教員養成校講師と小学校教員の挑戦-子どもたちの主体的な学びを目指して-

IPeCKプロジェクトでは、教員養成校の講師と小中学校の教員が協働して授業研究などの研修活動に取り組むことで両者の連携を強め、教員養成と現職教員研修の両面から教員の資質向上を図っています。

南部州モンゼ郡に位置するチャールスルワンガ教員養成校は、周辺の6つの小学校(協力校)と連携して、授業研究の公開ワークショップや、養成校講師が各協力校での授業研究に参加するなどの活動に取り組んでいます。従来の説明型の授業ではなく、子どもが活動を通して主体的に学ぶことのできる授業を目指して、養成校講師と協力校教員が協働しています。今回は、協力校のひとつであるチヨボラ小学校で行われた連携活動について紹介します。

チヨボラ小学校では、全学年の教員が理科と算数のグループに分かれて授業研究を行っています。10月9日に行われた授業研究では、理科グループが準備した授業を同校の教員と養成校の講師が観察し、その授業についての事後検討会を行いました。
授業は5年生の「物体の体積の測定」についての内容でした。授業の冒頭、先生は様々な物体を子どもたちに見せ、それぞれの体積をどのように量ることが出来るか問いかけます。なかでも今回は、石などのように長さから体積を求めることのできない物体について、どのようにその体積を量ることが出来るか、実験を用いたグループ活動を取り入れて子どもたちに考えさせていました。実験の間は、授業観察に参加していた協力校教員や養成校講師も教室内を歩いて子どもの理解の度合いを見て回ります。子どもたちは、与えられたワークシートを見ながら、体積の求め方についてグループで知恵を絞って考えていました。

授業後にはすぐに検討会が行われ、協力校教員と養成校講師から良かった点と改善点が次々に挙げられました。良かった点として「子どもの参加を促していて、単に知識を与えるのではなく考えさせる機会を与えていた」という意見が多く挙げられた一方で、「導入での問いかけの意図が分かりづらかった」、「実験器具を用いたのは良かったが、正しい使い方を説明していなかったので結果に影響してしまう」、「授業内容に追い付いていない子どもも多くいた。もっと子どものことを理解しなければならない」、「私たち先生にとって、美しい授業案だったとしても、それが学習者のレベルに合っていなければ理解にはつながらない」などの改善点が積極的に挙げられました。
養成校講師は、今回の授業と前の授業のつなげ方を具体的に提案したり、説明の順番を入れ替えた方がわかりやすいところを指摘したり、正しい実験器具の使い方を説明したりと、協力校の教員の挙げた課題に対して、実践的なアドバイスをしていました。また、チヨボラ小学校の校長先生は、「教壇に机がないと実験の際に先生の説明がわかりづらい。なるべく早く机を設置できるようにしたい」と話し、設備面での改善についても考えていました。

検討会の後、授業をしたムレンガ先生に話を聞きました。彼は、チヨボラ小学校に12年間勤めているベテラン教員で、今年6月には首都ルサカにて1カ月間、プロジェクトの実施機関である国立科学センターが主催する研修にも参加した熱心な先生です。ムレンガ先生は、「IPeCKプロジェクトで授業研究を行うようになってから、自分の教員としての在り方に変化があった。これまでは従来の教え方で知識を伝えていたが、授業研究を通じて学ぶ側の状況を理解するようになった。かつては子どもたちに正しく解答させることが重要だと思っていたが、子どもたちの間違った理解こそ学びの余地であることに気づいた。その知見を同僚に共有して、学校での授業研究にも活かしている。」と話していました。ムレンガ先生に、その教育への熱意はどこから来るのかと尋ねると「自分がより良い授業をすることで、いつか自分の教えた子どもたちがザンビアの経済や社会の発展に貢献することが出来る。教育を通じてザンビアをより良い国にしたい。」と目を潤ませながら語っていました。

今回の研究授業で使われた授業案は、さらに改善され、二回目の研究授業が行われることになります。子どもたちが主体的に学ぶ授業の実践に向けて、協力校の熱意溢れる先生と、教科知識や経験の豊富な養成校講師の挑戦は続きます。

研究授業の実演を担当したムレンガ先生

研究授業の実演を担当したムレンガ先生

研究授業で子どもたちの活動状況を確認する協力校教員と養成校講師

研究授業で子どもたちの活動状況を確認する協力校教員と養成校講師

実験に取り組む子どもたち

実験に取り組む子どもたち

協力校教員と養成校講師による授業後の検討会

協力校教員と養成校講師による授業後の検討会