事例紹介

ラオス・ルアンパバーン県における焼畑耕作の抑制によるR E D D +プロジェクト
実施団体:学校法人早稲田大学、丸紅株式会社、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、一般社団法人日本森林技術協会、ラオス国立農林業研究所

ラオスの「ルアンパバーン」という町をご存じでしょうか。ラオス北部の森の中に広がる古都で、1995年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。現在のラオスの首都はビエンチャンですが、ルアンパバーンは14世紀ごろから王国の城下町として栄えてきた歴史があり、フランス領時代の建物を含めて、伝統的な美しい町並みが残っています。

この町を中心とした「ルアンパバーン県」で実施されている「ルアンパバーン県における焼畑耕作の抑制によるREDD+」が、環境省の平成27年度『二国間クレジット制度を利用したREDD+プロジェクト補助事業』に採択されました。同県では2009年から2015年までJICA(国際協力機構)の「森林減少抑制のための参加型土地・森林管理プロジェクト(PAREDD)」が実施され、現在は学校法人早稲田大学、丸紅株式会社、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、一般社団法人日本森林技術協会、ラオス国立農林業研究所がJICAプロジェクトの成果を引き継いで、具体的な事業が進められています。

この地域に広がる豊かな森も、焼畑移動耕作による森林減少が大きな課題となっています。現地のコミュニティと密接に連携しつつ、過度な焼畑移動耕作を抑制するため、代替となる生計手段の導入と、衛星画像などを活用した温室効果ガス吸収及び排出削減の効果測定、そしてREDD+を円滑に実施するための戦略づくりや体制構築がプロジェクトの大きなテーマです。

代替生計手段に必要となる農業技術の導入など、具体的な方策を地域住民が参加型で協議していくための組織がすでに整備され、現地のコミュニティと密接に連携する関係が構築されていることが、このプロジェクトの大きな特長となっています。焼畑移動耕作は世界各地で森林減少の要因となっていることもあり、REDD+全体のフラッグシップモデルになることを目指しています。

現在、先行して進められている村落(約3万ヘクタール)におけるプロジェクトでは、年間に約14万トンの温室効果ガス排出削減量が見込まれています。ルアンパバーン県全体ではおよそ200万ヘクタールの森林があり、将来的に準国ベースのREDD+事業まで拡大すれば、さらに大きな削減量を獲得するポテンシャルを秘めています。

今、このプロジェクトではさらなる民間企業や団体の参入を募っています。排出削減クレジット獲得の可能性とともに、世界遺産を有するルアンパバーンの観光地としての価値は、このプロジェクトの大きな魅力です。地域資源を活用した農業ビジネスや、ルアンパバーンの町と森を絡めたスタディツアーなど、さまざまな企業が自社の強みをいかしたビジネスを生み出せる可能性があるのです。また、メコン川上流域での森林保全は、遠くベトナムやカンボジアなど、下流域にある国々の社会や経済、環境にも多大な恩恵を施します。つまり、CSRの観点からも大きな魅力があるといえます。

新規ビジネス開発から、CSRとしての資金提供まで、REDD+に企業や団体が関わる「カタチ」はいろいろですが、REDD+プロジェクトとしての基盤整備が整っているこのプロジェクトは、これから新たにREDD+に参加しようとする企業にとって、とても魅力的なケースです。

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