日本も元気にするJICA海外協力隊 茨城県

関澤 英勝さん

関澤 英勝さん 青年海外協力隊
Hidekatsu Sekizawa

NPO法人つくばフットボールクラブ/
株式会社つくばFC経営企画部

【職場】
茨城県
【職業】
会社員
赴任国
パプアニューギニア独立国
パプアニューギニア独立国
【赴任地】
ウエスタン州キウンガ
【職種】
村落開発普及員(現コミュニティ開発)
【派遣期間】
2009年9月~2011年9月

開発途上国の村落を
発展させた貴重な経験
地域サッカークラブで
再現させようと日々奮闘

新しい世界、新しい興味に向かって行動を起こす“力”。
生まれ持った気質に協力隊経験が加わった時、
それは、多くの人を巻き込みながら環境を大きく変える、新たな“力”になっていく。

違う世界があることを知れば
行って体感してみたくなる
 サッカーを中心とした総合型スポーツクラブのつくばFCで、経営企画部長を務める関澤さん。世界一幸せなクラブづくりを理想に掲げ、日々奮闘している。
 新しい世界、新しい興味に向けて行動を起こすのが関澤さんの気質のようだ。大学時代にサッカーの指導に興味を持ち、ワーキングホリデー制度を活用してニュージーランドへ。「英語力不足で指導は無理」と断られたが、選手としてグランドに入ることを許され、クラブ下部組織の子どもたちを指導した。
 大学卒業後は茨城県内の金融機関に就職するも、仕事に慣れ始めると関澤さんの興味の虫が騒ぎ出した。「日本で働くということが分かってくると、これが世界のスタンダードと思っちゃいけない、違う企業、違うルールを体感したいと思いました」
 自身にショックを与えるには、日本と違うところ、経済レベルの違う途上国に行くのがよいと考え、青年海外協力隊に応募。勤めていた金融機関を退職し、村落開発普及員(現コミュニティ開発)として、南太平洋のパプアニューギニアに派遣された。
違う世界があることを知れば 行って体感してみたくなる
現金収入を増やすこと
簿記を教えることが任務
 村落開発普及員としての活動は、設立間もない農業組合の現金収入を増やし、簿記を教えることだった。任地の主産業である農業は採取が中心。米の栽培も試みてはいたが、精米など手間が掛かることから根づいていなかった。農作物を販売し収人を得ても、管理はずさんで何もしていない人の酒代になっていたことも。
 課題の解決には「頑張る人と有力者を見つけること」が必要と考えた関澤さんは、業種別リーダーの育成をはじめ帳簿の付け方指導、経営指導などを行い、キーパーソンを探した。集客のためにお菓子などを用意したところ、熱心に聞き入る人が増え始め、後には政府関係者や鉱山の経営企画担当、プランテーション実践者などの話を聞く有料制セミナーも開催。参加費は月収の1割近くと、任地の人たちにとっては高額だったが、約40人が参加した。「お金を払えば本気になるだろうという考えもありました。ランなどの花を売るグループは女性が中心なのですが、彼女たちが自分の夫を巻き込み、リードするケースもありました」
 関澤さんの経営センスも光った。任地は鉱山の汚染被害地区で、補償金があることに目をつけたのだ。川を10時間ほど下った市場で収穫物を販売するため、補償金を申請し、舟や発電機、モーターなどを購入した。「いきなりお金やモノを与えることは望ましくないと思われる人もいるでしょう。しかし、途上国に到来する発展の波は止められません。任地の人たちは補償金の存在すら知らなかった。彼らができないことをするのが私たちの使命。何が必要か関係者と一緒に考えて、必要なものを準備する。それがきっかけとなり、その後はやる気のある人が模範となって発展させていけばいい」
 農作物の販路を拡大させるために購入した舟は、病人を街の病院へ運ぶためにも役立てられたという。
つくばFCを人々の交流拠点に
 協力隊活動以外では、任地の人たちとサッカーを楽しんだ。ある時、練習を始めても一向にボールを使う気配がなく、聞けば貴重なボールは試合用に取っておくためだったと知る。関澤さんは自らボールを購入するだけでなく、以前から知り合いだったつくばFCに連絡し、ボールとユニフォームを寄贈してもらった。「自分の足技を見せて、尊敬されたい気持ちもあったんですよ」
 そんな思い出が、関澤さんの人生を変えていく。協力隊経験を経て、より新しい世界、新しい興味に向けて行動する気持ちが更に高まっていたのだ。
 帰国後は民間企業を経て、協力隊時代にお世話になったつくばFCに就職した関澤さんは、水を得た魚のように輝きを増す。チームの試合観客数アップを図る一方、選手の奮起と観客の厳しい目を求めるために有料試合に挑戦し、地域のネットワークづくりに飛び回った。サッカーくじtotoの助成金を活用し、イオンモールつくば敷地内にクラブハウスを完成させたほか、筑波学院大学の人工芝グラウンドを実現させた。「つくばFCはスポーツをしない人にも開かれたクラブです。スポーツを中心に、人々の交流拠点にしていきたいと考えています」
 パプアニューギニアでの経験は、つくばFCを躍進させるとともに、地域を元気にするための大きな原動力となっている。
  • つくばFCに依頼してボールやユニフォームを支援してもらった
    任地ではボール一つも貴重品。思う存分サッカーができるようにと、つくばFCに依頼してボールやユニフォームを支援してもらった。
  • つくばFCに新しい風を吹き込んだ関澤さん
    つくばFCに新しい風を吹き込んだ関澤さん。単なるサッカークラブではなく、スポーツを中心にした人々の交流拠点を目指している。
  • 地域や企業のイベントにも積極的に参加
    地域や企業のイベントにも積極的に参加。サッカークラブはみんなのもの、つくばFCをもっと地域に、世界に広めたいと願っている。
関澤 英勝さんProfile
 茨城県出身。大学時代からサッカー指導に興味を持ち、ワーキングホリデー制度を活用して海外で活動。大学卒業後、金融機関勤務を経て青年海外協力隊に参加。2009年から2011年の2年間、村落開発普及員(現コミュニティ開発)としてパプアニューギニアに派遣。現在は、つくばFCにて経営企画部長として活躍中。
関澤さんへのエール! 先天的な気質プラス
協力隊経験の“力”に期待
 彼が来たことによって、サッカー指導者中心だったつくばFCにビシネスマネジメントの視点が加わったことは心強いですね。コミュニケーション能力が高く、周りの空気を和ませるのは彼の才能ですが、協力隊参加で自信をつけたのではないでしょうか。多岐にわたる人たちとコミュニケーションを築き、今では社会人クラスや知的障がい者のサッカー教室にも多くの参加者が集うようになっています。
NPO法人 つくばフットボールクラブ理事長 株式会社つくば FC代表取締役 石川 幀之助さん
NPO法人 つくばフットボールクラブ理事長 株式会社つくば FC代表取締役
石川 幀之助さん
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