中米カリブ地域看護基礎・継続教育強化プロジェクト

The Project for Strengthening Nursing Education and In-service Training in El Salvador、 Guatemala、 Honduras、 Nicaragua and the Dominican Republic

終了案件

国名
エルサルバドル
事業
技術協力
課題
保健医療、貧困削減
協力期間
2007年8月~2011年8月

プロジェクト紹介

保健医療分野に問題を抱える中米・カリブ地域。これまでにも日本による支援が実施されてきましたが、この協力では、5ヵ国(エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、ドミニカ共和国)から寄せられた看護教育の改善に効率的に応じるべく、エルサルバドルを拠点にし、エルサルバドルの看護継続教育の強化を支援すると同時に、同国を含む5ヵ国において看護基礎教育の指導者の育成を支援しました。これにより、中米カリブ地域における看護教育の質の向上に寄与しました。

協力地域地図

中米カリブ地域看護基礎・継続教育強化プロジェクトの協力地域の地図

事業評価

協力現場の写真

  • エルサルバドルでのカウンターパート研修の一場面。「看護過程」において、ロールプレイを行い、実施した看護が適切であったかを振り返る。広域協力の分野は5つあり、「看護過程」の他に、「看護基礎教育カリキュラム」、「教育・ 臨地連携」、「地域看護」、「リプロダクティブヘルス」があり、全体で80名に及ぶカウンターパートを養成した。 

  • 研修受講後、カウンターパートが各国で活動を開始する。具体的には、テーマごとの自己学習・現状調査を行ったうえで、ファシリテーター(FT) 養成研修を行い、中央委員会を設置し、委員会活動を定例化する。そして、中央委員会が、地方委員会FT養成研修の実施・モニタリングを行っていく。写真は、地域看護カウンターパートが、地域看護における課題を明らかにし、研修に役立てることを目的として現状調査を行っている場面。 

  • ファシリテーター養成研修の様子。各国のカウンターパートにより、中央委員会のメンバーとなり、今後、地方委員会を養成していくための人材養成を行った。「一緒に、自国の看護の質を良くしていこう」というカウンターパート達の熱い思いが伝わり、それに応えるFTが出てきて、その後の活動を積極的に行っている。4ヵ国で、計97名のFTが養成された。 

  • JICA-NetシステムによるTV会議。5ヵ国の活動の進捗状況や課題の共有および同分野での意見交換を行うことで、国毎の課題はあるものの、解決の糸口を他国ケースから学ぶことに繋がった。また、エルサルバドル専門家と各国との関係だけでなく、各国間での連帯意識や良い意味での競争意識を醸成し、看護ネットワークの構築に至った。それ以外にもSkypeやメール、電話といった遠隔コミュニケーションツールを通して、時差の殆どない各国間における日常の技術指導、情報・課題の共有などを可能とし、プロジェクトの成功に大きく貢献した。 

  • バイ協力の対象地域は、先住民の住む地区もあり国内で妊産婦死亡率の高い地域でもあるという理由で、西部地域とし、リプロダクティブヘルスの分野の協力とした。中でも地域の中心となるサンタアナ県をモデル県とし、他の2県はFT養成を行った。まず、パラグアイのプロジェクトで育った人材(カウンターパート)が講師となり、日本人専門家およびエルサルバドル看護課担当職員の協力により、サンタアナ県FT養成研修を行い、16名のFTが養成された。 

  • 自己学習の一環として重要なのは、指導をより確かなものとするため、現場において、知識や技術の適応と実践による裏付けを行うことである。FTの1人、病院勤務の看護師は、日頃は師長として全体を管理しており、患者に直接ケアを行う機会は少ないが、実践を通し、自分の技術の確認がFTを行うに当たり必要と考え、積極的にケアを行っている。 

  • その後、研修計画、研修プログラムを作成し、準備を行い、県内の妊婦に関わる看護師・准看護師を対象とした研修を実施した。看護師4回・准看護師2回で、合計112名に対して妊娠期の看護に関する研修を行った。卒業後の継続研修であり、理論より実践を強化し、実習をシステマティックに行うことで、確実に全員が経験でき、FTが常にグループ毎にいて、適宜助言を受けられ、学習効果が高まった。 

  • 内容は、妊婦の健康診査の技術、異常の判断および異常時の対応、保健指導などに関して、であり、特に「人間的な看護」という視点を強調した。挨拶や声かけ、笑顔での対応や、処置をする時の説明など、患者さんを尊重した看護が十分にできていないという現状から、実践面での改善を実習面に盛り込んだ。 

  • 2ヵ月後に、研修受講者の施設を訪問し、モニタリングを行う。実際に妊婦健診を行うのを、モニタリング基準を用いて評価していき、看護師に対しての知識・技術の不足面の強化を行うと共に、モニタリング結果を分析し、フィードバックを行う。2010年8月のプロジェクト終了時点で、研修受講看護師のいる施設の96パーセント、准看護師のいる施設の46パーセントのモニタリングが終了している。 

  • このような地道な活動により、看護師に対し、他の医療従事者から高い評価が得られて来ている。そして、妊婦たちからも、「丁寧に教えてもらえるので、看護師による妊婦健診を毎回受けたい」、「赤ちゃんの成長や、妊娠中気をつけることなど、看護師が分かりやすく教えてくれる」という良い評価が得られている。そして、更に変化といえば、「自分は真面目で患者さんと接する時、笑顔が足りないので、明日からは、笑顔で対応する」と研修の最終日に話していた看護師の上司から、後日「笑顔で対応している、良くなった」という報告があったことも大きい。さらに、写真のように、元々は看護師が患者のプライバシーを考慮しながら保健指導や看護ケアに当たれるスペースが無かったが、自助努力により、町役場や院長などの協力を得て、待合室に仕切りを設け看護スペースとして活用している施設がいくつか出てきている。このバイ協力は、3年間で目標を達成し、2010年8月で終了したが、今後は、この3県の委員会による活動が自力で行われる。ここまで構築された看護継続教育システムが、彼女たちの力により維持でき、更に発展して行くこと、そして、それが看護ケアの改善につながり、妊婦さんに限らず全ての人々が、質の良い看護サービスが受けられる日が来ることを願ってやまない。 

関連情報

関連・連携プロジェクト

関連・連携プロジェクトはありません。

本プロジェクトの他の期・フェーズ

本プロジェクトの他の期・フェーズはありません。