージャー。

REDD+ を推進するために、民間企業がどのように参入するかということが重要な課題です。今回のビジネスモデル分科会では、東南アジア各国などですでに先行しているプロジェクトを題材にして、民間企業が参入するためのビジネスプランについて、ワークショップ形式の議論が行われました。

進行役である三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢野雅人氏の挨拶からイベントはスタート。矢野氏からは「より具体的な民間参入のあり方を考えるための議論の場であり、参加者の方々の自由で活発な議論に期待する」旨の説明がされました。

モデルプロジェクトを題材にしたワークショップ

まず、グループごとの議論の前に、各グループの題材となる「モデルプロジェクト」について、各プロジェクトに関わるご担当者がファシリテーターとしてプレゼンテーションを行いました。

ルアンパバーン県(ラオス人民民主共和国)の「代替生計の導入等による焼畑移動耕作の抑制」について説明したのは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの岩垂麻理絵研究員。

プロジェクトの対象地は山岳地帯であり、住民は焼畑農業を営んでいますが、気候などの自然条件に左右されて生計が安定せず、焼畑農業が森林減少の主要因となっています。REDD+ では安定した生計を確保するための農業技術の導入、あるいは非農業による生計手段の開発などが大きな課題となっています。

西カリマンタン州(インドネシア共和国)の「持続可能な生計手段の多様化及び参入済み地元事業者との連携による広域レベルの森林保全」については、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの力石晴子研究員がファシリテーターを務めました。

ここでも、農業技術向上や手工芸品の市場開拓などによる代替生計手段の開発が課題。プロジェクト対象地域はオランウータンの生息地でもあり、エコツーリズムなども視野に入れた生計手段を導入し、農地転用や違法伐採などを減らしていくことを目指した取組が続けられています。

中部カリマンタン州(インドネシア共和国)を説明したのは、住友林業の佐藤裕隆チームマネージャー。約16万平方km(北海道の約2倍)という広大なプロジェクト対象地では、広大な泥炭湿地林で乾期に発生する大規模な自然火災が大きな問題になっています。農林業の技術向上はもとより、ガムの原料となるジェルトンや、高品質なラタン(家具原料となる籐)などを活用した生計手段の開発が課題です。

さまざまなプロフェッショナルが活発に議論


各テーブルで活発に議論。

ワークショップの合間に名刺交換。分科会は参加者の人脈拡大の場にもなっています。



今回のイベントへの参加者は、ほとんどがREDD+プラットフォーム加盟団体・企業の方々で、モデルプロジェクト対象地であるインドネシアやラオスへも視察などで行った経験があるという人が少なくありませんでした。実際に進展しているモデルプロジェクトに対するビジネスプランを考えるワークショップは、かなり真剣な雰囲気で盛り上がりました。

ワークショップは2段階に分けて実施。前段のワークショップでは各モデルプロジェクトについてのビジネスプランを提示して、後段のワークショップでその課題や実現可能性などについて、さらに議論を深める内容となりました。

各グループごとに、発表された内容を簡単にご紹介しておきましょう。

まず、ルアンパバーン県(ラオス人民民主共和国)のケースで議論したグループでは、代替生計手段として世界遺産都市であるルアンパバーン市街での観光ビジネスの可能性を背景にした「農産物や民芸品のフェアトレード」や「エコツアー」の他、「ラオス松等の現地希少種のサスティナブルな林業開発」などを提案。代替生計の導入にあたり、日本国内あるいは現地での流通や販売網を開拓していくために民間企業のノウハウやネットワークを活用していく必要性が指摘されました。ほかのグループの参加者から、商社等の民間企業が参入するインセンティブとするために「ラオス松を木材として利用する際にクレジットを付与できないか」と質問が出るなど、アイデアによってREDD+ の可能性がさらに広がることを思わせる内容でした。

中部カリマンタン州(インドネシア共和国)のモデルプロジェクトを議論したグループは、ガム原料のジェルトンや高品質なラタンなど現地の特産を活用した産業の成長を計るためにも、「CSRかビジネスか」を明確にした事業プランが大切となることを提言。自然火災が問題となっている広大な泥炭湿地林においては、消防技術などの支援をしつつこれを保護しながら、既に森林ではない未利用地を有効活用してバイオマスなどの再生可能エネルギー燃料を生産するといったビジネスの可能性を探るべきという見方が示されました。

西カリマンタン州(インドネシア共和国)の事例を議論したグループは、オランウータンが生息する森であることを活かしたエコツーリズムの開発や、現地の豊かな森林や原料を活用した高付加価値の製品開発によるブランディングの推進、製造業の工場誘致による雇用の創出といったアイデアが示されました。参加者からは民間企業が参入するためには現地の受入体制整備、情報収集、現地人材の能力開発が重要であり、JICA事業との連携の必要性についても言及されていました。さまざまなジャンルの製品やサービスに日本的な「高品質」を実現するためにも、幅広い企業や団体などの力が必要で、だからこそ官民連携で取組を進めるREDD+ には大きな可能性があるといえるでしょう。

COP21が開催されて、いよいよ2020年に向けてREDD+ も次のフェーズに入っていきます。官民連携でREDD+ への取組を進める『森から世界を変える REDD+ プラットフォーム』にとって、今回のように具体的なビジネスプランを考える催しは、とても有意義なものとなりました。次回のビジネスモデル分科会にもご期待ください。

▲ TOP