日本も元気にするJICA海外協力隊 鹿児島県

後藤 まどかさん

後藤 まどかさん 青年海外協力隊
Madoka Goto

一般社団法人南さつま市観光協会 スタッフ

【職場】
鹿児島県
【職業】
団体職員
赴任国
フィリピン共和国
フィリピン共和国
【赴任地】
ボホール州タグビララン市
【職種】
観光
【派遣期間】
2014年3月~2016年3月

フィリピンで従事した観光地のサポート
故郷を見直すきっかけに

旅行会社でキャリアを積み重ねながらも、故郷には「何もない」と思っていた。
しかし、フィリピンで人と地域の繋がりを知り、今までにない視点が芽生えた。
2年後、故郷に戻った彼女の目に見えたのは、輝かしい地元の“宝物”だった。

28歳で初めて知った協力隊
試したかった自分の力
 「魅力あふれる南さつまの観光を楽しみながら一緒に盛り上げてくれる、豪腕ピッチャーのような選手にぜひ来ていただきたいです!」
 移住者を募集する地域を“球団”、移住希望者を“選手”と見立て、プロ野球のドラフト会議のように地方移住を促進するイベント『九州移住ドラフト会議2021』。ひときわ明るい声で地元をアピールするのは、鹿児島県南さつま市の“球団”『すなのまちキンカンズ』代表の後藤さんだ。今でこそ観光協会のスタッフを務めるが、「地元が観光地だなんて、昔は思ってもいませんでしたね」と笑う。そんな彼女の視点を変えたのが、青年海外協力隊での経験だった。人に喜んでもらえる仕事がしたいと、最初に選んだ福岡県の旅行会社では9年間働いた。28歳の時、友人から協力隊について教えられ、“観光”という職種があることを知る。「自分の力を試してみたいと思いました」チャレンジ精神に火が付き、参加を決意。フィリピンでも有数の観光地、ボホール島の州政府観光センターで活動することになった。
28歳で初めて知った協力隊試したかった自分の力
気づかされた大事なこと
人と人が支え合う関係
 現地での活動は、エコツーリズム推進のサポートだった。現地スタッフとともに、自然が残る写真映えスポットを探したり、時にはジャングルをかき分けて滝を探しに行くこともあった。そんな中、地元大学のインターンとして観光センターで働く学生たちの中に、島から外に出たことがなく、旅行経験もない人がいることを知った。「ボホール観光の“おもてなし”を担っていく彼らに、旅行の楽しさを経験させてあげたかったんです」思いついたのは『異文化交流フェスティバル』、日本への“疑似旅行”だった。協力隊の仲間をはじめ、職場や現地JICA事務所にも協力を呼びかけ、大学の体育館に書道や藍染めなどの日本文化体験コーナーを設置。日本の『一村一品』について紹介するパネル展示なども行い、約700人を集客した。「一人の力ではできなかったですね。多くの人に支えられていることを知る、貴重な経験でした」
 また、自然災害に対する観光事業者の意識改革も行った。観光客を受け入れる島だからこそ、災害に強い観光地でなくてはいけないと考えたからだ。防災分野の仲間の力も借り、ホテルなどの災害対策の実態調査を行ったほか、現地防災局と観光センターとの合同で、事業者向けの防災セミナーを実施。年齢や立場を超えて、多くの人と協力し合いながら防災や減災の意識を高め、考えを浸透させていった。
 「フィリピンでは、日本で働いているときには見落としていた、人と人とが支え合う関係のありがたさに気づかされました」
再認識した故郷の“宝物”
協力隊経験を活かし磨いていく
 帰国後、故郷に戻ると、以前とは異なる風景が見えた。日本三大砂丘「吹上浜」やマリンスポーツ、海や山の幸、そしてそれを支える真心溢れる人たち。外の世界を知ることで、南さつま市の宝物を再認識した後藤さんは、地元の南さつま市観光協会で働き始めた。
 現在の仕事でも、高校生などの若者がイベントに参加しやすい環境づくりに取り組んでいる。例えば、南さつま市で開催する日本最大級の砂のイベント『吹上浜砂の祭典』では、地元高校生に主体的に企画・運営に携わってもらうプロジェクトを実施。地元の食材で彩られたホットドッグや砂を活かした体験メニューなどを実現させ、彼らに達成感と自己成長を感じてもらえるよう工夫した。「家族など来場者も増え、何より嬉しいのは、彼らの自信に繋がること。みんなにとってWin-Winの企画になりました」2020年は、新型コロナウイルス感染症の拡大でイベントが中止になったものの、『吹上浜砂の祭典の思い出』『こんな砂像を見てみたい』といったメッセージを募集し、地元を盛り上げている。
 また、南さつま市の季節ごとの特産品を発送する『エールギフト』の商品開拓も担当する。旬の有機野菜や焼酎、金柑ジャムなど、めぼしい商品を見つけては、生産者に協力のお願いに行く。フィリピンで取り組んでいた地域資源の掘り起こし経験が、ここでも活かされているのだ。『エールギフト』は、コロナ禍で販売機会を失った卸業者や帰省できない地元出身者にも好評で、人気商品になりつつある。
 「フィリピンでは、仕事でもプライベートでも、地域と人との繋がりを強く感じました。協力隊で学んだことを、これから故郷に還元していきたいですね」
  • 地元高校生が企画・運営に携わった『吹上浜砂の祭典』。参加者が能動的に取り組めるような仕掛けを作り、人気を博すイベントとなった。
    地元高校生が企画・運営に携わった『吹上浜砂の祭典』。参加者が能動的に取り組めるような仕掛けを作り、人気を博すイベントとなった。
  • 人生の先輩との交流を通じて、高校生が未来を疑似体験するイベント『未来クルーズ !』。後藤さんは、多様性を知る「きっかけづくり」にも積極的だ。
    人生の先輩との交流を通じて、高校生が未来を疑似体験するイベント『未来クルーズ!』。後藤さんは、多様性を知る「きっかけづくり」にも積極的だ。
  • 女性消防団の一員として、被災地復興支援上映会の企画に携わった後藤さん。防災活動にも加わり活動の幅を広げている。
    女性消防団の一員として、被災地復興支援上映会の企画に携わった後藤さん。防災活動にも加わり活動の幅を広げている。
後藤 まどかさんProfile
 鹿児島県出身。福岡県の旅行会社に9年間勤務した後、青年海外協力隊に参加。フィリピン中部のボホール島に観光隊員として派遣され、エコツーリズムのPRや観光客の防災などに携わる。帰国後、一般社団法人南さつま市観光協会のスタッフとして勤務。地元名所でのイベントをはじめ、季節ごとの旬の特産品を詰め合わせた『エールギフト』の企画・販売などを担当。
後藤さんへのエール! 地元に溶け込みながら、観光を盛り上げてくれています
 ふらっと協会に遊びに来た時、たまたまスタッフを募集していた縁で働いてもらっています。積極的に仕事をし、水を得た魚のように生き生きとしていますね。明るくて元気もよく、行動力もあります。観光の企画では、あちこち回って地元に溶け込みながら考えてもらっているんですよ。高校生たちとも話が弾むので、良い先生役でもありますね。これからも地域に密着しながら、頑張ってもらいたいと思っています。
一般社団法人 南さつま市観光協会 事務局長 園田 親久さん
一般社団法人 南さつま市観光協会
事務局長
園田 親久さん
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