プロジェクトニュース_30

参加型保全活動の経験取りまとめ

MAPCOBIOプロジェクトではこれまでコスタリカで行われてきた様々な参加型保全活動事例を抽出し、体系的に取りまとめる作業を行ってきました。今回のプロジェクトニュースでは、なぜこうした活動を行ってきたのか、その理由についてご説明したいと思います。

なぜ体系的に事例を取りまとめる必要があったのか?

参加型の保全活動は、カウンターパートのSINAC(国家地域保全システム庁)のミッションやビジョンにも盛り込まれている非常に重要な要素です。しかしそれが実際の現場でどのように進められてきたのか、活動に直接関わった担当者しかわからないという状況がこれまでずっと続いてきました。

参加型保全活動において求められる手続きや取り組み方、現場ならではの工夫や多様な関係者・他組織との調整といった様々な知見や教訓が組織として取りまとめられておらず、現場で参加型の保全活動に取り組むSINAC職員はほとんど手探りの状態でこれまで活動に関わってきたのです。そうした中でなんとかうまく参加型の活動が進展した場合もありますし、うまくいかず保全活動が頓挫・停滞した場合もあります。

参加型の保全活動に万能薬的な取り組み方は無いとはいえ、ある程度指針となるようなものが必要だと、現場のSINAC職員は常々感じていました。こうした現場のニーズに応える形で、MAPCOBIOはコスタリカの各保全地域から様々な参加型保全事例を集約し、指針となるものが何なのかSINAC職員や研究者などと議論を重ね、取りまとめてきました。

この作業を通じ、これまでいわば暗黙知的に存在していた参加型保全活動に必要な様々な手続き、経験、工夫、知識、教訓、所謂ナレッジが体系的に整理され、取りまとめられてきました。この暗黙知を形式知にする作業をSINAC職員と共に行ってゆくことで、SINACの参加型保全のナレッジが現場で使えるものとなってきています。このナレッジを活用することで、今後益々コスタリカにおける参加型保全活動が促進されてゆくと考えています。

21事例のとりまとめと共通項

MAPCOBIOではコスタリカに存在する11の保全地域(図1参照)からそれぞれ様々な参加型保全事例を収集し、合計21の事例を体系的に整理し取りまとめることが出来ました。事例については以下の通りです。

上記の事例の内容をMAPCOBIOとSINACのカウンターパートで検証したところ、以下7つの共通項でグループ分けできました。

こうした整理を行うことで、21の事例から抽出したナレッジが現場においてより活用しやすくなってゆきます。また、今後行われる新たな参加型事例から引き出される教訓を加えてゆくことで、ナレッジの更新も行いやすくなります。そしてそれはまた新たな参加型の取り組みに繋がってゆきます。

プロジェクトニュースでは以上7つの共通項に基づき、7回のシリーズものとして21の参加型保全事例を紹介させていただきます。

次回のプロジェクトニュースではその第一回目として「1.インディヘナとの協働」事例についてご紹介します。


(注)パカとも呼ばれるカピバラより一回り小さなげっ歯類。学名はAgouti paca。

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図1.コスタリカの11の保全地域。各保全地域にSINACの地方事務所が置かれ、それぞれの国立公園や野生生物保護区などの管理を行っている。