日本も元気にするJICA海外協力隊 徳島県

中川 公輝さん/中川 朋子さん

中川 公輝さん中川 朋子さん
Kimiteru Nakagawa & Tomoko Nakagawa
青年海外協力隊

株式会社きとうむら取締役/営業主任

【職場】
徳島県
【職業】
会社役員/会社員
赴任国
マラウイ共和国
マラウイ共和国
【赴任地】
リロングウェ
【職種】
コンピュータ技術
【派遣期間】
1990年7月~1993年7月/
1992年4月~1994年4月

地域の宝
“木頭柚子(きとうゆず)”を
多くの人に届けたい
徳島の山里から、
持続可能な社会を

アフリカの大地で自然と共にたくましく生きる人たちを知り、人間の原点と可能性を学んだ。
海外から徳島に舞台を変え、持続可能な暮らしの大切さを実感しながら、オーガニックなモノづくりに励む。
地域の人たちとの取り組みは、地域の新たな可能性を産み出している。

海外への興味から協力隊に
人間の原点と可能性を知る
 徳島市内から車で2時間半、「日本一の柚子の里」として知られる那賀町(旧木頭村)に「株式会社きとうむら」はある。柚子を原料に、持続可能な手法に配慮しながらとことん手作りにこだわり、地域の自然と文化を感じられる商品を地域の人々とともに生産・販売している会社だ。「お客様に安心安全なものを届けたいと考えています」と語る中川公輝さん・朋子さん夫婦は、同社の副社長と営業担当であり、ともに青年海外協力隊経験者だ。
 公輝さんの協力隊参加のきっかけは、船乗りだった父親の土産話。「小さな頃から世界への憧れと冒険心が芽生えました」27歳の時、新聞の募集広告を見て当時勤めていた会社を退職、協力隊に参加した。朋子さんの場合も、海外にて研究活動をしていた父親の影響が大きい。自然に国際関係の大学に進み、協力隊に行き着いた。「私は文系で技術がなく、社会経験を積んでから参加しようと思いました」25歳の時、職場から籍をおいたまま協力隊に参加できる「現職参加制度」を勧められ、夢を実現させた。
 コンピュータ技術の分野で2人が派遣されたのは、アフリカ内陸部のマラウイ共和国。現地では古いパソコンが僅かにある程度で整備状況も悪く、資機材の調達にも苦労した。しかし、協力隊の経験は2人に大きな影響を与える。「様々な考え方や状況を受け止められるようになりましたし、大地とともに生活しているアフリカの人たちから人間の原点やたくましさを学びました」公輝さんはその後、国連やJICAのプロジェクトなどで7年にわたりマラウイに関わった。「協力隊活動は、自身に潜在しているDNAを呼び起こし、様々な力を引き出してくれました。そして、1つのことでも様々な見方をする大切さを教えてくれたんです」朋子さんは復職後、開発学を学ぶためにアメリカの大学院へ進学した。
 その後、協力隊OBの集まりの席で2人は再会し結婚。協力隊のサポートスタッフとして夫婦で5年半ほどスリランカに派遣され、国際協力のキャリアを積んでいった。
海外への興味から協力隊に 人間の原点と可能性を知る
海外から徳島へ
発想の転換で何でもできる
 2011年、両親の介護もあり2人が公輝さんの生まれ故郷である那賀町に戻った際、以前より縁のあった「株式会社きとうむら」の社長より声がかかった。公輝さんは、過疎地で挑戦を続けている社長の姿勢に強く惹かれたという。「少ない資源から新たな可能性を産み出していくのは途上国も日本の過疎地も似ており、やりがいを感じました。今度は故郷で何が出来るか挑戦する番。何もないからこそ何でも出来る余地は大きいはず」
 3年後の2014年には、朋子さんも同社で働き始める。「これまでフェアトレードやオーガニックの大切さを学んできましたから、会社の理念に心通じるものがありました。自分がこれまで培ってきた知識や経験を活かせたら、と思ったんです」
同僚、地域とともに
持続可能な社会を目指す
 柚子を中心にお菓子や調味料、お茶、清涼飲料水など、安心・安全をテーマにした多彩な品揃えの裏には、農薬や化学性肥料を使わず丹念に原料を作り、生産から加工、流通、販売までを担う「6次産業化」の苦労もある。また、原料は気候の影響を受けやすく売上げにも関係していく。常にリスクと隣り合わせだが、だからこそ付加価値が生まれ、ニッチなマーケットをターゲットにできるという。
 「地元のスタッフが中心となり、20年以上頑張ってきた会社ですから底力があります。また、地元や県外、海外にも当社の取り組みに賛同するサポーターが多くいらっしゃいます」皆と協力し合いながら、会社の魅力を更に高め、安心して楽しく働ける地域の職場にすることが公輝さんの大きな目標だ。「週末には夫婦で田んぼや畑を耕し、自給自足の生活を楽しんでいるんですよ。今後は、同じような取り組みをしている協力隊経験者たちともコラボレーションしていきたいですね」と朋子さん。
 協力隊をきっかけにした夫婦の二人三脚は、時代に求められる“持続可能な社会”を更に広げ、地域の新しい可能性を発信し続けている。
  • 山間部の国道沿いにある、木頭杉のぬくもりが特徴の「きとうむら」ショップ
    山間部の国道沿いにある、木頭杉のぬくもりが特徴の「きとうむら」ショップ。近年は外国人客も増えている。
  •  無農薬で化学肥料を使わずに栽培した「木頭柚子」を主な原料とした、こだわりの商品の数々
    無農薬で化学肥料を使わずに栽培した「木頭柚子」を主な原料とした、こだわりの商品の数々。
  • 「苦労は多いけどイイものをお客様に届けたい」協力隊で培われた2人の想いは地域活性化の原動力になっている
    「苦労は多いけどイイものをお客様に届けたい」協力隊で培われた2人の想いは地域活性化の原動力になっている。
中川公輝さん
Profile
 徳島県出身。1990年より青年海外協力隊としてコンピュータ技術を指導にマラウイ共和国へ。その後、国連やJICAプロジェクト、ボランティア調整員等の業務でマラウイやスリランカに勤務。2011年より株式会社きとうむらに勤務、現在は同社取締役。
中川朋子さん
Profile
 神奈川県出身。1992年より青年海外協力隊としてコンピュータ技術を指導にマラウイ共和国へ。帰国後、アメリカの大学院にて開発学を研究、大学職員やJICA国際協力推進員を経て、2014年より株式会社きとうむらに勤務、現在は同社営業主任。
中川さんへのエール! 二人三脚で町を盛り上げていってほしい
 公輝さんはとても大らかで朋子さんはしっかり者、まさに二人三脚のご夫婦です。見方を変えるように発想の転換を促す、また他人の得意なところをよく見て、そこを伸ばすことを考える。価値観の異なる人や弱い人の立場で考えられるのは、協力隊の経験があるからでしょう。こんな田舎のお店にも外国人のお客様が来るようになりましたから、ご夫婦にはもっと活躍して町を盛り上げていって欲しいですね。
株式会社きとうむら 総務主任、西田 幸子さん
株式会社きとうむら 総務主任
西田 幸子さん
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