【草の根事業紹介】パラオ国バベルダオブ島における分別排出システムの普及促進事業(地域活性型)

#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs
#12 つくる責任、つかう責任
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2024.05.17

島国パラオのゴミを減らそう!! ~プロジェクトの始まりと発展~

三重県とパラオ共和国は1996年に友好提携に調印し、以降、研修員の受け入れや調査研究協力といった事業が継続的に実施されています。その代表的なもののひとつが、この公益財団法人国際環境技術移転センター(ICETT)によるごみ削減の取り組み支援です。
パラオでは、家庭から出るごみは、ほぼ分別せずに家の前のドラム缶に捨て、それをトラックで集めて埋め立て処分場に捨てています。それでは、新しく処分場を作ってもすぐに埋まってしまいます。そこでICETTでは、対象地域に資源物の回収ステーションを設置して、パラオの公共基盤・産業・商業省や教育省と協力して、住民に対する啓発を行いながら、パラオの家庭から出るごみを分別回収して可能な限りリサイクルしよう!という活動をしています。
2018年から2022年にかけてJICA草の根技術協力事業(地域活性化特別枠)として、「ガッパン州イボバン、アイメリーク州モンガミにおける官民協働ごみゼロ社会推進事業」(以下フェーズ1)が実施されました。新設された廃棄物処分場を有効活用するべく、住民主体のごみの分別およびリサイクルの推進活動に取り組みました。この取り組みを通して、気候や道路整備事情などの条件も厳しいパラオで、庭先のドラム缶による個別収集システムに慣れている住民が、分別の手間をかけ、プロジェクトによって設置された資源回収ステーションまで資源物を運ぶという大きな行動変容がおこりました。さらに、日本での研修に参加したパラオ関係者の一人は、この取り組みを「ごみゼロソング」として歌にし、この歌はパラオのラジオでも流されるなど、パラオ人の意識変容に繋がりました。
フェーズ1では100人ほどが住む地区2つを対象として実施されましたが、このフェーズ1を引き継ぎ、更なる発展をめざすのが、現在実施中のJICA草の根技術協力事業(地域活性型)「バベルダオブ島における分別排出システムの普及促進事業」(以下フェーズ2)です。

フェーズ1で生まれた「ごみゼロソング」はYouTubeで聞けます!!

フェーズ2開始時のキックオフミーティング

フェーズ2を動かす2つのチームと目指すべきゴール

フェーズ2では2つのチームが編成されています。1つ目が「チームC」。CはCommunityを指し、フェーズ1で取り組んだ2地区(イボバン・モンガミ)における住民主体のごみの分別活動をそれぞれが属する2つの州(ガッパン州・アイメリーク州)全域に水平展開することを目指します。チームメンバーは、カウンターパートである公共基盤・産業・商業省や州政府の廃棄物管理担当者、現地で協力関係にあるNPOスタッフで構成されています。2つ目は「チームE」。EはEducationを指し、バベルダオブ島全域で学校での環境教育やごみの分別排出の実践を通して、資源のリサイクルの大切さを伝えるとともに、子どもから親に伝えるという行動をもって、各家庭での分別排出やリサイクルへの理解促進を図ります。主に学校の教員を中心としたメンバーとチームCと同じく現地NPOスタッフで構成されています。この2つのチームの活動による相乗効果を生み出しながら、最終的にはバベルダオブ島全域での分別排出にかかる提言書を策定し、島全域で分別排出に取り組むための基盤を整えるのが、このプロジェクトの最終的なゴールです。
チームCでは、パラオ側関係者(公共基盤・産業・商業省や州政府等)との協議が重ねられ、活動の指針となる資源回収計画を策定しています。分別について住民に理解してもらうための住民説明会も実施しました。さらに、分別排出活動の拠点として2024年4月にはステーション第1基が完成しました。引き続きステーションの設置を進め、住民による分別活動が今後より促進される予定です。
チームEは2023年9月に日本での研修に参加しました。研修は、三重県を中心にSDGs活動に取り組む一般社団法人ネクストステップ研究会の協力も得ながら実施されました。パラオから参加した各チームメンバー(教員)は、三重県内の小学校や啓発施設の訪問を通して、環境教育の手法について学習し、パラオに帰国後、学びを活かした環境教育を目下実践中です。手作りの生ごみ処理器「キエーロ」の導入による、学校での生ごみ削減および学校菜園の取り組みにもチャレンジしています。
ICETTホームページでは、パラオ通信で活動の進捗状況を発信していますので、リンク先からぜひご覧ください。

記念すべき「資源回収ステーション第1基」完成!!

本邦研修での1枚。生ごみ処理機「キエーロ」について学びました。

他事業との連携による相乗効果も期待

フェーズ1およびフェーズ2で一貫して大切にしているコンセプトは「住民主体の地域に根差した活動」であるという点です。あわせてJICAではパラオを含む大洋州の11か国を対象とした「大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト(Japanese Technical Cooperation Project for Promotion of Regional Initiative on Solid Waste Management in Pacific Island Countries、通称「J-PRISM」)」が2011年に始まり、現在は9か国を対象とするフェーズ3の実施中です。J-PRISMでは、関連機関の能力強化や国を超えた地域内協力体制の構築といった大きな視点で大洋州地域の課題を捉えているのに対し、ICETTが行う草の根技術協力事業では、住民の意識変容、行動変容によって生み出されるボトムアップの活動を重視しています。手法は違えども、パラオのごみを減らしたい、パラオの美しい海を守りたい、という思いは同じです。ICETTとJ-PRISM関係者の間では情報交換会を実施しており、今後ますます連携を深めていく予定です。この先、チームCとチームEの連携に加え、J-PRISMとの連携を進めることで更なる相乗効果を生み出し、ごみ分別の普及活動が加速化するよう取り組んでいきます。ぜひこのプロジェクトにご注目ください!

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