日本も元気にするJICA海外協力隊 香川県

田村 美津子さん

田村 美津子さん
Mitsuko Tamura
青年海外協力隊シニア海外ボランティア

ヒューマンリング協同組合職員

【職場】
香川県
【職業】
組合職員
赴任国
マラウイ共和国
マラウイ共和国
【赴任地】
リロングウェ県ナミテテ/
カスング県サンテ
【職種】
幼児教育/村落開発普及員
【派遣期間】
2010年1月~2012年7月/
2014年6月~2015年4月

相手の立場になって考え、接していく姿勢
技能実習生を
日本のファンに変えていく

言葉が通じず、自身の考えが理解されない。そんな途上国での経験があるからこそ、不安や寂しさを抱える
技能実習生にとって本当に必要なものが分かる。海外協力隊で培われた「相手の立場になって考える」マインドは、
技術を学ばせるだけではない、日本のファンを増やすために活かされている。

聞いたこともない国での活動が
人生を変えていく
 「えー!みんなそう考えているの?!」日本人講師の驚きの声は、インドネシアからの技能実習生たちにとって爆笑の誘い水だ。日本人経営者の立場になって会社経営を考えるプレゼンテーション。つたない日本語を駆使しつつ、「私だったらこうします」と楽しそうに語る実習生に温かい眼差しを注ぐのは、青年海外協力隊OGの田村美津子さん。インドネシアやベトナムからやってくる実習生の受入れから日本語指導、生活面のフォロー、はたまた研修先企業との折衝まで、幅広い役目を担っている。
 田村さんがこの仕事に就いたのは1年前。当時は、国際協力や途上国理解を普及させる仕事をしていたが、代表理事の「日本人も実習生も対等の関係であるべき、実習生事業を日本のファンを増やす事業にしていきたい」という理念に同感、迷うことなくこの道に飛び込んだ。本人をそうさせたのは、寝ても覚めてもやまない“マラウイ愛”だ。故郷である四国の小さな町にも少子高齢化や過疎化、グローバル化の波が押し寄せる今、一見関係のないように見える、協力隊員として過ごしたアフリカ・マラウイ共和国での経験が大きく役立っているという。
 保育分野で14年にわたるキャリアを積んでいた田村さんは、指導経験を地元の子どもたちに還元しようと帰郷。グローバル化の時代、子どもたちをサポートするには自身に海外経験が必要と考え、協力隊に応募した。「世界を見てみたい、世界の子どもたちの役に立ちたい、そんな思いを胸にいざ応募したら聞いたことがない国名、どこにあるのか慌てて世界地図で探しました(笑)」
 首都にほど近いナミテテという町が活動拠点。現地NGOが推進する幼児教育について、指導者の育成や母親への育児指導が求められていた。着任当初は緊張と不安で人間関係に苦労したが、半年が過ぎると「ナミテテに来てよかった」と思う自分がいた。
 「日本人からすると、マラウイは地下資源があるわけでもなく何もない国です。それでは強みは何かと考えた時、この国には“人”という素晴らしい財産がたくさんあることに気づかされました」いつでも、どこでも、誰もが優しく声をかけ合い、貧しくても笑顔を絶やさずに家族を大切にするマラウイの人たちを見て、活動にもその特性を活用。「教師や母親には、“遊び”を通して発育や個性を伸ばす、興味を促して体験を増やす、という意識がなかったため、教える側も楽しみながら出来る教育環境を作りました」
 以後、“遊びながら学ぶ”をモットーに活動を展開。任期後半では、子どもの教育にお金を使えるよう母親学級で手芸を指導。現地のカラフルな布を使ったコースターやポーチを制作・販売するまでになった。
聞いたこともない国での活動が人生を変えていく
グローバル時代、
垣根を外すのは“人”
 帰国後、シニア短期ボランティアとして再度マラウイへ。現地特産品である蜂蜜のブランド化をはじめ、ナミテテの母親たちを集めた手芸グループ「ナミテテマザーズ」を結成、現地で小物の商品化も進めてきた。
 こうした、寝ても覚めても“マラウイ愛”という強い想いはどこから来るのか。「協力隊に参加することで対応力や工夫力が向上しましたが、何より大きかったのは新しい“自分”を発見できたこと。これを教えてくれたのがマラウイであり、愛情はそれに対する感謝の気持ちですね」協力隊経験を通じて、違いやハプニングを楽しめるようになり、フラットな基準や価値観を持てるようになったという田村さん。ありのままの自分自身を認められるようになり、家族を思いやる気持ちも強くなった。
 「協力隊時代、私は言語習得がとても苦手でしたので、実習生の苦労や寂しさが分かります。マラウイの人たちが私に声をかけてくれたように、私も東南アジアの実習生に声をかけよう。どのような単語やフレーズを学びたいか、伝えたいという思いをどうすれば持ってもらえるのか。相手の立場になって考えれば出来ることはたくさんあります」
 マラウイでの経験から生み出された“遊びながら学ぶ”指導は今も健在。瀬戸内海を望む研修室からは、東南アジアの若者たちの笑い声がいつも溢れている。朗らかな顔の実習生に「ウチの子たちは本当にイイ子なんですよ」と代表理事も笑みが絶えない。
 「協力隊での経験を活かして実習生を支援していきます」笑顔で語る田村さんの取り組みは始まったばかりだ。
  • 香川名物のうどん作りに挑戦する実習生たち
    香川名物のうどん作りに挑戦する実習生たち。母国料理を作り合うなど、研修には異文化を学ぶ機会も盛り込んでいる。
  •  「実習生には日本のファンになってもらいたい」そんな思いを胸に、笑い声の絶えない研修を日々行っている
    「実習生には日本のファンになってもらいたい」そんな思いを胸に、笑い声の絶えない研修を日々行っている。
  • 実習生が能動的に学べるよう、様々な工夫を凝らして行われる日本語研修
    実習生が能動的に学べるよう、様々な工夫を凝らして行われる日本語研修。相手の立場になって考えられるのは、協力隊経験があってこそ。
田村美津子さんProfile
 香川県出身。14年にわたり幼児教育に携わり、グローバル時代の教育には海外経験が必要との考えから協力隊参加。2010年より幼児教育隊員としてマラウイに派遣。帰国後、シニア短期ボランティアとして同じくマラウイに村落開発普及員として派遣されマラウイ特産品の商品化や女性の収入向上を目指した小物制作などを推進。
 2018年よりヒューマンリング協同組合に入社し、技能実習生の受入れ対応や生活フォロー、日本語指導はじめ派遣先企業との交渉等を担当。
田村さんへのエール! 技能実習制度の意味を変える
大きな可能性を秘めた人材です
 田村さんの一番の特徴は「根の優しさ」。日本で学ぶ技能実習生たちにとって不安や寂しさは非常に大きい、そんな彼らを優しく包み込む包容力があります。私たちは、実習生が帰国する時にはもっと日本を好きになってほしいと願っています。この制度は日本のためだけでは意味がない。もっと幅広い動きになっていく中で、田村さんは実習生との関りを原点に、事業全体を取り仕切っていく人材に成長するだろうと大きく期待しています。
ヒューマンリング協同組合 代表理事、宮内 和彦さん
ヒューマンリング協同組合 代表理事
宮内 和彦さん
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