「農業再活性化計画」実施能力強化プロジェクト

Capacity Building Project for the Implementation of the Executive Programme for the Agricultural Revival

終了案件

国名
スーダン
事業
技術協力
課題
農業開発/農村開発
協力期間
2010年3月~2016年3月

プロジェクト紹介

農業生産が長期に渡って停滞しているスーダン。同国政府は、石油に過度に依存しているリスクへの対策として、農畜産物の輸出振興や貧困削減、食糧安全保障を目標に掲げた「農業再活性化計画」を2008年に策定しました。しかし、政府機関の行政能力や開発計画の策定および実施能力の低さにより、農業開発計画の実施は依然として限定的でした。この協力では、「農業再活性化計画」の実現に必要な統一政府農業省と関係機関のキャパシティの向上を支援しました。これにより、農業行政サービスの質の向上に寄与しました。

協力地域地図

「農業再活性化計画」実施能力強化プロジェクトの協力地域の地図

事業評価

協力現場の写真

  • 2010年3月に開始した「農業再活性化計画」実施能力強化プロジェクトは首都ハルツームの連邦農業省職員の人材育成および組織強化を目標とした研修活動などを実施し、又、州レベルでも白ナイル州とゲジラ州の農業省職員の人材育成と組織強化の為に陸稲栽培を通じて活動を展開しています。 プロジェクト開始にあたって2010年5月より連邦農業省対象5部局の職員の能力とニーズをはかるキャパシティアセスメントワークショップが研修計画専門家により実施されました。アセスメントに参加した職員は計132名。分析結果を踏まえてプロジェクト1年次の研修活動計画が策定されました。研修科目は英語、コンピューター、マネージメント、リーダーシップ、プロジェクトサイクルマネージメント:以下、PCM(計画立案)と基礎的なスキルの向上を目指した内容で合計119名の職員が複数の研修に参加しました。プロジェクト2年次に入り再度キャパシティ・アセスメントを実施し、1年次の研修活動の評価を踏まえて、新たな研修活動計画が策定されました。プロジェクト2年次の研修科目はフィージビリティスタディ、PCM(計画立案)、PCMモニタリング評価、ファシリテーター養成(PCM計画立案)、ファシリテーター養成(PCMモニタリング評価)、基礎マネージメント、中級マネージメント(交渉術)、中級マネージメント(コーディネーション術)、リーダーシップの全9科目です。200名を超える対象職員が複数の研修に参加しています。この写真は研修計画専門家のアセスメントのワークショップのひとこまの様子です。 

  • リーダーシップ研修を修了した職員たちと中垣チーフアドバイザー(2010年10月)。農業省では過去に雇用を見送った年次が数年あった為、シニアレベルとジュニアレベルの世代のギャップがあります。現在のリーダー世代が一斉に退職する時期を数年後に控えた今、ジュニアレベルの能力向上、そして、次世代のリーダーの育成は急務となっています。 

  • スーダン(南部独立後の北部)は北アフリカの乾燥した地域に位置しています。農業は平坦で広大な土地(東西南北360度が見渡せる)の中で、青ナイル川と白ナイル川の水を利用した灌漑農業、少ない降雨を利用した天水農業に分けられます。いずれの農業も大型機械を利用して行うのが大きな特徴です。ほとんどの農業地では一区画が約1ヘクタールの広さに区切られます。写真は初めて灌漑陸稲栽培(デモンストレーションを兼ねる)を行う為に機械で均平化した広大な圃場での播種を播種機により行っている風景です。 

  • この国の農業ではどのような作物を栽培するにしても土地の耕起から収穫まで機械で行います。陸稲の栽培についても耕起からトラクターを使用することが通常です。この写真は白ナイル州において後藤専門家が同州の農業普及員に対しトラクターの機能、利用の仕方(アタッチメントの使い方)、操作方法、そして何より大切な圃場整備上の注意点(レベリングはなぜ重要か?良いレベリングとは?)などについて理解を深める為の現場研修を行っているところです。 

  • 陸稲生育初期にゲジラ州の圃場適用試験の現場において普及員に対し現場で実際の生育状況を見ながらの研修を実施している様子です。この現場見学・研修には同州の農業実務の最高責任者である農業総局長も参加し、後藤専門家の状況説明に熱心に耳を傾け、陸稲栽培の実状把握と作物の生育の理解に努めている様子が伺えます。 

  • 白ナイル州における陸稲栽培に関する農民研修の様子を写した写真です。この研修は、陸稲栽培の冬季作トライアル(試験)の農家デモンストレーション圃場現場の横に簡易な小屋を立て、そこで近隣の関係農民を集めて研修を行います。この研修は栽培の初めから終わりまで12回にわたって行われました。農民研修の講師は後藤専門家のみならず、同州の普及員が主として担っています。参加農民は1回25名程度ですが、毎回熱心にスーダンにおける新規作物である陸稲栽培の知識を吸収しようとしている熱意が伝わってきます。 

  • ゲジラ州における陸稲栽培をゲジラスキームの中にある農家デモンストレーション圃場で行っているところです。(ゲジラスキームは世界最大といわれる灌漑開発地で約88万ヘクタールを有し、1925年にイギリスの協力により開発されました)。この農家圃場の陸稲の草丈は約15センチメートル程度ですが、この時期の栽培管理では灌漑のタイミングと除草が重要な農作業となります。後藤専門家が現場で人力による除草を注視している様子が伺えます。この地域では、稲(=陸稲)という作物を見るのが初めてのため、稲と雑草の形状の違い=見分け方、を女性労働者にしっかり説明し間違って稲を引き抜かないように現場で指導する必要があります。この州では2011年に陸稲栽培導入・推進の為、稲作課(課長を入れ課員は総勢23名)を組織しました。それぞれの陸稲栽培圃場には3名以上の稲作課普及員が配置されています。また、この州には、このような農家デモンストレーション圃場(1ヵ所約1ヘクタール)が各県に1ヵ所ずつ合計5ヵ所あります。スーダンでは陸稲栽培が導入時期にあり課題は多いのですが、特に播種前の圃場の均平化、水の管理、雑草防除、施肥が4大課題です。この写真はゲジラ州の農家デモンストレーション圃場において後藤専門家と同州普及員が陸稲生育初期の人力による除草指導を行っている現場を同州の農業省農業総局長他幹部、農民など関係者が視察している様子です。除草の為に農業労働者として雇われているのは全て女性です。 

  • スーダンにおいては陸稲栽培が導入初期にあり、まだ農民が農業経営の一環として栽培するまでにはいたっていません。このためプロジェクトではJICAの協力により陸稲先進国となっているウガンダのJICAプロジェクト(ネリカ米振興計画プロジェクト)の協力を得てウガンダの同プロジェクト派遣の日本人専門家にも短期間スーダンに来てもらい、当プロジェクトの陸稲栽培に関係する普及員に対し指導助言をしてもらっています。さらに、スーダンの陸稲栽培に関係している普及員をウガンダの同プロジェクトに派遣し研修することも行っています。この写真は2011年6月にウガンダの上記プロジェクトでフィールド研修を行っている様子です。スーダンの研修員にフィールドで指導しているのはMr.ネリカとして名高い同プロジェクト派遣の坪井専門家です。この研修にはゲジラ州、白ナイル州、リバーナイル州と北部州から総勢22名が参加しました。今年度(2011)更にもう一度同程度の規模のウガンダ研修を計画しています。近隣国のJICA類似プロジェトとの連携により一層良いプロジェクトの成果を出すことを狙っています。 

  • この写真は「圃場適用試験」の圃場で生育した陸稲の生育調査を行うため、日本人専門家が関係普及員を指導し、草丈測定・収量調査用のサンプリングを行っている様子です。普及員は陸稲の栽培の要諦をしっかり身につけていかなくてはならないと同時に、生育した陸稲の収量の調査方法を身につけていく必要があります。生育状況を把握していくことで次の栽培における陸稲栽培の改善策を考えていくことが出来るようになります。また、このような調査も労働者に行わせるのではなく、普及員自らが陸稲の生育状況測定や刈り取りを行うことにより、机上ではなく、本物の「実践力」を身につけることが出来るようになると考えています。 

  • 2010年の政府陸稲栽培圃場(白ナイル州の圃場で約170ヘクタールの広さがあり、プロジェクトから技術的助言を行ってきた)の夏作(7月〜10月)の収穫を迎えた大圃場で収穫祭を実施した際の参加関係者の圃場見学の写真です。本格的に政府が陸稲に取り組み始めてこの年(2010年)が2作目ですがJICAプロジェクトの技術面の助言もあり、関係者に十分な自信を持たせられる良い生育状況・収量でした。この収穫祭にはムダフィ 連邦農業大臣、和田日本国大使、JICA事務所長、連邦農業省次官、同国際協力・投資局長、白ナイル州知事、同州農業大臣、同州農業総局長、同陸稲栽培地の県のコミッショナー(県の行政長)、隣県のエル・デユエム県のコミッショナー、ゲジラ州農業総局長、農業研究機構の稲作研究調整官など多数の関係者が出席し11月に盛大に開催されました。この現場を見てまさに「百聞は一見にしかず」で、関係者に大きな感動を与えると共に陸稲栽培がソルガムなどの伝統作物に変わる新規作物として経営的に十分利益の出ることを実証しました。 

関連情報

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