障害者の就労支援に関するワークショップをJICA海外協力隊とサラワク州社会福祉局が共同開催

2024.03.29

2024年2月3日、サラワク州クチンにて、障害者の就労支援に関するワークショップが開催された。本ワークショップは、JICA海外協力隊らとサラワク州社会福祉局が共同で企画したもので、17か所の地域リハビリテーションセンターの他、特別教育センター、NGO、企業や大学から計65名が参加した。社会福祉、特別支援教育の協力隊員5名が、日本の福祉・教育制度や自身の経験などを発表した。
マレーシアでは1983年より地域リハビリテーションセンターが中心となって、地域の障害者のために就学前療育から就労支援まで様々な支援を展開している。作業療法士の髙橋隊員が派遣されているサラワク州クチンでは、NGOやプライベートセンター等でも就学前の療育サービスを受けることができ、徐々にその選択肢は増えてきている。しかし、成人障害者については地域リハビリテーションセンターしか利用できない地域があるなど制約があり、特に就労支援については十分に対応できていないことが課題となっている。
このような現状から、JICA海外協力隊らとサラワク州社会福祉局は、クチンでの成人障害者に対する就労支援の向上を目指し、クチンの障害者支援に関わる当事者らがマレーシア国内や日本での好事例や経験を学ぶことのできるワークショップを計画した。マレーシア国内の事例については、クダ州社会福祉局で障害者の就労支援に関わっている田中隊員とその福祉局員らから、クダ州での知見を共有することで話が進んだ。また、障害者の就労支援について社会福祉関係の隊員で協議したところ、就労時だけの支援では不十分であり、卒業後も支援を継続することが重要であるということが共通の理解であった。加えて、日本国内の就学前や特別支援の教育機関で行われるような継続的支援や、福祉と教育の連携事例を伝えることも必要との議論になった。このような議論も踏まえて、教育局傘下の特別支援学級に教員として配属されている協力隊員らにも応援を依頼し、日本の特別支援学校における職業訓練や多職種連携の事例紹介もワークショップに盛り込んだ。
ワークショップは、協力隊員5名を含む9名のスピーカーにより8セッションが行われた。そのうち3セッションは日本の特別支援学校/学級を含む紹介であり、その他のセッションでは、自閉症の特徴に応じた支援の方法や、障害者の家族に対するエンパワメントの方法、NGOの歴史や自主製品販売などの取り組みなどを紹介し、障害者が就労支援を受ける前の準備段階におけるサポートの重要性が理解できるよう工夫した。加えて、州教育局、NGO、企業らが障害者の就労において互いに連携する必要性を理解できるようなグループワークも行われた。
ワークショップでは、参加者が熱⼼に話に聞き入る様⼦や活発な意⾒交換があり、中には参加者から専門的な質問があり隊員も回答に悩むなど、成人の障害者の就労支援に対する意識の⾼さが伺えた。ワークショップ後に行ったアンケートでは、回答者全員が満足したという結果になり、またこのようなワークショップが開催されることを期待する声もあった。
JICAは、今後も社会福祉関連の隊員をマレーシアに派遣し、マレーシアが障害者の方々にとってより暮らしやすい国になるよう協力していく。

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