日本も元気にするJICA海外協力隊 神奈川県

栢之間 和弘さん

栢之間 和弘さん 青年海外協力隊
Kazuhiro Kayanoma

水道テクニカルサービス株式会社
プロジェクトマネージャー

【職場】
神奈川県
【職業】
会社員
赴任国
バヌアツ共和国
バヌアツ共和国
【赴任地】
マランパ州マレクラ島ラカトロ村
【職種】
村落開発普及員
【派遣期間】
2012年9月~2015年2月

日本の技術に誇り
いい提案をして
世界の人たちを笑顔に

相手を尊重し、相手の文化を受け入れることができれば、
一緒に仕事をしていくうちに相互の信頼は深まる。
栢之間さんが青年海外協力隊で学んだことは、今の仕事でも十分活かされ、そして評価されている。

昔から好きなことは、
協力隊につながっていた
 学生の頃から外国の文化に興味があり、大学の近くにあった国立民族学博物館には足しげく通っていた栢之間さん。春休みなど長期休暇にはバックパックを背負って東南アジアを巡り、現地の人たちとの交流に心癒され、いつか何かの形で恩返ししたいと思っていた。当時はJICAも青年海外協力隊も知らなかったが、就職して何年も過ぎた頃、その存在を知る。昔から海外が好きだったことや、文化人類学的な視点で活動できる「村落開発普及員」という職種に惹かれて応募を決意。バヌアツに派遣が決まったときには33歳になっていた。
昔から好きなことは、協力隊につながっていた
バヌアツは今でも
心のセーフティーネット
 70以上の島からなるバヌアツ。首都からセスナ機で1時間ほど飛んだマラクラ島のラカトロ市が活動拠点だった。この州の水産局に派遣され、漁民の収入向上、女性の雇用創出、水産資源の管理などを担当した。
 「ラカトロ市からボートで40分の小さな島にフィッシュマーケットを作りました。それまで漁民たちは獲った魚を現金に換えられず、自分たちで消費するしかありませんでした。しかし島の子どもたちは船で学校に通うので現金は必要。フィッシュマーケットのおかげで彼らは現金収入を得ることができたのです」ソーラー式の冷凍庫を入れたことで、都市部のマーケットに冷凍の魚を輸送でき、逆に小さな島でも冷凍の牛肉などが買えるようになった。
 「いろいろな人の話を聞き、どういうニーズがあるかというのを把握した上で、全体的にみんなが良くなるようなシステムを考えるようになりました。これは今の仕事でも役に立っています」
 バヌアツでは生活面も充実していた栢之間さん。「人々の温かさに触れて、世の中にこんなに優しい人たちがいるんだと感動しました。村の酋長が自分を養子に迎え入れてくれて、日本から母と祖父が来たときも『バヌアツの家族を代表して二人を歓迎する』と言ってくれるなど、バヌアツは今でも心のセーフティーネットですね」
漏水率を削減し、
世界の水課題に貢献したい
 帰国後に入社した水道テクニカルサービス株式会社は、漏水調査を手掛ける社員10名の小さな会社で、JICA中小企業海外展開支援事業を受託し2013年度に案件化調査、2014年度から2016年度はインドのバンガロール市で漏水率の削減を目指した普及・実証事業を展開していた。さらなる海外事業展開に向け、協力隊経験者を採用しようとJICAに求人を出したときに栢之間さんが入社したのだ。
 「最初は技術を学び現場にもいきましたが、最近は海外事業が中心で、代表と一緒にインドやベトナムなどへよく出張に行きます。ビジネス英語くらいはできますので、現地での交渉や調整、展示会での説明なども担当しています」
 会社からはコミュニケーション能力も高く評価されている。JICAのプロジェクトが終了した後も、JETRO新輸出大国コンソーシアム専門家派遣制度を活用し、現地事務所の職員のサポートを受けバンガロール市の水道局に通い、何か調査やトレーニングができないかと提案したところ、バンガロールの水道局より人材育成とレーニングの業務委託を海外企業としてはじめて随意契約で受注した。「現地の担当者と何度も話し合い、一緒に課題を解決していく中で信頼関係が深まり、次の契約につながりました」
 インドでは古いものだとイギリスの植民地時代の水道管が使われており、維持管理がうまくいってないため無収水率が50%近い。つまり給水の半分くらいが漏れていることになる。「人口の増加とともに水の需要量も増えていますが、漏水調査をして水道管を修理すれば、水の不足量を補えることを提案しています」
 州政府が予算を握っているインドでは、外国の企業に直接発注する前例がなく、業務提携を結ぶまでにかなりの時間を要した。
 「協力隊での経験があるので、時間にルーズなところや、のんびりしている相手にもイライラしません。バヌアツで直観力が鋭くなったのか、交渉をしていて『ここだ!』というところが分かるのです」
 同社はインドのほかにもベトナムのフエ省水道公社とも覚書を締結し、漏水調査技術トレーニングを実施している。「小さな会社ですが、自分の裁量で仕事ができるのはありがたいこと。SDGsの6番に『安全な水とトイレを世界中に』とありますが、これからも日本の漏水調査技術を世界に広め、世界の水課題に貢献していきたいと思っています」と笑顔を見せた。
  • インドやベトナムで漏水率の削減を目指し、現地でプロジェクトを実施
    インドやベトナムで漏水率の削減を目指し、現地でプロジェクトを実施
  • 日本の漏水調査技術を世界に広めるセミナーにて講演も行う
    日本の漏水調査技術を世界に広めるセミナーにて講演も行う
  • 国際的な水道展示会場で、現地のカウンターパートともに
    国際的な水道展示会場で、現地のカウンターパートともに
栢之間和弘さんProfile
 神奈川県平塚市出身。大阪外国語大学外国語学部国際学科比較文化専攻を卒業後、専門商社、自治体勤務を経て、2012年から2015年まで青年海外協力隊の村落開発普及員としてバヌアツで活動。帰国後に就職した水道テクニカルサービス株式会社では、海外事業担当として日本と海外を行き来している。
栢之間さんへのエール! 技術も持って、
営業もできる人材になってもらいたい
 JICAのスキームを終了し、そこで止まってしまう業者が多い中、その先に進めたのも栢之間君の力に依るところが大きいです。海外の要人との交渉など、彼が培ってきたコミュニケーション力には常々感心させられます。
 我々の技術は無形のものですが、水道先進国の目線をもって良い提案をし、新興国の水道に活かしてほしい。技術も持って、単独で乗り込んでも各国の問題解決ができるような人材になってもらえれば言うことはありません。
水道テクニカルサービス株式会社 常務取締役、阿部 弘嗣さん
水道テクニカルサービス株式会社
常務取締役
阿部 弘嗣さん
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