日本も元気にするJICA海外協力隊 石川県

宮本 敬介さん

宮本 敬介さん 青年海外協力隊
Keisuke Miyamoto

金沢市文化スポーツ局文化政策課主査

【職場】
石川県
【職業】
市職員
赴任国
ケニア共和国
ケニア共和国
【赴任地】
コースト州キリフィ県キリフィ
【職種】
村落開発普及員
【派遣期間】
2012年1月~ 2014年1月

与えられた環境で結果を出すこと
培われた行動力を市政に活かして

何もない過酷な環境で、出来ない言い訳を考えるのは簡単だ。
しかし、どんな環境においても目標の達成を信じ、工夫を凝らせば活路は見いだせるもの。
協力隊の2年間で体得したアグレッシブな行動力は、市政の発展に大きく役立っている。

世界の貧しい子どもたちを支援したい
 20歳から27歳までにかけて、世界50カ国を渡り歩いてきた宮本さん。異文化に触れながら頻繁に目にするようになったのは、貧困が及ぼす格差社会だったという。「中東では貧しくて学校に行けない子どもたちに、アジアでは路上生活している子どもたちに出会い、胸が痛みました。少しでもこうした子どもたちの手助けが出来ないかと考え、青年海外協力隊への参加を決意しました」
 27歳の時に金沢市役所へ就職。多忙な日々を過ごす中でも夢をあきらめなかった。​宮本さんは、行政職員の「自己啓発休業」を活用。金沢市役所では初となる、職場に籍をおいたまま協力隊参加する「現職参加」を実現させた。
世界の貧しい子どもたちを支援したい
人間本来の持っている“力”を
引き出すことが役目
 派遣されたのはアフリカのケニア。村落開発普及員として、キリフィ県のジェンダー社会開発事務所を拠点に、コミュニティグループのマイクロファイナンス(貧困層に対する少額無担保融資)返済支援活動を担当することになった。しかし、現地ではオートバイが使用禁止であるため活動が制限。遠くに行けないなら近くで出来ることをしよう、そんな発想の転換により、あらためて近隣住民の低収入の実態と生活の厳しさを認識し、収入向上と生活改善を繋げる活動を始める。
 ある学校では机や椅子がないため、住民から宮本さんに机などを寄付してほしいと要請された。宮本さんは「自分にはお金はないが、皆が何かを作ってそれを売り、その代金で机や椅子などを購入することならいくらでも協力できる」と伝え、貝殻のネックレスづくりに挑戦。近くの海辺で貝殻を拾い、漂白剤で汚れをとり、ニスで光沢を出すなど、商品価値を高めるアドバイスをした。結果、ネックレス販売は好調に進み、机をはじめ黒板、椅子20個以上を購入して教育環境を整えることができた。
 また、薪拾いなどの手伝いで学校に行けない子どもたちが多くいたため、改良かまどの普及を展開。従来の三つ石かまどに比べて改良かまどは熱効率がよく、薪が少なくて済み、結果として薪拾いの時間が4時間から2時間に半減し、子どもたちは学校に行けるようになった。「『援助』とは物を与えることではなく、人間の本来持っている力を引き出すこと、これが協力隊として一番の『援助』なんだな、と強く実感しました」
与えられた環境で
いかに結果を出せるか
 帰国後、市役所に復帰して1年後に現在の文化スポーツ局に配属となり、「風と緑の楽都音楽祭」のディレクターに就任した。この音楽祭は、一流の世界的奏者の演奏だけでなく2千名以上のアマチュア音楽家も参加する「市民参加型プログラム」もあり、200回以上の公演を各地で行う大々的なもの。
 「聴衆である市民が如何に楽しめるか、これを第一に取り組みました」障害者や高齢者施設での公演では、クラシック​だけでなく高齢者に馴染みのある曲を、サッカー会場では凱旋行進曲などサッカーファンが楽しめる曲を選曲。この取り組みは大成功となった。
 また、音楽祭の期間以外には国際交流課に属し、全国の留学生約300名を石川県に招く「JAPAN TENT」を担当。留学生が県内の一般家庭にホームステイし、実生活を体験することで日本文化に触れるとともに、ホストファミリーも外国人との交流や自らの故郷を再発見することを狙いとしている企画だ。宮本さんはJICA北陸との共同で、留学生や県内大学生、協力隊OBらとワークショップを実施。「ボランティアスピリットとは」「世界が100人の村だったら」などのテーマでトークセッションを行い、参加者からは「世界の見方が変わった」などの意見が多く寄せられたという。
 「協力隊で学んだのは『与えられた環境でいかに結果を出せるか』が大切だということ。何もない過酷な環境で出来ない言い訳を考えることは簡単ですが、どんな環境においても目標の達成を信じ、工夫を凝らして取り組めば、プロジェクトを成功へと導いていけると思います」と語る宮本さん。今では、協力隊経験を仕事に活かすことが最大の使命と感じているという。
 「色々なことにチャレンジし、失敗を繰返し、それを乗り越えていく中で自らの成長がある。2年間の協力隊活動は我慢と忍耐の連続でしたが、その先には成功と達成感が必ずあります。これは今の仕事にも繋がるものですね」宮本さんの挑戦はこれからも続く。
  • 市民のニーズを吸い上げて作り上げた「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」。魅力的なプログラムに、今では日本中からファンが駆けつける。
    市民のニーズを吸い上げて作り上げた「いしかわ・金沢風と緑の楽都音楽祭」。魅力的なプログラムに、今では日本中からファンが駆けつける。
  • 約300名の留学生が参加する「JAPAN TENT」。ホストファミリーや大学生たちのコーディネーター役としても奔走する。
    約300名の留学生が参加する「JAPAN TENT」。ホストファミリーや大学生たちのコーディネーター役としても奔走する。
  • 「世界に目を向けるきっかけになれば」そんな思いから「JAPAN TENT」では協力隊OBらとワークショップを開催したところ、参加者イチ押しの人気企画に。​
    「世界に目を向けるきっかけになれば」そんな思いから「JAPAN TENT」では協力隊OBらとワークショップを開催したところ、参加者イチ押しの人気企画に。​
宮本 敬介さんProfile
 石川県出身。20 ~ 27歳の時に世界50カ国を訪問したのち、金沢市役所に就職。3年後に現職参加制度を利用して青年海外協力隊に参加。2012年1月からケニアに村落開発普及員として2年間活動し、帰国後、市役所に復職。現在は、文化スポーツ局文化政策課で「風と緑の楽都音楽祭」ディレクターを、また国際交流課で「JAPAN TENT」を担当する等、2つの課を兼務している。
宮本さんへのエール! 国際化が進む金沢市のリーダーとして更なる活躍を
 宮本君は金沢市役所における協力隊現職参加制度の第1号者です。海外生活を経験したことで更に視野が広がり、また現在の音楽祭や「JAPAN TENT」の仕事にも、現地で村人をまとめてきたリーダーシップが遺憾なく発揮されているのが良く分かります。金沢市では、外国人観光客が増加し、国際化が身近に感じられるようになっています。宮本さんに続く、市職員の協力隊参加を促していきたいですね。
金沢市文化スポーツ局 文化政策課 課長 新保 博之さん
金沢市文化スポーツ局
文化政策課 課長
新保 博之さん
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