○技術協力に関する日本国政府と東南アジア諸国連合との間の協定
(令和元年5月27日外務省告示第19号)
日本国政府及び東南アジア諸国連合(以下「ASEAN」という。)は、日本国政府及びASEAN(以下それぞれを「締約者」といい、併せて「両締約者」という。)の間に存在する友好関係を技術協力の促進により一層強化することを希望し、日本国及びASEAN地域全体の経済開発及び社会開発を促進することにより得られる相互の利益を考慮し、全ての国の独立、主権及び平等の相互尊重の原則を想起して、次のとおり協定した。
第1条 定義                                 
この協定の適用上、
 「ASEAN構成国」とは、ブルネイ・ダルサラーム国、カンボジア王国、インドネシア共和国、ラオス人民民主共和国、マレーシア、ミャンマー連邦共和国、フィリピン共和国、シンガポール共和国、タイ王国及びベトナム社会主義共和国をいう。
 「ASEAN施設」とは、ASEAN事務局及び第三条に規定する取決めによって規律される技術協力の個別の計画を実施するためにASEANがASEAN施設として指定する施設又は機関をいう。
 「JICA」とは、独立行政法人国際協力機構をいう。
 「技術訓練」とは、第三条に規定する取決めによって規律される技術協力の個別の計画を実施するためにJICAがASEAN構成国の国民に対して行う研修をいう。
⒠  「JICA専門家」とは、第三条に規定する取決めによって規律される技術協力の個別の計画を実施するためにJICAが特定の期間派遣する者をいう。
 「日本国の調査団」とは、第三条に規定する取決めによって規律される技術協力の個別の計画を実施するため、ASEAN地域における経済開発及び社会開発に係る計画に関する調査を行うことを目的としてJICAが特定の期間派遣する日本国の調査団をいう。
第2条 技術協力の促進
両締約者は、それぞれの政策及び計画を十分に考慮して、両締約者間の技術協力を促進するよう努める。
第3条 別個の取決め                                                                                       
この協定に基づいて行われる技術協力の個別の計画を規律する別個の取決めは、両締約者の権限のある当局の間で合意される。日本国政府の権限のある当局は外務省であり、ASEANの権限のある当局はASEANによって指定される。当該取決めには、関係するASEAN施設による運用上又は資金上の約束を含めることができる。ただし、当該取決めが、関係するASEAN構成国の法令及び政策並びに当該ASEAN施設の資源の利用可能性及び能力の範囲内のものであることを条件とする。
第4条 技術協力の形態                                                                                      
1 次の形態による技術協力は、日本国の法令及び前条に規定する取決めに従い、日本国政府の権限のある当局の承認を得て、JICAにより、JICAの負担で行われる。
(a)  技術訓練を提供すること。
(b)  JICA専門家をASEAN施設に派遣すること。
(c)  日本国の調査団をASEAN施設に派遣すること。
(d) 設備、機械及び資材をASEAN施設に供与すること。
(e)  両締約者の権限のある当局の間の相互の同意によって決定されるその他の形態の技術協力をASEAN施設に対して行うこと。
2 1に規定する技術協力の個別の計画であってASEAN構成国において行われるものは、当該ASEAN構成国の法令に従って実施される。
第5条 経済開発及び社会開発への寄与                                                                            
ASEANは、前条に規定する技術協力の結果として取得された技術及び知識並びに供与された設備、機械及び資材がASEAN地域全体の経済開発及び社会開発に寄与すること並びに軍事目的に使用されないことを確保する。
第6条 特権、免除及び便宜                                                                                   
ASEANは、日本国政府及びASEAN構成国の政府の要請があった場合には、当該ASEAN構成国において技術協力の個別の計画を実施するため、特権、免除及び便宜に関する日本国政府と当該ASEAN構成国の政府との間の別個の取決めの締結を促進する。ただし、当該締結が日本国及び当該ASEAN構成国の法令及び政策に従って行われることを条件とする。
第7条 供与される設備、機械及び資材の所有権                                                                       
1 JICA、JICA専門家又は日本国の調査団がASEAN施設に対して設備、機械及び資材を供与する場合には、当該設備、機械及び資材は、次のいずれかの時にASEANの財産となる。
(a) 輸入については、陸揚港において保険料及び運賃込みの条件でASEAN施設に引き渡された時
(b)  現地購入については、ASEAN施設に引き渡された時
2 ASEANは、両締約者の権限のある当局の間に別段の合意がある場合を除くほか、1に規定する設備、機械及び資材が第三条に規定する取決めに定める目的のために使用されることを確保する。
第8条 連絡部局                                                                                          
各締約者は、両締約者間の連絡を円滑にするために連絡部局を指定することができる。
第9条 協議                                                                                            
両締約者は、適当な場合には連絡部局を通じて、この協定から又はこの協定に関連して生ずることのあるいかなる事項についても相互に協議する。
第10条 知的財産権                                                                                        
両締約者は、この協定に基づく技術協力の個別の計画を実施する過程で知的財産権が創設された場合において、必要なときは、知的財産権の帰属に関する問題について協議する。
第11条 秘密性                                                                                           
各締約者は、その法令、手続及び規則に定める範囲内で、この協定を実施する過程で他方の締約者が秘密のものとして提供する情報の秘密性を保持する。
第12条 紛争の解決                                                                                        
この協定の解釈、実施又は適用に関する両締約者間のいかなる意見の相違又は紛争も、専ら友好的な協議及び交渉を通じて両締約者によって解決される。
第13条 見出し                                                                                           
見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この協定の解釈に影響を及ぼすものではない。
第14条 改正
1 いずれの一方の締約者も、この協定を改正するため、いつでも他方の締約者との協議を要請することができる。
2 この協定は、両締約者の書面による相互の合意によって改正することができる。
第15条 終了
1 いずれの一方の締約者も、他方の締約者に対し、この協定を終了させる意思を終了が予定される日の少なくとも六箇月前までに書面により通告することによって、この協定を終了させることができる。
2 この協定の終了は、両締約者の相互の同意により別段の決定が行われる場合を除くほか、実施中の技術協力の個別の計画が完了する日までの間当該計画に影響を及ぼすものではない。
第16条 効力発生
1 この協定は、署名の日に効力を生ずる。
2 この協定は、この協定の効力発生の後五年の期間効力を有するものとし、その後は、前条の規定に基づいて終了しない限り、引き続き効力を有する。
3 この協定は、必要な場合には、この協定の効力発生の後五年ごとに両締約者による見直しの対象となる。
以上の証拠として、下名は、それぞれの締約者から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
 二千十九年五月十三日に東京で、英語により本書二通を作成した。
 日本国政府のために 
   河野太郎
 東南アジア諸国連合のために 
   リム・ジョクホイ