神保 康広(じんぼ やすひろ)さん 青年海外協力隊 短期 バスケットボール(車いすバスケットボール) 派遣国:マレーシア 派遣期間:2006年4月~5月、2006年7月~12月

※派遣名称は派遣当時のものです。

障害当事者として現地の同志と向き合った時間が、
将来の仕事への原動力となった

2020.01

コーチではなく障害者の先輩として、
選手らと対等に向き合った日々

教会のバリアフリー化を記念して行われた会にて

18歳の頃に車いすバスケットボールをはじめ、6度の全国制覇を果たしました。30歳の頃、障害者スポーツの先進国であるアメリカに留学し、その後は選手としてアメリカで活動しました。青年海外協力隊に参加するにあたり、僕自身に不安はありませんでしたが、障害のある人がマレーシアで青年海外協力隊として活動するのは初めてだったので、最初の派遣では1ヶ月間で現地の状況を把握し、2度目は5ヶ月間の短期派遣となりました。

任地のマレーシアでは、車いすバスケットボールを通じて障害者スポーツの普及を行うとともに、国際大会に向けたナショナルチームの指導も行いました。最初は練習の時間に遅れてくるなど不安な点もありましたが、障害がありながらもスポーツに挑戦するからには、「これから何かをしていこう」という情熱があるはずだと信じていました。何とかして、彼らの情熱を引っ張り出そうと、必死に取り組んだことを覚えています。

一方で、彼らは家に帰ったら車椅子も仕事もなく、生活がままならない状態でした。その中で自分がやるべきことは、障害者の先輩として「これまでどのように生きてきたか」を伝えることだとも感じていました。例えば、仕事や結婚について。自分自身がかつて彼らと同じように悩んだ経験から、同志として同じ目線で話す時間を大事にしました。その甲斐もあり、任期が終わる頃には、数人が日系企業で働くチャンスを手にし、現在では、家庭を持った人や会社を興した人もいます。自分なりに考えて、行動に移してくれたことが嬉しかったです。

今もマレーシアに行けば、当時の選手が必ず会いに来てくれます。アメリカやマレーシアで知り合った人が世界中にいて、友達付き合いが続いている。そういう人とのつながりや経験は、お金では買えない価値だと思います。

充実感を感じる一方で、
続けることの難しさを実感

任期満了後に現地に残るという選択肢もありましたが、自分が今後ボランティアだけで生活をしていくことは考えにくかったので、どこかで区切りをつけなければと思っていました。日本の車いすスポーツ競技者は、多くの場合、社会人として自立をしてからスタートしています。しかし、マレーシアの彼らのように生活もままならない状態で、援助を受けながらスポーツを続けていては、後々苦しい思いをすることになるだろうと感じていました。ですから、一時的なボランティアとしてではなく、持続可能なビジネス活動で貢献したい。それが当時芽生えた考えでした。

スポーツの力で日本から海外へ
ビジネスを通じて支援を続けたい

区民の相談にのる門脇さん

帰国後は、車椅子メーカーである松永製作所に入社しました。僕は車椅子に乗っているので、車椅子に乗る人の気持ちも、どんな車椅子が喜ばれるかもわかります。それで、当時はスポーツ用車椅子に参入していなかった松永製作所に目をつけました。「ゼロからのスタートの方がおもしろいだろう」と、自ら社長にプレゼンしたのです。「スポーツを通じて松永の車椅子を世界に広め、それと絡めてさまざまな活動をしていきたい」、日本だけでなく海外にも販路を広げるには、自分の経験が生きると考えました。

入社初年度には、思い入れのあったマレーシアに進出しましたが、大失敗に終わりました。その反省もあり、10年近く日本で仕事に没頭しました。2015年頃、かつての選手仲間がイギリスでコーチに就任したこともあり、意を決してイギリスへ。幸運にも多くの選手が「松永の車椅子はいい」と言ってくれたことから、イギリス車いすバスケットボール代表チーム(BWB)の目に留まりました。現在は、全選手に乗っていただけるよう、2020年のパラリンピックに向けて調整を続けています。その後はヨーロッパでの販路拡大に向けて、僕が率先して動くつもりです。今回はボランティアではありませんが、松永製作所の社員として自社の車椅子を広めながら、障害者のエンパワーメントと社会参加の推進に取り組んでいきたいと思います。

JICA海外協力隊で得たもの

視野の広がり

協力隊で現地の人の苦しみや課題に目を向けられたからこそ、「継続性のある活動を通じて、状況を変えていきたい」という想いが生まれました。それが、今の自分の仕事につながっています。今後、会社と一緒に障害のある方をサポートし、最終的には、障害者スポーツを通じて彼らの自立を促すことができれば素晴らしいと思います。それによって私たちの車椅子を使ってくれる人が増えれば活動も継続でき、Win-Winの関係を築いていけます。

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

青年海外協力隊は、日本ではできない経験をする絶好のチャンスです。障害のある方が休職や退職をするのは勇気がいることですが、それだけの価値ある体験が待っています。想いがあり、将来の夢や目標にリンクする部分がある方は、ぜひ参加してみてください。世界を見ることで気づくことがたくさんあり、その気付きが次のステップに役立つと思います。

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青年 グローバルキャリア # 経験を生かす # スポーツ # 障害当事者